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2014年6月29日 (日)

No.195 過労自殺させた会社と、防止できなかった労基署の「醜い野合」

 23歳の自動車整備士の過労自殺の労災不認定の取消しを求める行政訴訟(「No.69 宮崎の地で、過労自殺行政訴訟を提訴」参照)で、6月16日の午後(第1回)と、6月27日の終日(第2回)、宮崎地裁で集中証人尋問が行われた。

 被災者はホンダ学園を卒業後2004年4月(株)ホンダ四輪販売南九州に入社し、最初の3年間は新車販売店「ホンダカーズ宮崎花ヶ島南店」で新車の整備を担当していたが、2007年8月から、中古車販売店である「オートテラス花ヶ島店」に異動した。
 それ以降、被災者の帰宅時間は遅くなり、疲労の様子が強まっていたが、同年12月12日から会社に出勤しなくなり、12月23日、練炭自殺した遺体が発見された。
140629
 解明されるべきは、「花ヶ島店」に異動するまでは元気で仕事をしていたのに、異動後の4か月余りの間に何があったのか、である。被災者の遺書には、「工場長、つかえない人間ですみませんでした。」と書かれていた。

 第1回の証人尋問は被告国側申請の4人で、①当時の本社総務課長(現・事業管理部長)のY氏、②当時の工場長のK1氏、③当時の同僚(先輩)であったK2氏、④同じく同僚(先輩)であったT1氏の4人。
 第2回は原告側申請の6人で、①当時の店長(現在は定年退職)であったN氏、②当時の同僚(先輩)であったK3氏、③被災者の前任者で入れ替わりに被災者の前勤務店に異動となったS1氏、④被災者と一時期(7月~9月)のみ同店で勤務し、個人的にも親しかったS2氏の4人と、⑤被災者の妹さん、⑥原告である母親である。
 もっとも、第2回は原告側申請といっても、①は元店長であり、②~④は現在も同じ会社に勤務していることから、証言にあたって多かれ少なかれ会社の意向を受けざるを得ないと考えられる人たちであった。

 尋問の結果の詳細はここで紹介することはできないが、当時の職場の状況や、被災者に生じた出来事を相当程度明らかにできたと思う。
 また、国や会社側が、あたかも被災者の自殺の原因が被災者の家庭不和や借金にあったと主張してきたことが、根拠のない決めつけにすぎなかったことも明らかになった。
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 もともと過労死・過労自殺事件では、被災者本人が亡くなってしまっているうえ、重要な資料のほとんどは会社が持っているため、発症や死亡前に何があったのかを明らかにすることが困難なケースが多い。特に、閉鎖的な職場で証人同士の口裏を合わせられると、真実の解明はいっそう困難となる。

 しかも、許しがたいことは、行政訴訟で、労基署は会社と事実上タッグを組んで、被災者の発症・死亡が業務と無関係であったと、遺族側を攻撃してくることである。

 ①そもそも、労基署や労働局は労働者の諸権利を保護する機関であり、少なくとも中立でなければならないはずである。
 ②また、過労死・過労自殺事案では、ほとんどのケースで労働法令違反(典型的なのは、労働時間の適正管理義務違反、違法な時間外労働、時間外手当の不払いなど)がみられ、労基署の監督が不十分であったために悲惨な過労死・過労自殺を発生させてしまったともいえる。
 ③にもかかわらず、労基署はまさにその加害企業とタッグを組んで、過労死・過労自殺ではなかったと主張・立証してくるのである。
 これは、二重、三重に理不尽といわなければならない。労基署は、いったい誰のための官庁なのか。
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 今回の事件でも、本件職場では月の残業が20時間に抑えられる中で、タイムカード打刻後も、店の施錠まで数時間のサービス残業が行われていたこと、その残業時間のカウントも30分未満切り捨てという違法な取り扱いがなされていたことは明らかである(この点については、その後労基署の指導があり改善されているのである)。
 にもかかわらず、法廷では被告国(労基署)の代理人と役人たちが被告席にずらりと並び、傍聴席には会社関係者が陣取り(民事訴訟の会社代理人も来ていたとのことである)、被告国の代理人は恐らく事前に会社側と十分に打合せをしたうえで、会社に責任がなく、自殺の原因は本人側にあったとの方向で主尋問・反対尋問を行うのである。

 私は、この光景を見て、本当に醜いと思った。「いったい誰のためにやってるんだ。恥ずかしくないのか」と心底腹が立った。
 これ自体は、現在の訴訟構造上、違法とまでいうことはできないであろう。しかし、世間一般の目、社会通念からみれば「醜い野合」であり、不当極まりないことは明らかである。

 過労死防止法が成立し、厚労省が過労死をなくしていく国の責務を果たす主務官庁になった今、このような国、労基署の姿勢は根本的に改められるべきである。
 また、裁判所も、過労死をなくしていく責務を負う国の三権の一つとして、形式的な主張・立証責任に拘泥することなく、過労死が発生する労働現場の実態や労働者の弱い立場を直視して、公正・妥当な判断を行うことが求められている。

 このことを特に痛感した、今回の集中証人尋問であった。
 (弁護団は、成見暁子、瓦井剛と私の3人である。)

 ※写真は上から、
 ①被災者の残した遺書の一部
 ②修理工場内の様子(インターネットより)
 ③2回目の尋問終了後の裁判所での集合写真


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