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2012年4月の6件の記事

2012年4月28日 (土)

No.70 ついに行くことができた「井上陽水コンサート」

120427  4月27日の夜、オリックス劇場(旧大阪厚生年金会館)であった井上陽水の「LIVE 2012 Hello,Goodbye」に行ってきた。

 井上陽水といえば、吉田拓郎とともに「70年代フォーク」から「ニューミュージック」の分野での双璧である。最初に大ヒットした1972~74年ころの曲は、私の場合、多感な高校時代とほぼ重なり、とても思い入れがある。
 「人生が二度あれば」「断絶」「傘がない」「いつのまにか少女は」「心もよう」「闇夜の国から」など。
 しかし、この人の場合は、その後も音楽的にも文学的にも進化を続け、時代に迎合しない独自の領域を作り上げてきたように思う。

 このコンサートに「行きたい」と思ったのは、4月初めの朝日新聞記事「陽水、揺らぐ揺さぶる 4月から全国ツアー」を読んだからであった。

 井上陽水が4月から全国ツアーを始める。昨年の東日本大震災でツアーを中断し、「しばらく歌う気になれなかった」という。今回は満を持し、復活をかけるステージになる。

 「アウシュビッツ以後、詩を書くことは野蛮である」。震災と原発事故のニュースを見ると、ドイツの哲学者アドルノのこの言葉が胸にしっくりきていた。

 初期の代表作の「傘がない」は、政治なんかより好きな女の子に会いに行かなくちゃという歌詞で、「今歌うことに疑問がある」と話す。「原子力と水と石油達の為(ため)に/私達は何をしてあげられるの」と歌う「最後のニュース」も「今は適切でない気がする」という。

 「『今だから元気な歌を歌ってよ』と妹に言われてね。明るい曲を、『夢の中へ』や『アジアの純真』みたいなロックを中心に、じゃあやってみようかと」

120427_2  コンサートは「東へ西へ」から始まり、最後の「夢の中へ」までの24曲を、一度の休憩も取ることなく、ちょっとはにかんだようなトークを挟んで会場を和ませながら、一気に走り抜けた。
 あの高音の澄み切った声で、ささやくような小声からオペラのような声量まで、また唱歌のような歌い方から絶叫まで、縦横無尽・変幻自在に歌いまくる。あっという間の2時間20分だった。

 ただ、今から思うと、上で述べた朝日新聞の記事で「今歌うことに疑問がある」と話していた「傘がない」は歌わなかったが、「今は適切でない気がする」と言っていた「最後のニュース」は歌っていた。

闇に沈む月の裏の顔をあばき 青い砂や石をどこへ運び去ったの
忘れられぬ人が銃で撃たれ倒れ みんな泣いたあとで誰を忘れ去ったの
飛行船が赤く空に燃え上がって のどかだった空はあれが最後だったの
地球上に人があふれだして 海の先の先へこぼれ落ちてしまうの
今 あなたにGood-night ただ あなたにGood-Bye

暑い国の象や広い海の鯨  滅びゆくかどうか誰が調べるの
原子力と水と石油達の為に 私達は何をしてあげられるの

薬漬けにされて治るあてをなくし 痩せた体合わせどんな恋をしているの
地球上のサンソ、チッソ、フロンガスは 森の花の園にどんな風を送ってるの
今 あなたにGood-night ただ あなたにGood-Bye

機関銃の弾を体中に巻いて ケモノ達の中で誰に手紙を書いてるの
眠りかけた男達の夢の外で 目覚めかけた女達は何を夢見るの
親の愛を知らぬ子供達の歌を 声のしない歌を誰が聞いてくれるの
世界中の国の人と愛と兼ねが 入り乱れていつか混ざりあえるの
今 あなたにGood-night ただ あなたにGood-Bye

 改めて読んでみると、1行1行が実に深い、考えさせられる曲である。
 もともとこの曲は、親しかった筑紫哲也さんから、「NEWS23」のエンディングテーマとして依頼されて作曲したとされている。
 震災から1年を過ぎ、政治や経済界が原発稼働再開を強引に進めようとしている中で、陽水は考えを変えたのかもしれない。

 しかし、そうだとすると、「傘がない」も、むしろ、今歌うべきではないだろうか。

都会では自殺する若者が増えている 今朝来た新聞の片隅に書いていた
だけども問題は今日の雨 傘がない
行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ 君の町にいかなくちゃ 雨にぬれ
冷たい雨が 今日は心に浸みる 君の事以外は 考えられなくなる
それはいい事だろ?

