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2013年1月20日 (日)

No.105 重いテーマを「未来への架け橋」を謳う音楽劇に──井上ひさし「組曲虐殺」を観て

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 「蟹工船」などで最近再び注目を浴びているプロレタリア作家、小林多喜二。わずか29歳4か月で特高警察の拷問で虐殺されたその生と死を描いたこの音楽劇の大阪公演(1月19日、梅田・シアタードラマシティ)に出かけてきた。
 この劇の初演(2009年秋)の直後(2010年4月)に井上ひさしさんは亡くなり、今回はその再演とのことである。前評判も高かったようで、行きたいと思ったときには、既にチケットはほとんど売り切れで、かろうじて「注釈付き指定席」(観覧にやや難がある席)を購入することができた。

 キャストは主役・多喜二役の井上芳雄さん、多喜二の姉・チマ役の高畑淳子さん、多喜二の恋人・瀧子役の石原さとみさん、多喜二の妻・伊藤ふじ子役の神野三鈴さん、特攻刑事・古橋役の山本龍二さん、同じく山本役の山崎一さんのわずか6人だが、全員すばらしかった。また、小曽根真さんのピアノもすごかった。

 治安維持法、特高警察、「アカ」、拷問、虐殺といった重く暗いテーマ(虐殺された多喜二の遺体の写真をご覧になったことがある人も多いのではないだろうか)を、井上ひさしさんがどんな劇に仕上げているのか、興味津々であったが、一方でリアルさをきちんと残しつつ、他方で笑いあり涙ありの人間劇として作られていることに感心した。

 ヒューマンさという点では、3人の女性がすごく明るくお茶目で、魅力的だった。また、特高警察の2人について、「権力の犬」でありながらも、皆と同じように「かけがえのない光景」を持つ人間の一人として、哀しみとユーモアを込めて描いていることに胸が熱くなった。

 他方、リアルさという点では、多喜二が虐殺された当時の状況は完全に過去のものになっているわけではない。思想調査も、弾圧や差別も現在に至るまで連綿と続いている。
 さらに、貧困や過酷労働、解雇・失業が町にあふれる一方で、憲法改正や国防軍が声高に叫ばれる現在の政治情勢のもとで、この劇は新たなリアリティをもって迫ってくる。

 そんなこの劇の中で、心に残ったのは、多喜二の次の言葉である(会場で原作の戯曲本まで購入してしまった)。

 絶望するには、いい人が多すぎる。希望を持つには、悪いやつが多すぎる。なにか綱のようなものを担いで、絶望から希望へ橋渡しをする人がいないものだろうか‥‥いや、いないことはない。

(以下、多喜二の歌「信じて走れ」)
 愛の綱を肩に/希望めざして走る人よ/いつもかけ足で/森をかけぬけて/山をかけのぼり/崖をかけおりて/海をかきわけて/雲にしがみつけ/あとにつづくものを/信じて走れ
 愛の綱を肩に/星をめざして走る人よ/いつもひたすらに/ワルをうちこらし/ボロをうちすてて/飢えをうちはらい/寒さうちやぶり/虹にしがみつけ/あとにつづくものを/信じて走れ/あとにつづくものを/信じて走れ

 これは、井上ひさしさんが、今の時代のことも思いつつ、自分の思いを多喜二に歌わせているのではないだろうか。
 私は、「あとに続くものを信じて走って」いるだろうか。そんなことも考えた帰り道であった。

 それにしても、手塚治虫さんもそうであったが、この方にも、もっと生きてほしかったと思う。

 ※画像は、購入したプログラムと戯曲本の写真です。


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