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2013年12月 2日 (月)

No.152 「一票の格差」(投票価値の平等)について──国民主権と選挙制度のあり方(その1)

◆現在の選挙制度の深刻な問題点
 日本国憲法では主権は国民にあるとしているが(憲法第1条)、日本国憲法前文は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」するとしており、国民は、具体的には国会議員を選挙で選ぶことによって、その主権を行使することになる。
 したがって、国民主権を実質化するためには、選挙制度のあり方は極めて重要である。

 しかし、私は、現在の選挙制度は、いくつもの深刻な問題点を抱えており、憲法の理想から著しくかけ離れた状況になっていると思う。
 具体的には、
① 投票価値の不平等(一票の格差)
② 小選挙区制と定数削減論
③ 二院制のあり方
④ 企業・団体献金と政党交付金
⑤ 不自由だらけの選挙活動
といった点である。
 今後、これらについて、私なりの意見を書いていきたいと思っている。

◆一票の格差(投票価値の平等)の問題について
 まず手始めに、①の投票価値の不平等(一票の格差)の問題を取り上げたい。

 選挙区によって(特に過疎地域の選挙区と都市部の選挙区の間で)、議員一人あたりの有権者数(逆に言えば、有権者一人ひとりが持っている投票権の価値)が大きく異なるのは、法の下の平等(憲法14条)に違反するのではないか、という問題は、昭和40年代から論じられるようになり、昭和51年4月14日の最高裁大法廷判決が、昭和47年12月の衆議院議員選挙における投票価値が最大約5対1になっていたのは憲法の選挙権平等の要求に反する程度になっていたが、合理的期間内によける是正がなされなかった場合に初めて違憲とされるべきであると判断して以降、常に国会と司法の間で判断と是正の応酬がなされてきた。

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 そして、最高裁は長年、一票の格差が衆院選ではおおむね3倍未満、参院選では6倍未満であれば合憲としてきたが、最近はやや厳格になり、衆議院では2.30倍(2009年8月衆院選についての最高裁H23・3・23判決)や2.43倍(2012年12月衆院選についての最高裁H25・11・20判決)、参議院では5.00倍(2010年4月参院選についての最高裁H24・10・17判決)は「違憲状態」とした。もっとも、いずれも「違憲状態」ではあるがただちに「無効」とまではしないとしている(事情判決の法理といわれる。)。

 日本の司法(裁判所)は、「立法府・行政府という政策決定者の決断は最大限度の『謙譲と敬意』をもって扱うべきだとする立場」(司法消極主義)を採っているが、いわゆる「民主政の過程」に関わる問題については、積極的に憲法判断をしていくべきである(すなわち、いったん不平等な制度ができてしまうと、その制度のもとで選出された議員にその是正を求めるのは困難だから、その前に裁判所が積極的に是正すべきである)というのが、憲法学界の通説である。

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 そのような考えからすれば、この一票の格差(投票価値の平等)の問題について、司法はより厳しい対応をすべきであり、「違憲無効」というショック療法も必要な段階になっていると思う(「無効」といっても、将来に向かって無効を宣言すれば、既に成立した法律に影響はないし、その後の立法についても、他の改選時期の議員と比例選出議員によって活動は可能である。)。
 この点、この11月28日に広島高裁岡山支部が、今年7月の参院選で岡山選挙区の選挙を違憲・即時無効との判決を出したことは、高く評価されるべきである。

◆衆議院議員選挙‥‥完全平等が原則であり、格差は最大1.5倍未満とすべきである
 私は、まず衆議院議員選挙については、一票の価値は限りなく完全平等に近づけるべきであり、日本人の「四捨五入」的感覚からいえば、1.5倍以上になることは許されないと考える。例えば、1対1.3であれば何とか納得できるが、1対1.8では2倍に近いので納得できない、という人が多いのではないだろうか。
 ちなみに、アメリカの下院は州ごとに人口比例で議席数が割り振られ、州内では行政区画と別に選挙区が設定され、完全平等が要求される。フランスは原則1.50倍以内、イタリアは1.22倍以内とのことである。3倍や6倍になるまで認めてきた日本は、あまりに投票権の平等に無頓着すぎたと思う。