テレビでは我が国の将来の問題を 誰かが深刻な顔をしてしゃべってる
だけども問題は今日の雨 傘がない
行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ 君の家に行かなくちゃ 雨にぬれ
冷たい雨が 僕の目の中に降る 君の事以外は 何も見えなくなる
それはいい事だろ?
(以下、略)

 いずれにせよ、陽水は、政治や社会と距離をおくように見えながら、批判・風刺を忘れない。
 それが、私もかろうじて含まれる「ポスト団塊世代」の属性なのかもしれないと、勝手に納得しておくことにした。

 ※画像上・下とも、会場に立てられていたパネル。
   画像下のパネルでは、歌われた24曲が紹介されている(クリックで拡大)。

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2012年4月27日 (金)

No.69 宮崎の地で、過労自殺行政訴訟を提訴

120423_2  4月20日、23歳の自動車整備士の過労自殺の労災不認定の取消しを求める行政訴訟を宮崎地裁に提訴し、23日、記者会見のために宮崎に行ってきた。
 飛行機から見える宮崎の街も、裁判所・県庁付近の町並みも、美しい新緑にあふれ、とても美しく、爽やかだった。

 どれだけの記者が来てくれるか心配だったが、多数の報道機関の記者の皆さんが集まり、大変熱心に話を聞いてくれた。そして、いくつかの新聞が報道してくれた。
 このうち、右の記事と写真は宮崎日日新聞、下の記事は毎日新聞である(画像はクリックすると拡大)。

120423_3 原告で被災者の母親のKさんは、記者会見が始まる前、「この3日間、ほとんど眠れなかった」とおっしゃっていた。
 そして、記者会見で私が事件の概要を話し始めたところから、もう涙が止まらなくなっていた。
 息子さんが亡くなってから4年以上にわたって、ずっと抑え続けてきた思いが、まるで堰を切ったようであった。

 普通の青年が、「いいところに就職が決まってよかったね」と祝福され、意気揚々と仕事を始めて、わずか数か月から数年でうつ病にかかり、自殺してしまう例が後を絶たない。
 そして、自殺者を出した会社・職場は、サービス残業についてもパワハラについても口裏合わせをし、何ごともなかったように業務を続けている。
 遺族は、最愛の夫や息子・娘の自殺という最悪の事態と、職場には何の問題もなかったかのように平然と業務を続ける会社とのギャップに、苦しみ続けているのである。

 遺族にとって過労死・過労自殺の裁判は、そのようなギャップを少しでも埋めるためのプロセスでもある。
 微力ながら、頑張っていきたい。

 記者会見後、トンボ返りをする前に、宮崎牛のステーキ丼と、宮崎鶏のチキン南蛮、それに「冷や汁」という冷製のお汁をいただいた。ステーキもチキン南蛮も、柔らかくて口の中でとろけるようで、本当に美味しかった。
 「冷や汁」は宮崎の郷土料理で、いりこの濃いめの出汁をベースに、キュウリやシソが入っていて、さっぱりした美味しさである。とても気に入ってしまった。
 しばらく宮崎に通うことになるので、せっかくだから、宮崎の美味しいものも楽しみたい。
 (なお、弁護団は、私と同じ事務所の瓦井剛司弁護士、宮崎の成見暁子弁護士の3人である。)

