2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
フォト

« No.250 忘れられない「アイドル」たち──②南沙織 | トップページ | No.252 忘れられない「アイドル」たち──③太田裕美 »

2015年8月16日 (日)

No.251 和歌山の介護老人施設職員過労死事件で勝訴判決!

1 勝訴判決

 和歌山県の広川町の介護老人福祉施設で勤務していた男性職員(当時49歳)のK・Sさんがクモ膜下出血を発症して死亡した事件の民事訴訟で、2015年8月10日、次の新聞記事のとおり、和歌山地裁で勝訴判決を得ることができた(弁護団は林裕悟、舟木一弘弁護士と私)。

◆職員死亡「過労が原因」施設側に7千万賠償命令

読売新聞 8月11日付
1508150811_4
 和歌山県広川町の介護老人福祉施設の男性職員(当時49歳)がくも膜下出血で死亡したのは過労が原因として、遺族が、施設を運営する社会福祉法人などに約8300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が10日、和歌山地裁であった。

 山下隼人裁判官は、男性が死亡直前の4か月間に月約90~150時間の長時間労働をしていたと指摘し、施設側に約7000万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は2003年から、「和歌山ひまわり会」が運営する施設「広川苑」に経理担当者として勤務。同僚職員の退職に伴って09年9月頃から業務量が増加し、10年10月に死亡した。遺族は12年3月に提訴していた。

 判決で山下裁判官は、厚生労働省の基準に照らして「著しい疲労の蓄積をもたらす過重な業務に就いていた」と言及し、「施設側は、男性の業務内容や業務量を適切に調整する措置を採らなかった」と述べた。

 また、男性が働き続けていた場合、時間外労働が継続した可能性が高いとして、月45時間分の時間外手当(月額約9万5000円)も逸失利益として賠償額を算定した。遺族側代理人の弁護士によると、こうした判断は異例という。

◆4カ月の平均時間外労働116時間 介護施設勤務の男性「過労死」認定、7千万円賠償命令 和歌山地裁
産経新聞8月11日付
1508150811_5
 和歌山県広川町の介護老人福祉施設で勤務していた男性=当時(49)=がくも膜下出血で死亡したのは過労が原因として、遺族が施設を運営する社会福祉法人「和歌山ひまわり会」などに約8390万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が10日、和歌山地裁であった。

 山下隼人裁判官は「くも膜下出血と業務との間には因果関係がある」と過労死を認定した上で、男性の心身の健康への注意義務を怠ったとして約6980万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は平成15年から施設の事務管理室長として勤務。同僚2人が退職してからは業務が増加し、22年10月にくも膜下出血で死亡した。発症前4カ月の月平均の時間外労働は約116時間で、御坊労働基準監督署は23年6月、男性の死亡が業務に起因すると判断し遺族補償年金の支給を決定していた。

 判決を受け男性の妻(53)は「全面的に認められて感謝しているが、夫は2度と帰ってこない」と涙をぬぐった。同施設は「判決文を精査し対応を決める」とコメントした。

 過労死問題をめぐっては、過労死防止基本法の制定を国に求める意見書を遺族らが提出し、25年12月に同県有田川町議会で採択された。その後、26年11月に「過労死等防止対策推進法」が施行され、今年7月には同法に基づく対策大綱が閣議決定された。

 遺族は「過労死ゼロを目指して、雇用者に過労死について関心を持ってもらいたい」と力を込めた。

2 本判決の画期的な点
 この判決は、法的な点では、以下の2点で画期的と考えている。
(1)過失相殺を認めなかったこと
 過労死事件でも過労自殺事件でも、民事訴訟になると、何かと理由をつけて過失相殺や素因減額がなされることが多い。本件でも被告側は、①被災者は健康診断で脂質異常を指摘されていたこと、②相当程度の飲酒と喫煙を続けていたことなどを挙げて、相当程度の過失相殺を主張したが、裁判所はこれを排斥し、過失相殺を認めなかった。
(2)逸失利益の計算に当たって月45時間分の時間外手当を基礎収入に含めたこと
 判決の該当部分を引用する。
 「別紙労働時間一覧表〔裁判所認定〕のとおり、Sは、くも膜下出血を発症して死亡する前、1月当たり90時間を超える時間外労働をしていたものであるところ、被告ひまわり会から時間外手当の至急を受けていなかったものの、上記のとおり労働基準法41条2号所定の管理監督者に該当しない以上、時間外手当を請求することができたものであり、また、Sの死亡前の稼働状況に照らすと、Sが将来的にも時間外労働を継続した蓋然性が高いというべきであるから、Sの逸失利益を算定する際の基礎収入については、時間外手当分も考慮するのが相当である。
 もっとも、Sが就労可能年数にわたって1か月当たり90時間以上の時間外労働を続けることができたとは考えがたいところ、脳・心臓疾患認定基準において、脳・心臓疾患の業務起因性に関して、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合には業務と発症との関連性が弱いとされていることを考慮すると、Sが継続することができた時間外労働は1か月当たり45時間程度であったと考えるのが合理的であるから、1か月当たり45時間分の限度で時間外手当を基礎収入に含めるのが相当である。」

 被災者が過労死直前まで長時間のサービス残業を余儀なくされていたケースは多いが、本来支払われるべきであった残業手当相当額を逸失利益計算の基礎収入に加えるべきか、加える場合どの程度の時間数分を加えるべきかについて、これまで取り上げた裁判例は見当たらなかった。本件で弁護団がこの点を強く主張したところ、裁判所が認めてくれたものである。

3 過労死をなくす取り組みでも頑張ってきたKさん
 Sさんが亡くなった2010年10月13日は、くしくも、過労死を防止する法律の制定を求めて、全国過労死を考える家族の会が初めて衆議院議員会館で「院内集会」を開催した日であった。

 Sさんの妻のKさんは、2010年11月に御坊労基署に労災申請後、「大阪過労死家族の会」に入会し、過労死問題は社会問題であることを知った。2011年11月から本格的に始まった「過労死防止基本法」制定の取り組みでも頑張り、2013年12月には、Kさんの働きかけを受けて、有田川町議会(12月10日)、和歌山県議会・和歌山市議会(いずれも12月19日)で「過労死防止基本法の制定を求める意見書」が全会一致で採択されたのである(「No.159 「過労死防止基本法の制定を求める意見書」を和歌山県と和歌山市が同時採択!」参照)。
 そして、その後Kさんは、過労死防止全国センターと大阪センターの幹事に就任され、さらに今年4月には大阪過労死家族の会の代表に就任されたのである。
 そんな頑張り屋のKさんがこのような勝訴判決を勝ち取ったということで、私にとって嬉しさも格別なのである。

4 控訴され、舞台は大阪高裁へ
 もっとも、この判決に対して被告らは控訴し、舞台は大阪高裁に移ることになった。
 気を引き締めて、さらに頑張っていきたい。


         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

« No.250 忘れられない「アイドル」たち──②南沙織 | トップページ | No.252 忘れられない「アイドル」たち──③太田裕美 »

3-4 過労死・過労自殺事件」カテゴリの記事

3-5 「過労死防止基本法」制定運動」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/573062/62091221

この記事へのトラックバック一覧です: No.251 和歌山の介護老人施設職員過労死事件で勝訴判決!:

« No.250 忘れられない「アイドル」たち──②南沙織 | トップページ | No.252 忘れられない「アイドル」たち──③太田裕美 »

無料ブログはココログ