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2016年8月12日 (金)

No.291 参議院の選挙制度改革に必要な視点

 今日(8月12日)の朝日新聞社説は、「参院選挙改革 国会は「合区」を論じよ」との社説を掲載している。
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 7月10日に投開票が行われた今回の参院選では、鳥取と島根、徳島と高知が「合区」され、それぞれ両県から1人しか議員が選出できなくなった。特に「徳島・高知選挙区」では3人の候補全員が徳島出身であったため、高知では選挙が盛り上がらず史上最低の投票率に終わったとされる。
 選挙後の7月29日、全国知事会は、選挙区の合区の解消を求める決議を採択した。

 他方、このように合区して行われた選挙で、鳥取・島根選挙区での当選者(青木一彦氏)の得票数は387,787票、徳島・高知選挙区での当選者(中西祐介氏)の得票数は305,688票であったのに対し、例えば東京選挙区の田中康夫氏(おおさか維新)は459,314票で落選し、埼玉選挙区の伊藤岳氏(共産)は486,778票で落選しているのである。

 選挙制度は民主主義の要であり、国民がその主権を行使するほぼ唯一の場であることから、圧倒的多数の国民が納得できるものにすべきである。
 私は3年前にこのブログで、「参議院議員の選挙は、様々な属性に着目して別枠で選出できる制度にし、同一の枠内では許容される格差は衆議院と同じく1.5倍未満とすべきである」との一文を書いたことがあるが(No.152 「一票の格差」(投票価値の平等)について──国民主権と選挙制度のあり方(その1))、そこまで一足飛びに改善できないとしても、当面、以下のような視点での改革を急ぐべきだと思う。
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① 最も重視されるべきは、やはり「投票価値の平等」であり、衆議院と同じく「2倍」を超えてはならない。
 最高裁は2014年11月26日の判決で、2013年の参院選での1票の格差「4.77倍」について、「著しい不平等状態」であり「違憲状態」と判断した上で、「都道府県単位の区割り方式を改めるなど、現行の選挙制度自体を見直して不平等状態を解消する必要がある」としている。

 その際、他のいかなる理由をつけても、格差を2倍以上にすることは、「1人2票」を認めるのと同じ結果となり、絶対に正当化されないと考える。
 この点、今回の参院選は上記の「合区」をしても「3.08倍」であり、これは憲法違反だと考える。選挙翌日の7月10日にはさっそく違憲訴訟が提起されており、今後の判決が注目される。

② 特定の県だけを「合区」して議員定数1人を割り当てるのは、合区される県を他の都道府県と合理的理由なく差別するものであり、許されない。
 都道府県が現在の形になったのは様々な歴史的経緯があり、隣県だから仲がよいとか課題が共通しているわけではなく、その逆の場合も多いといわれる。それを無理やり合区させると、選出できなかった方の県は事実上切り捨てられる可能性があり、憲法14条1項が禁止する不合理な差別に該当すると考える。

③ 都道府県別の選挙区が地方代表的性格を持つことは否定できないが、憲法43条1項は、国会議員は「全国民を代表する」としているし、その地方にも様々な意見があるはずであり(東京などの大都市だけに多様な意見があるのではない)、それは1人が代表できるものではない。

 そもそも参院の「1人区」は、衆議院の小選挙区と同じで、その時々の支持率が比較第1党の政党が、得票率をはるかに上回る数の議席を得る、極めて非民主的な制度である。今回の選挙でも、全国32の1人区で自民党は21勝11敗で、約3分の2の議席を獲得している。11の選挙区では野党共闘が実現し、野党候補が競り勝ったためこのような結果になったが、野党共闘がなければ自民党がほぼ全部の議席をとった可能性がある。実際、前回2013年の参院選では自民党は29勝2敗と圧勝したのである。
 このように、そもそも選挙区に「定数1」を割り当てることは、衆議院の小選挙区と同じく、極めて重大な弊害があるのである。
 この点、朝日の社説は、「選挙区の定数を増やして、比例区を減らすといった策が考えられるのではないか」としているが、国民の多様な声が反映しやすい比例区を減らすのは論外である。

④ 国民の声が届きにくいのであれば、むしろ議員数を増やすべきである。
 合区は地方の声を切り捨てるものだというが、その一方で国会議員の数は「多すぎる」という。どこかおかしくないか。どこかに、余っている議員がいるのか。業界代表や労働組合代表であっても、それも「国民の声」である。

 国民の声が十分に国会に届かないとすれば、そもそも国会議員が少ないのである。もともと、議員定数削減を声高に叫んできたのは、国会に多様な国民の声が反映するのを快く思わない、大企業と富裕層(いわゆる「1%」の人たち)であり、議員定数削減によって切られるのは国民の声なのである。

⑤ 国会議員の経費削減を言うのなら、議員歳費を減らすか、むしろ政党交付金をやめるべきである。
 現在、国会議員には、「歳費」(給与)、文書・交通費、秘書(3人分)給与、立法調査費(所属政党へ)など(以下「歳費等」という。)で1人年間約6000万円が支払われているとされる。そして、これに加えて、所属国会議員5人以上の政党に、政党交付金(政党助成金)が合計320億円も、同じく国から支払われている。議員一人あたりにすると4300万円以上になる。

 政党交付金の320億円というのは、上記の国会議員の歳費等(1人6000万円)で割ると、何と530人分の歳費等の額に相当する。国会議員を仮に100人増やしても、それに要する歳費等(60億円)は、毎年の政党交付金の5分の1にしかならないのである。
 政党交付金が始まったのは1995年であるが、その前は政党は自前で活動資金を工面していたのである。この政党交付金こそが、現在の政治を金まみれにし、国民の声を遠ざけている元凶である。

 必要な議員数を増やし、それに要する経費は、政党交付金や議員歳費を減らすことによって捻出すべきである。この点朝日社説は、議員歳費を削ることには言及するが、政党交付金については触れていない。何かタブーでもあるのだろうか。
 いずれにせよ、国民はもうそろそろ、国会議員の定数削減を「身を切る改革」などともてはやし、とにかく「善」だとする誤った呪縛から、自らを解放すべきではないか。

⑥ 私としては、結論として、あるべき参議院の選挙制度は、「地域ブロック別の比例代表制」がベストだと考える。
 これによって、投票価値の平等は限りなく平等にできるし、また、ブロック内の政党はそのブロックの中の過疎の問題などで議論を戦わせ、その地域の住民はそれを評価して投票し、その投票数に応じて選出された議員によって、住民の声が国会に反映されることになる。

 ぜひ、国民の議論を深め、このような方向で制度の改正につなげていってほしいと思う。

 ※画像は、いずれも日本経済新聞のサイトから借用しました。

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