◆宮崎労基署の遺族補償不支給、取り消し求め国を /宮崎

 鹿児島市の自動車販売会社に勤務していた男性社員が07年に自殺したのは長時間のサービス残業によるストレスなどが原因として、遺族側が23日までに、国を相手取り、遺族補償を不支給とした宮崎労働基準監督署の処分取り消しを求める訴訟を宮崎地裁に起こした。
 訴えたのは、川南町在住の男性の母親。訴状などによると、男性は04年4月、同社に整備士として入社。07年8月に系列の中古車販売店に異動後、業務量が激増し、毎日1~4時間ほどのサービス残業が常態化していたという。
 男性は07年12月、自動車内で練炭自殺。母親は09年2月に遺族補償給付を請求したが、労基署などは「自殺は仕事に起因したものではない」として請求を棄却した。
 母親は23日、代理人の岩城穣弁護士らと県庁で記者会見し「息子が亡くなってから時間が止まっている。どうして死に至ったのかを裁判で明らかにしたい」と訴えた。今後、販売会社を相手取った損害賠償請求訴訟も起こす方針。【中村清雅】

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2012年4月17日 (火)

No.68 障害者への勤務配慮打ち切りに仮処分命令

◆画期的な仮処分決定
 No.43(2011年8月24日)に書いた事案で、排泄障害を持ったバス運転手のAさん(43歳)に対して、長年行ってきた勤務配慮を打ち切った阪神バス株式会社に対し、神戸地裁尼崎支部は、本年4月9日付けで、次のような仮処分命令を行った。

 ①出勤時刻が午後1時以降となる勤務を担当させること。
 ②原則として、前日の勤務終了から翌日の勤務開始までの感覚を14時間空けること。
 ③原則として、時間外勤務とならない勤務を担当させること。

◆これまでの経過の概略
 この件の経過は、次のようなものである。
 ①2011年1月1日 Aさんへの勤務配慮を打ち切り、通常勤務シフト(不規則、長時間拘束を含む)に戻す。その結果、当日欠勤が激増。
 ②    3月4日 仮処分命令申立
 ③    8月8日 和解成立(勤務配慮を本年3月末まで延長)
 ④    8月26日 本訴提起
 ⑤2012年2月7日 再度の仮処分命令申立
 ⑥    4月1日 Aさんを通常勤務シフトに戻す
 ⑦    4月9日 仮処分決定

◆仮処分決定のポイント
 上記のように、まだ本訴が係属中であり、仮処分決定は最終的な解決ではない。
 しかし、決定が次のように述べていることは、裁判所の一般的な判断を示すものであり、大変意味のあることと思われる。

 「身体障害者に対し適切な配慮を行うことは、厚生労働省の障害者雇用対策基本方針においても求められており、障害者に対し、必要な勤務配慮を合理的理由なく行わないことは、法の下の平等(憲法14条)の趣旨に反するものとして公序良俗(民法90条)ないし信義則(同法1条2項)に反する場合があり得ると解される。
 すなわち、4者合意が債権者に対して規範的効力を有するとしても、そのまま勤務配慮を廃止することが、公序良俗又は信義則に反する可能性があり得るから、この点について検討する。」

 「勤務配慮を行わないことが公序良俗又は信義則に反するか否かについては、①勤務配慮を行う必要性及び相当性と、②これを行うことによる債務者に対する負担の程度とを総合的に考慮して判断をする。」

 (①について)「債権者(注、Aさんのこと)が求める勤務配慮については、その必要性が一応認められる。そして、排便のコントロールが困難であるという債権者の症状と、その職務がバスの運転であり、乗客はもとより他の車両に乗車した者や歩行者等も含めた生命・身体等の安全の確保が強く求められるものであることに鑑みれば、上記配慮をすべき必要性は強いものといえる。」

 (②について)「債務者の事業規模に加え、債権者が所属する尼崎営業所に在籍する運転士数が平成24年3月時点で194名あり、実際に債権者が担当する運番を当日になって欠勤した場合に、4名の運転士によりバスの運行に支障の生じないような乗務分担の変更ができたこと‥‥も考慮すれば、債権者に対する勤務配慮が、債務者にとって過度の負担となっていないことも一応認められる。

