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2015年9月24日 (木)

No.254 韓国で開かれた「過労死防止法の制定に関するシンポジウム」に参加

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◆9月19日(土)午後2時~5時30分、韓国・ソウルで「日本の過労死防止法の制定に関する講演会」が開かれ、過労死防止全国センター共同代表の森岡孝二名誉教授、全国過労死家族の会の寺西笑子さんと私の3人で参加した。
 主催はソウル地方弁護士会の人権委員会、民主社会のための弁護士会(民弁)の労働委員会、労働環境健康研究所の3団体である。
 シンポジウムは、次のような進行次第で行われた。

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【1】開会あいさつ(及び司会)
 開会のあいさつをされたコ・ユンドク弁護士は、「韓国でも過労死が起こるのは生産現場だけではなくなってきている。政労使会議は年間労働時間を1800時間に短縮するよう努力することを9月13日に合意したが、なかなか時短は進んでいない。過労死の労災認定率は2009年以降、30%台に落ちている。」と述べたうえで、「韓国でも過労死を減らすよう国家が管理すべきだという意見が出ているが、日本では過労死防止法が制定され、既に施行されている。今日は法律制定に関わった3人の方々に来ていただいた。」と、私たちを紹介してくれた。

【2】日本側からの報告
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(1) 「日本の労働時間と過労死」森岡孝二名誉教授
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(2) 「過労死防止法と過労死防止対策大綱」岩城 穣弁護士
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(3) 「過労死のない社会の実現をめざす遺族の願いと防止法の課題」寺西笑子さん

 いずれも、事前に送付した報告の原稿やレジュメが予め韓国語に翻訳されたパンフレットが配布され、また通訳の方(パク・ウンジョンさん(女性)と鈴木明さん)が流暢に通訳をして下さったことから、大変よく理解していただけたと思う。

【3】韓国側からの報告
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(1) 民弁の事務局次長をされているチョン・ビョンウク弁護士は、最近出された次の3つの大法院判例と、最近の判例の動向について報告した。
 ①大法院2010年12月9日判決(造船下請労働者の脳梗塞発症(存命)事案で、業務起因性は普通平均人でなく当該労働者の健康と身体条件を基準に判断すべきとした。)
 ②大法院2012年6月18日判決(軍人が服務中に自殺した事案で、自殺が自由な意志が完全に排除された状態で行われなくても、公務災害から除外されないとした。)
 ③大法院2015年6月11日判決(公務と疾病発生の間の因果関係の立証責任は主張する側にあるが、必ずしも医学的・自然科学的に明白に証明されなければならないのではなく、規範的観点から相当因果関係が認められる場合には証明があり、そして相当因果関係を認めるためには、諸事情を総合的に考慮して行わなければならないとした。)

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(2) 続いて、労働環境健康研究所所長のイム・サンヒョクさんは、「過労死防止法のことを聞いたとき、その必要性がよく理解できなかったが、今日3人の話を聞いて、すばらしい法律であることがわかった。韓国と日本の状況は似ている。韓国では最近、徹夜を含む1か月160時間の時間外労働をしていたが、脳出血を発症して亡くなったのが2か月間休業した後であることを理由に業務外とされた例や、月2日しか休日がなかったが、自発的な労働であったことを理由に業務外とされた例がある。これから日本の皆さんと一緒に、社会に警鐘を鳴らして、過労死防止のために運動をしていきたい。」という主旨のことを述べた。

【4】パネルディスカッション
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 その後、上記の5人が壇上に並んで、パネルディスカッションが行われ、次のような論点について、やり取りがあった。
・韓国では、残業代をもらうために、自ら進んで長時間労働をする場合が多いが、日本では残業代が払われないのに、重い責任やリストラ不安から長時間労働をしている。しかし、韓国もこれからそうなっていく可能性もあるのではないか。
・そのため、日本では使用者が労働時間をきちんと記録しようとせず、労災申請をする遺族は、労働時間の立証のために大変な苦労をする。
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・業務起因性の判断枠組みは韓国と日本はほとんど変わらないが、韓国では労働者本人基準説をとっている点が違っている。
・日本では会社、更には会社代表者や上司の民事責任を追及することが一般的になっているが、韓国では労災認定がされればそれで終わりということが多い。そのため、日本の電通事件判決のように、使用者の注意義務について言及した判例はない。

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◆参加者は約30名であったが、皆さん食い入るように聞き入ってくれた。韓国と日本の労働環境は、違う点もあるが共通しているところも多い。また、同じ儒教文化の国であることから、職場での上下関係や仕事に対する責任感といった点でも共通しているのではないだろうか。
 日本の過労死防止法の制定や過労死家族の会の活動などが、韓国の過労死の予防と救済に役立っていけば望外の喜びであるし、また、判例や運動面でも、お互いに学び合っていけたらよいと思う。

◆実は、シンポジウムの前夜、中心メンバーの皆様(その中には、これまでも日本の弁護士や運動団体と交流の深いキム・ジンク(金 晋局)弁護士もおられた。)が、歓迎の食事会をしてくださった。2年ほど前に交換留学で立命館大学の櫻井純理教授のもとで過労死について研究し、卒業論文を書いたカン・ミンジョンさんも来てくださり、懐かしかった。
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 また、シンポ終了後の懇親会でも、懇親会からの参加者も含めて、私たち3人を大変歓待してくださった。その場で、今後も継続的な交流をしていくこと、そのための打合せを近いうちに持とうということも決まった。

 早くからシンポジウムを準備してくださった皆様、当日の前後を含め細やかな心遣いをしてくださった皆様、本当にありがとうございました。

 ※写真は上から、
①ソウル地方弁護士会館の入口
②司会のコ・ユンドク(高 胤德)弁護士
③~⑤森岡、岩城、寺西3人の講演
⑥チョン・ビョンウク(鄭秉郁)弁護士の話
⑦労働環境健康研究所所長、イム·サンヒョク(任 祥赫)さんの話
⑧5人によるパネルディスカッション
⑨会場風景
⑩当日配布されたパンフレット
⑪懇親会にて


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