No.57 自転車運転の厳罰化と取締強化に注意!
◆自転車による交通事故が急増し、交通事故全体に占める自転車事故の割合も上昇傾向にあり、東京都内では37.7%に上るという。エコブームや健康ブームで自転車を利用する人が増えていることが原因と言われれば、うなずけるような気がする。
◆そのような自転車事故を防止するために、自転車運転についての罰則を強化した改正道路交通法が、昨年7月に施行された。
その内容は、これまでの甘い「常識」を覆す、大変厳しいものになっている。いくつか例を挙げると・・・
①車道通行原則違反(3月以下懲役又は5万円以下罰金)(歩車道の区別のある道路は車道通行が原則)
②並進禁止(2万円以下罰金又は科料)
③酒酔い運転(5年以下懲役又は100万円以下罰金)‥‥これは先に平成19・9・19施行済み
④整備不良運転(5万円以罰金)‥‥ブレーキ、反射器材等
⑤二人乗り(2万円以下罰金又は科料)‥‥但し、例外あり
⑥無灯火(5万円以下罰金)
⑦有効な警音器不備(5万円以下)
⑧傘さし運転、携帯電話使用、イヤホン・ヘッドホン使用(5万円以下罰金)
これらの違反については、今後取締りも強化されることが予想される。
◆それでは、自転車で交通事故を起こした場合の民事責任はどうだろうか。
これについては、当然民事の不法行為責任は認められてきたが、例えば歩行者に衝突して死傷させたような場合、これまでは自動車事故に較べて比較的甘く評価されてきたように思われる。
しかし、今後は、上記のような厳罰化が影響して、民事上の責任も重く認定される可能性がある。例えば、歩車道の区別があるのに歩道上を走行したうえ、携帯電話をしていて歩行者に衝突してしまったような場合には、民事上も厳しい判断が下される可能性があるのである
しかも、それが死亡事故や重大な後遺障害が残る事故になったような場合には、重過失致死傷罪や上記の道交法違反といった刑事責任も厳しく問われる可能性が高い。
そのようなことを考えると、自転車に乗る人は、万が一のため、①自転車事故を起こした場合に被害者に賠償してもらえる、②また自分が被害を受けたら補償を受けられる、保険に加入しておくことが必要であろう。
◆更に、重大な自転車事故を起こしたことを理由に、その人が持っている自動車免許まで取消し・停止がなされる可能性も出てきた。
例えば、十分な安全確認をしないで自転車で国道を横断し、避けようとしたライトバンがタンクローリーの前に割り込み、更に避けようとタンクローリーが歩道に乗り上げて男性2人が死亡した事故で、大阪府警はこの男性を180日間の免許停止処分としたと報道されている(2012年1月19日付共同通信等)。
自転車事故を起こして自動車免許が取消し・停止されるというのは何か違和感を感じるが(刑法上の行為責任の原則に反しないかという疑問もないではない)、交通事故を起こしたという点では同じであるし、例えば弁護士が犯罪を犯して処罰されれば、弁護士会から業務停止等の懲戒処分を受けることを考えると、やむを得ないかもしれない。
◆いずれにせよ、自転車は一つ間違えば危険な凶器だということを自覚して、法規を守って安全に運転することが必要であろう(警察のPRではないが)。
そういえば、大昔(たぶん私が大学受験浪人時代)、「花とゆめ」というマンガ雑誌に、赤座ひではるさんの「チリリンふたりのり」というマンガが連載されていたのを思い出した。自転車の二人乗りには、そんな切ない青春や恋のイメージもあったのだが・・。
※下の画像は、赤座ひではるさんのHPより借用させていただきました。
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コメント
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岩城先生 お久しぶりです。三軒です。
「自転車は走る凶器」。。。お言葉通りです。特に夜間の無灯火は非常に危険ですね。
それに飲酒運転、携帯をしながらの運転etc.
やっぱり取り締まりが必要ですね。
罰則も厳しくして欲しいですね。
投稿: 三軒 將弘 | 2012年1月28日 (土) 20時14分