 「これらの事情を総合的に考慮すれば、債権者に対する勤務配慮を行わないことが公序良俗ないし信義則に反するとする債権者の主張は、一応認められる。」

マスコミ報道
 この仮処分決定について、いくつかの新聞・テレビで報道がなされた。

(共同通信 2012年4月16日)
神戸地裁が障害配慮の勤務シフト命じる

 阪神バス(兵庫県尼崎市)に勤務する障害のある男性運転手(43)が、障害に配慮した勤務シフトを打ち切らないよう仮処分申請し、神戸地裁尼崎支部(揖斐潔裁判長)が運転手の申し立てを認める決定をしていたことが16日、代理人弁護士への取材で分かった。決定は9日付。

 決定書は、男性の勤務を正午以降とすること、前日の勤務と翌日の勤務を14時間空けることなどを命じている。

 男性は1997年に受けた手術の後遺症で自由に排せつができない障害がある。午前を強制的な排せつの時間に充てるため、午後遅い時間からの勤務シフトに固定することを認められていたが、2011年1月から配慮がなくなり、男性は欠勤が相次いだ。

 運転手はシフト継続の仮処分を同支部に申請、昨年8月の暫定的和解でシフトの配慮が認められたが、ことし3月末までの期限付きだったため、永続的な配慮を求め昨年8月に提訴、ことし2月に仮処分も申請した。

 代理人の岩城穣弁護士は「障害がありながら働いている人に対して合理的な配慮をするのが潮流」とし、阪神バスは「係争中でありコメントを差し控える」としている。(共同)

120416 (ABCニュース:関西 2012/04/16)
<兵庫>「バス運転手の障害に配慮を」仮処分決定

 体に障害のある阪神バスの運転手が、「障害に配慮した勤務シフトを打ち切らないでほしい」と求めていた裁判で、裁判所が運転手の主張を認める仮処分決定を出していたことがわかりました。運転手は、「(主張を)一部でも認めてもらったことは大変うれしい」と話しています。

 阪神バスの男性運転手(43)は、手術の後遺症で排便がスムーズにできない障害があるため、およそ10年にわたり「午後の乗務に固定する」などの勤務配慮を受けてきました。しかし、会社は運転手不足などを理由に、男性への配慮を打ち切る方針を示し、今月から男性を通常勤務に戻しました。一方、男性は会社を相手にこれまで通りの配慮を求める仮処分を申し立てていました。裁判所は先週、「バスの安全運行の観点からも勤務配慮はすべきだ」と指摘。男性の申し立てを仮に認める決定を出しました。運転手は、「ちょっと(勤務)時間をずらしてもらうだけで、運転は支障なくできる」と述べています。仮処分決定を受けて阪神バスは、男性の勤務についての配慮を元通りに復活させたということです。

 引き続き、本訴でも勝訴できるよう、頑張っていきたい。

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2012年4月16日 (月)

No.67 春の妖艶

 この妖艶さはどうだろう。
 透き通るような白い肌といい、繊細なツヤといい、まさに芸術の域である。
 長細いヒゲさえ、かろうじて体にまとわっている布切れのように思えてくるから不思議である。

 定年後、大阪市内の地域労組で熱心に活動し、また大阪過労死家族の会の会計など裏方も引き受けてくれているEさんが、奥様がご自宅で作った作品ということで送ってくれた写真である。
 思わず吹き出したり感心したりと、しばらく楽しい時間を過ごすことができた。

 「大根足」という言葉があるが、そんな言葉は、この大根に失礼であろう。

120415

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2012年4月12日 (木)

No.66 生きるための「力」と「武器」を与える憲法・労働法教育

 有名な資格試験予備校「伊藤塾」の塾長をされている伊藤真氏は、護憲派の論客としても有名であり、「国民主権、基本的人権の尊重と平和主義を高らかにうたう日本国憲法の理念・精神を研究し、広く社会にひろげるため」の研究機関「法学館憲法研究所」の所長も務められている。
 その明晰さと誠実さにファンは多く、直接の接点のない不肖私も、同氏のファンの一人である。

 その研究所内にある「中高生のための映像教室 『憲法を観る』」普及事務局から、中学・高校の教員の皆さん向けに、労働基本権・社会権教育への期待についての寄稿を依頼され、以下のような文章を寄稿させていただいた。
 未来ある若者が、その熱心さと真面目さゆえに亡くなるようなことが決してあってはならない。
 そのために、学校の先生方のみならず、心あるあらゆる個人、団体が憲法・労働法教育に取り組む必要があると思う。

