No.241 半年間にわたる「過労死防止対策大綱」作成作業がほぼ終了
5月25日、厚生労働省の「省議室」で「過労死等防止対策推進協議会」の第5回会議が開かれた。
この協議会は、昨年11月1日に施行された過労死等防止対策推進法(過労死防止法)第12、13条に基づいて設置され、同法7条に基づいて政府が「過労死等防止対策大綱」を作成するに当たって意見を述べる会議体である。
協議会の委員は20名で、過労死遺族(4名)、労働者代表(4名)、使用者代表(4名)、学識経験者(8名)の20名が参加している。このうち、過労死防止法の制定の取り組みを行った「実行委員会」からは上記の過労死遺族4人と、森岡孝二(関西大学名誉教授)、川人博弁護士と私の3人が「学識経験者」枠で参加しているのである。
第1回~第5回までの日程と内容は次のとおりである(厚生労働省ホームページ参照)。
①第1回(2014年12月17日)<議事録はこちら><No.222 第1回過労死防止推進協議会での私の発言>
委員全員が自己紹介と、過労死問題と大綱について意見表明を行った。
②第2回(2015年2月20日)<議事録はこちら>
国家公務員・地方公務員の公務災害について、担当者を読び現状の報告などを受けて、意見交換をした。
③第3回(4月6日)<議事録はこちら><No.233 「大綱(案)骨子」に対し、渾身の力で意見を述べました──第3回過労死防止協議会>
これに先立って大綱の構成を箇条書きにした「大綱(案)骨子」が事務局から示され、これについて意見交換を行った。
④第4回(4月28日)<議事録はこちら>
第3回の議論を踏まえて文章で肉付けした「大綱(素案)」が事前に示され、これについて突っ込んだ意見交換を行った。
⑤第5回(5月25日)<議事録はこちら>
第4回の議論を踏まえてほぼ完成に近い形で文章化した「大綱(案)」が事前に示され、これについてほぼ最終的な意見交換を行った。
私たち7人は、この間、大綱の望ましい内容と改善すべき項目について、協議会の議論をリードして積極的に意見を述べてきた。
特に、第3回協議会の前の3月中旬には、私たち自身が、全国センターの会員の皆様の意見も聴いて「大綱試案」を作成し、推進室事務局に提出した。
また、第4回協議会では、修正すべき点について詳細な意見を述べるとともに、特に「第3」の「1 当面の対策の進め方」の後段について、私が事実上7人を代表して、「大綱」を実効性のあるものにするために具体的な数値目標をかかげるべきだと主張し、具体的には、①週労働時間が60時間以上の労働者をゼロにすること、②月80時間以上の時間外労働の特別延長時間を定める36協定をゼロにすること、③インターバル休息制度の導入についても数値目標をもって取り組むこと、④すべての事業場・労働者について労働時間を客観的方法により適正に把握させることなどを主張した。
全体として総論賛成のこの協議会において、唯一、緊張が走ったのがこの提案をしたときであった。実際、使用者側の専門家委員のお一人からすぐさま反対意見が述べられた。
予想どおり、これを踏まえて第5回協議会に示された「大綱(案)」では、大綱の対策は現行の法制度を前提としているという理由で、数値目標としては取り入れられていなかったが、過労死防止対策の各論において、これらを実質的に取り入れる工夫がなされていたことは高く評価したい。
私は第5回協議会で、上記の評価を述べるとともに、①今後は大綱の運用の中で、これら4点についてもできる限り実現していく必要があること、②その蓄積を踏まえて、数年後の大綱の改定の際にはぜひ取り入れていただきたいこと、③施行後3年後の検討(附則2項)、更には調査研究の結果を踏まえた必要な法制上の措置(法14条)として最終的には制度化していただきたいことを、強く要望した。
6月中旬には、この大綱案が正式に閣議決定され、「過労死等防止対策大綱」として、今後の国・地方公共団体の過労死防止対策の指針となる。
理想を言い出せばきりがないが、私たちはこの半年間、やれることはすべてやり切ったと思うし、他の委員の皆様の積極的な意見も反映し、大綱(案)は全体として、大変充実したものになったと思う。
この半年間の協議会の委員の皆様の叡智と卓見に心から敬意を表するとともに、心から感謝を申し上げたい。
なお、協議会の活動はいったんこれで区切りとなるが、これからも年に2回程度開かれ、大綱に基づく過労死防止対策の実施状況をチェックしたり、過労死白書の作成にあたって意見を述べるなどするようである。
数年後には「働き方が大分変わってきた。過重労働も過労死・過労自殺も確かに減った。」と言われるように、私自身も引き続き頑張っていきたいと思う。
※写真は、第5回協議会の様子。上から順に、
①岩村会長を中心に、専門家委員の方々。
②当事者委員、労働側委員の方々。
③右手は使用者側委員の方々、中央は労働基準局長を真ん中に厚労省の担当者の方々、後ろは傍聴者の皆さん。
↓ ↓ ↓
♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村
最近のコメント