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2014年5月15日 (木)

No.184 今こそ「憲法裁判所」創設の検討を!(その2)

No.183より続く)

◆1 現行憲法のもとで「憲法裁判所」の設置は可能であり、必要である
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(1)以上のような理由から、私は、わが国にも「憲法裁判所」を創設すべき時期に来ていると思う。
 「その1」の冒頭に述べたように、法律で憲法裁判所を設置して法令の合憲性審査を行わせることは、憲法81条は否定しておらず(法律事項説)、むしろ憲法が要請しているところであるというべきである。
 実際、行政事件訴訟法は、個人の権利利益の保護を目的とする「主観訴訟」(抗告訴訟、当事者訴訟)以外に、もっぱら客観的な法秩序の維持を目的とする「客観訴訟」として、「民衆訴訟」(国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの。行訴法5条)と「機関訴訟」(国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟。行訴法6条)の類型を認め、これを通常裁判所に審理させている。
 憲法裁判所を設置することにより、上記の「民衆訴訟」に対応する憲法訴訟類型の審理が可能になると解すべきである。
 「法規に適合しない国又は公共団体の機関の行為」の是正を求める訴訟が認められているのに、「最高法規である憲法に適合しない国又は公共団体の機関の行為」の是正を求められないというのは、いかにも不合理である。

(2)これに対し、護憲の立場に立つ憲法学者にも、憲法裁判所について懐疑的、慎重な見解が根強いと思われる。例えば、「憲法裁判所が設けられれば,確かに,国家行為が違憲審査に服する機会が現在よりも増えるという点では,違憲審査制は活性化すると言える。」「現在は,憲法の最終的有権解釈権者である最高裁判所の判断を得るまでに相当の時間がかかり,第一審裁判所に提訴されてから10年も経ち最高裁判所の憲法判断が下されるといったことすらあるが,憲法裁判所が設置されれば――たとえば衆議院議員の3分の1の要求に基づき,あるいは具体的事件を扱っている裁判所の要求に基づき――もっと早期にその憲法判断を仰ぐことができる。」との積極面を認めつつ、「しかし,‥‥人権制約立法を十分な検討もなしに早期に合憲とする判決が積み重ねられる可能性もある」「確かに,憲法裁判所は,憲法判断を下す専門の機関として構成されるので,その裁判官は憲法判断を下す能力・意欲のある人物であるかどうかという観点から選ばれるのが建前となるはずである。しかし,制度さえ変えればすべてうまくいくと考えることはできないであろう。」といった見解である(後述参考文献2)。
 護憲を掲げる法律家団体・弁護士団体でも、憲法裁判所の設置を積極的に提唱する動きは顕在化していない。

 しかし、付随的審査制のままでは、前述(No.183の◆3の①~③)の問題はクリアできないし、「慎重」「懐疑的」な姿勢を続けても、自然に展望が開けてくるわけでもない。
 現に、下級審(地裁・高裁)の裁判官の現状追認傾向は強まるばかりであり、むしろ、最高裁の方が憲法判断に対する姿勢の変化が見られるという指摘もある(後掲参考文献1)ところである。
 また、主権者たる国民の監視という点でも、重要な憲法問題が憲法裁判所に提訴された場合は、マスコミやインターネットなどで国民的な議論が沸き起こり、署名運動やネット投票なども取り組まれ、健全な国民世論が形成されていくだろうし、憲法裁判所はこの世論を尊重せざるを得ないだろう。この世論をないがしろにした憲法裁判所は、国民的な批判を受け、その時にこそ、現在はほとんど機能していない最高裁判所の国民審査が生きてくると思う(この場合、最高裁裁判官と憲法裁判所の裁判官の重なり合いの問題はあるが、法律レベルで憲法裁判所裁判官に対する独自の国民審査制度を作ることも考えられる)。
 これに対し、「健全な世論が形成されるとは限らない」「憲法裁判所が不当な判決を出す可能性がある」などとして反対するのは、結局は国民不信ではないだろうか。

◆2 注目すべき、韓国の憲法裁判所の実績

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(1)この点、お隣の韓国の憲法裁判所の創設と実績が、大変参考になる(以下、後掲参考文献3による)。
 韓国では、1988年に施行された現行憲法において、憲法裁判所が復活された。
 憲法裁判所の裁判官は9人で構成され、大統領が任命するが、うち3人は国会で選出し、他の3人は大法院長(日本では最高裁長官)が指名する者を任命しなければならない。任期は6年で再任も認められる。
 憲法裁判所は、法院(裁判所)の提案による法律の違憲審判のほか、法律が定める憲法訴願審判を管掌する(他に、裁判官の弾劾裁判や政党解散審判なども行う)。
 憲法訴願には、「権利救済型憲法訴願」(憲法裁判所法68条1項)と「規範統制型憲法訴願」(同2項)がある。

(2)興味深いのは、韓国において憲法裁判制度は成功裏に定着しつつあると評価されていることである。
 憲法裁判所が創設された1988年9月1日から2010年12月31日までの間に、20,055件を受理し、12,395件を処理した。法律の違憲審判事件は730件を受理し、695件を処理しており、その中で、違憲決定199件、憲法不合致決定52件、限定違憲決定15件、限定合憲決定7件である。また、憲法裁判所法2項による憲法訴願事件は、同じ期間に2,874件が受理され、2,603件が処理されたが、違憲決定は153件、憲法不合致決定53件、限定違憲決定26件、限定合憲決定21件とのことである。
 そして、韓国では、憲法裁判所制度の開始(なお、1998年には行政法院制度も開始された)によって、公法に関わる訴訟が飛躍的に増加し、国民の救済範囲が拡大されたとされている。

 私は一弁護士に過ぎず、特に憲法訴訟や憲法問題に深く関わってきたわけでもないので、理解不足や間違いも多々あると思うが、本当に日本国憲法を国民の「共有財産」にしていくためにも、憲法裁判所の創設について、これから議論が広がっていくことを願う。

【参考文献】
1 「最高裁の違憲審査の活性化と憲法判例──最近の最高裁判決をめぐって──」(中央大学法科大学院教授 横尾日出雄、CHUKYO LAWYER第18号、2013)
2 「日本における違憲審査制の軌跡と特徴」(市川正人立命館大学教授、立命館法學 2004年(2), 530-545, 2004)
3 「韓国における憲法裁判所及び行政法院の機能と役割」(岡田正則、河 明鎬)(早稲田大学比較法研究所、比較法学第45巻 第2号(2011.12.1))

 ※上のマンガは、ぼうごなつこさんの「小学生でもわかる憲法入門」のサイトから引用させていただきました。
  下の画像は、韓国の憲法裁判所の様子で、「レイバーネット日本」のサイトから借用させていただきました。
  厚く御礼申し上げます。

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