                    ◇   ◇   ◇

生きるための「力」と「武器」を与える憲法・労働法教育

1 増え続ける若者の過労死・過労自殺──最近の2つの事例から
 吹上元康さん(死亡時24才)は2007年4月に大学を卒業し、東証一部上場会社である株式会社大庄に就職し、居酒屋チェーン「日本海庄や」の石山駅店で調理業務に従事し始めました。この会社では、初任給として表示されていた196,400円の中に、1か月あたり80時間分の時間外手当に相当する「役割給」を予め組み込み、これに満たない場合は給料が減額されることになっていたのです。吹上さんはそれをクリアしようと毎月100時間を超える時間外労働を続けた結果、4か月後の同年8月11日未明、急性左心機能不全で亡くなりました。

120412  2008年6月、大手居酒屋チェーン「和民」で働いていた森美菜さん(当時26歳)は、入社してわずか2ヵ月でうつ病にかかり自殺しました。最長で連続7日間の深夜勤務を含む長時間労働、連日午前4~6時までの調理業務のほか、休日も午前7時からの早朝研修会やボランティア活動、リポート執筆が課されたりと、森さんの労働は過酷きわまり、5月中旬の時点で1ヵ月の時間外労働が約140時間に上りました。
 「体が痛いです。体が辛いです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」――亡くなる1ヵ月前に森さんが手帳に書いた日記には、すでに心身の限界に達していた森さんの悲痛な声が残されていました。

 吹上さんの死亡は大津労基署が労災と認め、また両親が起こした民事訴訟で大阪地裁も大阪高裁も、会社のみならず社長ら役員にも連帯責任があると断定しました(現在被告らが上告中)。森さんの自殺についても、2012年2月14日、神奈川労働局の審査官は労働災害であると認めました。しかし、2人の若者の命は、もう帰ってきません。

2 日本の学校教育が憲法・労働法教育に消極的であった理由
 これまで日本の学校教育では、一部の例外を除いて、憲法や労働法をしっかり教えてきませんでした。憲法については、「アメリカからの押しつけ憲法」という批判、9条と自衛隊をめぐる問題、教科書問題などがあったことから、政府や文部省(現在の文科省)は、日本史や道徳教育に力を入れ、憲法教育を軽視してきたきらいがあります。
 また、労働法についても、社会で働くうえでの基礎知識として教えてきませんでした。その背景には、終身雇用制や企業内福利制度のもとで、会社のために献身的に働けば、それなりに安定した生活ができるのだから、会社の中で権利ばかり主張すべきでないという風潮がひろくありました。

3 新自由主義のもとでの自己責任論と極限的な過重労働
 ところが、1990年代後半から、いわゆる新自由主義による規制緩和と自己責任論が広がり、労働分野でもこれが推し進められました。その結果、終身雇用は崩壊し、正社員のリストラと非正規雇用の激増が進みました。その中で労働者は事実上無制限・無定量の労働を求められ、これに応えられずに解雇されるとたちまち生活に行き詰まってしまい、それはすべて「自己責任」とみなされます。

 このような状況や風潮は2008年のリーマン・ショック以降、極限まで進んでいます。とりわけ若者は、未曾有の就職難の中で、出口の見えない「就活」に疲れ果て、自己の尊厳を傷つけられ続けています。そして、運良く正社員として就職できたとしても、そこでは荒廃した職場と、無制限・無定量の労働が待っているのです。

4 今や生きるための「力」・「武器」となっている憲法・労働法
 このような状況のなかで、個人の尊厳と平等を確認し、健康で文化的な最低限度の生活をする権利(生存権)を保障する日本国憲法は、自己責任論のもとで打ちひしがれた人々に対して、「あなたも生きていていいんだよ。あるがままのあなたが肯定されるべきなんだよ。」と励まし、生きる「力」を与えるものになっています。
 そして、労働条件の最低限を定めた労働基準法(1日8時間労働や時間外手当、年次有給休暇の保障、解雇の規制など、実際には「最高の労働条件」となっています)や、使用者の横暴に対して労働者が団結して闘う権利を保障する労働組合法などの労働法は、労働者が生き続け、働き続けるための不可欠の「武器」となっているのです。