 もっとも、そもそも私は、1選挙区から1人しか選出しないという小選挙区制は、憲法上重大な問題があり、かつてのような中選挙区制(議員数3~5名程度)、または比例代表制にすべきだと考えている(比例代表の場合、全国一区、ブロック別、都道府県別の3つが考えられるが、この中ではどれでもよいと思う。)。
 現在の比例代表選挙(ブロック別)を見ればわかるように、比例代表制をとると、投票価値は限りなく完全平等に近づくことになり、この点でも望ましいものである。中選挙区制は、比例代表制に比べるとやや格差が生じるが、人口の変動に伴う調整は、小選挙区制よりもはるかにやりやすい。

◆参議院議員選挙‥‥様々な属性に着目して別枠で選出できる制度にし、同一の枠内では許容される格差は衆議院と同じく1.5倍未満とすべきである
 なぜ日本で衆議院・参議院という二院制(両院制)をとる必要があるのかについても、別に書きたいと思っているが、結論だけを言えば、様々な属性を踏まえて選挙ができる制度設計を行うべきだと考える。

 現在、制度的に属性として考慮されているのは、地域代表(選挙区=都道府県の代表)ということのみである。確かに、参院の選挙区が過疎の県の声を反映させるという役割を果たしていることは事実である。
 しかし、属性というのは地域(都道府県)だけではない。男女、年代(例えば20~30代、40~50代、60代以上といった区分)、少数民族(アイヌなど)や障がい者、性的少数者などの社会的少数者、所属階層(例えば労働者、中小企業経営者、農林漁業者、医師・税理士といった専門職など)といった属性も、それぞれ大変重要である。

 これらのうち一定の属性については、事実上、比例代表選挙で打ち出されている(例えば経団連、労働組合、農協、医師会などが推薦したり、組織内候補を出して支援したりしている)。
 しかし、例えば女性や若者といった属性では選出しにくいし(「〇〇女性党」のような政党はあるにはあるが)、社会的少数者については、まさに社会的少数者であるが故に、別枠の取扱いも考慮されてしかるべきはないかと思う。

 少なくとも、現在の選挙区(都道府県単位)と比例区の2本立てが絶対のものとは思えない。現在、それぞれについて1人が2票を持つことを認めているが、そうであれば、もっと分野別に分けて、1人が何票も持ってもよいはずである。
 また、例えば、政策的に女性議員を増やすために、総定数の2割を別枠にして女性だけが立候補できるようにするとか、障がい者の枠に5議席を与えるなど、女性や若者、社会的少数者に別枠で一定の議員数を割り当ててもよいのではないだろうか(高校野球の「21世紀枠」のように)。

 本当に少子高齢化のもとでの世代間の負担や女性の社会参加を考えるのであれば、それについての国民の様々な意見を反映できる選挙制度を、特に参議院について作るべきだと思う。
 大変難しい作業であるが、国民みんなで議論して決めていくことは、ある意味で夢のある作業ではないだろうか。
 こんな議論が、もっとあちこちで起こればいいなあと思う(もしかしたら起こっているのに、私が知らないだけかもしれないが)。

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コメント

公選法第219条で行政事件訴訟法第31条を準用しないと明記されていにもかかわらず、違憲状態判決、事情判決の法理で事実上追認する最高裁判所に対して法曹界はどうして抗議しないのですか?
全国民の代表者としての正当性を欠く人に定数是正ができるなんて信ずる方がどうかしています。

現在の公職選挙法の選挙区選挙は一人一票原則を政策的に修正しているにすぎない法律と考えれば、配分規定が違憲無効であるならば、全議員が一度失職して原則に戻り選挙区はないものとして選挙管理委員会又は最高裁判所が前の選挙での獲得投票順に当選人再決定を命ずれば足りるのではないですか?

当然獲得投票が少なくとも当選した議員は落選の憂き目を見て、逆に獲得投票が多買ったにもかかわらず落選した候補者は当選とすることで何ら混乱は起こり得ません。

訳のわからない「法理」を主張できるぐらいなら多少混乱が生ずるような解決はむしろ当然ではないですか?

現状維持的解決は早晩国民の支持をうしない国民は失望し民主制を維持しようとする意思をむしばむ危険性があります。

法曹界の奮闘を願う市民です。

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