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2015年3月 4日 (水)

No.227 交通事故後5日目に脳内出血を発症した事案で、6年半後に全面解決

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1 2008年10月3日、外出先から事務所に戻ると、それまで面識のなかった京都のN弁護士からの電話メモが机に置かれていた。「京都のK弁護士(私が親しくしている欠陥住宅京都ネットの弁護士)から紹介を受けて電話しました。その人は高速道路上で追突されて血圧が上昇し、5日後に仕事中に脳出血で倒れ、半身不随になっています。どちらかというと過労死関係の事案に似ているので、過労死の労災事件をよくされているという岩城先生を紹介したいと思い、電話しました。何の面識もなく急で申し訳ありませんが、電話下さい。」

 私はN弁護士に電話し、「その方は仕事の途中なので労災申請もできますね。事故の5日後でも脳出血と因果関係が認められる可能性があると思います。よろしければ一緒にやりませんか」と話し、当時、当事務所の弁護士2年目であった長瀬弁護士にも声をかけて、3人で担当することにした。

2 当事者はIさん(事故当時40歳)。2008年8月20日、現場での仕事を終えて車に同僚らを乗せて会社に戻る途中、中央自動車道の上で渋滞に差しかかり、停止したところ後方から来た車に追突された。他の同僚3人はさほど症状を訴えなかったが、Iさんだけが後頭部と頸部の痛みと吐き気を訴え、救急車で病院に搬送。外傷性頸部症候群と診断されたが、最高血圧が216という高値が測定された。
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 Iさんにはもともと、高血圧の傾向があったが、本件事故前の定期健康診断での測定血圧は、①146/92(2001・2)、②130/80(2002・2)、③147/93(2003・7)、④162/90(2004・7)、⑤106/86(2006・2)であり、「高血圧治療ガイドライン2009」によれば、④を除けば、Ⅰ度(軽度)高血圧と正常高値の範囲で推移していた。

 Iさんは、上記病院で降圧剤を処方されたこともあって、血圧は少しずつ下がり、収縮期血圧が150台~120台まで下がっていたが、事故から5日後の8月25日の昼食時に突然脳出血を発症し、病院に搬送された。緊急開頭による血腫除去術が施行され、その後リハビリが行われたが、①重度の片麻痺(後に後遺障害等級2級と認定)と、②高次脳機能障害(後に後遺障害等級5級と認定)が残った。

3 この種の事案では、(a) 自賠責保険に対する被害者請求と、(b) 労基署に対する労災請求が考えられるが、私たちは先に(b)を行うこととし、2009年4月、京都南労基署に労災請求を行った。

 代理人意見書を作成して労基署の担当者と面談したところ、当初は「非外傷性の事案なので、労働時間などの基準によることになるのではないか。」「中立的に考えれば、労災認定は難しいのではないか。」と消極的な対応であったが、私たちが提出したM医師の意見書も功を奏したか、2010年8月業務起因性を認め、併合2級の認定がなされた。これで今後の療養と最低限の生活保障が得られる。本当に嬉しかった。

4 続いて私たちは、同月、(a)の自賠責保険への被害者請求を行ったが、自賠責保険は、本件事故と脳内出血の因果関係を否定し、異議申立を行うも結論は変わらず、「自賠責保険・共済紛争処理機構」に紛争処理申請まで行ったが結果は変わらなかった。
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5 そこで私たちは、2013年4月、やむなく大阪地裁に民事訴訟を起こした。訴訟で被告側は保険会社内のT医師の意見書を提出してきたことから、私たちも新たにS医師の意見書を提出して医学論争を行った。Iさんの妻Y子さんの尋問が終わった段階で裁判所から和解勧告があり、その後何度かの和解協議を経て、この2月19日、和解が成立した。

 和解金額は私たちからすれば十分とはいえないものであったが、既に労災認定によって療養と生活保障が行われていることもあり、Iさんご夫婦の意向もあって、和解に応じることにした。お世話になったM先生とS先生に、さっそくご報告とお礼の電話をさせていただいた。
 振り返れば、本件交通事故から6年半、提訴からも1年10か月が過ぎていた。

6 本件は、決して容易な事件ではなかった。裁判例を調べてみると、交通事故の4日後に発症した小脳出血について災害保険金請求を認めなかったもの(奈良地裁平成14年8月30日判決)がある一方で、交通事故の8日後に外傷性脳幹出血を発症した事案で因果関係を認めたもの(ただし7割の素因減額。横浜地裁平成15年4月18日判決)や、交通事故の約9日後に脳殻出血を発症した事案で因果関係を認めたもの(ただし、同じく7割の素因減額。大阪地裁平成17年4月14日判決)もあることがわかった。

7 3月3日、Iさんご夫婦と弁護団3人が締めくくりとして当事務所に集まり、事件解決を喜び合った。Iさんはリハビリや作業所での仕事も順調とのことで、いい笑顔をされていた。3人の娘さんも大きくなり、長女は既に社会人、二女も社会人となる日が近いとのことだった。

 難しい事件だったが、依頼者ご夫婦と弁護団3人で、やれることをすべてやり尽くして解決できたことを、心から嬉しく思う。また、欠陥住宅全国ネットで親しいK弁護士からN弁護士に紹介がなされたこと、N弁護士が私に直接電話を下さったことをはじめ、いろんな「縁」と「決断」の積み重ねが今回の結果につながったことを思うと、改めて感慨深く思うのである。

 ※真ん中のグラフは、apital(朝日新聞の医療サイト)から借用させていただきました。


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