5 新たな位置づけがなされるべき憲法・労働法教育
 このように、現在の青年たちが自分に誇りを持って生き続け、働き続けるためには、憲法と労働法を学び、自ら権利を自覚的に行使する中で血肉化していくことが必要となってきています。
 ですから、今や中学や高校、大学で憲法、労働法をきちんと教えることは、生きる「力」と「武器」を与えるものとなっているといっても過言ではありません。
 これらの学校で憲法・労働法教育に関わっておられる先生方の役割は、これまでになく重要となっています。また、最近出張授業などを担当させていただくことも多い私たち弁護士・法律家の役割も大変大きくなっていると思います。

6 「過労死防止基本法」の制定を
 ところで、冒頭で述べた「日本海庄や」や「和民」の事例は、決して特殊な出来事ではなく、現在の苛酷な労働実態全体が過労死・過労自殺と隣り合わせになっていることを示しています。そして、元気で体力のある若者たちでさえ過労死・過労自殺してしまう職場で、中高年労働者が健康で働けるはずがありません。
 前述のように、そこで働く労働者たちが、生きる「力」としての憲法、「武器」としての労働法を得ることも重要ですが、一方で、法律によってそのような働かせ方を是正していくことがどうしても必要です。

 そこで、私たちは、①過労死があってはならないことを国が宣言する、②過労死をなくすための、国・自治体・事業主の責務を明確にする、③国は過労死に関する調査・研究を行うとともに、総合的な対策を行うことを内容とする「過労死防止基本法」の制定を求め、「100万人署名運動」をはじめとする取り組みを行っています。皆様のご支援・ご協力をお願いします(詳しくは実行委員会のHPをご覧ください)。

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2012年4月11日 (水)

No.65 「大阪青年ユニオン」の出発にエールを送る

 2012年4月1日、「大阪青年ユニオン」が発足した。

120410  これまで、徹底して若者の目線、感性、心情に立脚し、またITを駆使するなどのユニークな活動をしてきた「地域労組おおさか青年部」が、今般、「大阪青年ユニオン」と名称を変更したのである。

 私は、メッセージの依頼に応えて、次のようなメッセージを送った。

「大阪青年ユニオン」の皆さん

 「地域労組おおさか青年部」から「大阪青年ユニオン」への発展、おめでとうございます。

 現在の青年たちの置かれている状況、否、国民と労働者全体の置かれている状況自体が、過去に前例のない酷いものです。
 そんな中で、皆さんは
 「労働法は、自分たちの力で活用し、守らせるもの」
 「正しくキレよう!」
と、青年自身の目線で呼びかけ、団交を「ニコニコ動画」で同時中継するなどITも活用して、多くの貴重な成果を挙げてきました。

 確かに、「お父さん・お母さん世代」が中心となってきた従来の労働組合運動は、歴史的に大きな役割を果たしてきました。
 しかし、現在の日本社会の状況は、「お父さん・お母さん世代」も含めて前代未聞のものであり、とりわけ青年の置かれた状況の深刻さは筆舌に尽くし難いものとなっています。
 そんな中で、皆さんは、ひと味もふた味も違ったユニークで、かつ、全青年労働者を対象にした労働運動を模索していって下さい。
 そして、「大阪青年ユニオン」の皆さんが、近い将来、日本の労働運動全体の中で大きな地歩を占めるようになられることを願います。

 様々な困難もあると思いますが、皆さんの運動が大きく花開くよう、これからも応援していきたいと思います。
頑張って下さい。


120410  東京には既に「首都圏青年ユニオン」があり、また各地にいくつかの「青年ユニオン」があるが、第2の大都市大阪でこの「大阪青年ユニオン」ができた意義は、限りなく大きい。

 ささやかながら、私も応援していきたいと思っている。

※画像は、いずれも大阪青年ユニオンのホームページから。
 イメージキャラクターの「ノロシー」が、とてもかわいい。

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