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2016年10月10日 (月)

No.297 25年後に再び電通で若者が過労自殺──企業責任の重さと過労死防止の喫緊性

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◆史上初めての「過労死白書」の公表をトップで報じた10月8日付け朝日新聞記事のすぐ下に、電通に入社後わずか9か月足らずで過労自殺した女性社員の労災認定が報じられた。

電通の女性新入社員自殺、労災と認定 残業月105時間 朝日新聞デジタル 10月7日(金)21時50分配信

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 広告大手の電通に勤務していた女性新入社員(当時24)が昨年末に自殺したのは、長時間の過重労働が原因だったとして労災が認められた。遺族と代理人弁護士が7日、記者会見して明らかにした。電通では1991年にも入社2年目の男性社員が長時間労働が原因で自殺し、遺族が起こした裁判で最高裁が会社側の責任を認定。過労自殺で会社の責任を認める司法判断の流れをつくった。その電通で、若手社員の過労自殺が繰り返された。

 亡くなったのは、入社1年目だった高橋まつりさん。三田労働基準監督署(東京)が労災認定した。認定は9月30日付。

 高橋さんは東大文学部を卒業後、昨年4月に電通に入社。インターネット広告を担当するデジタル・アカウント部に配属された。代理人弁護士によると、10月以降に業務が大幅に増え、労基署が認定した高橋さんの1カ月(10月9日~11月7日)の時間外労働は約105時間にのぼった。
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 高橋さんは昨年12月25日、住んでいた都内の電通の女子寮で自殺。その前から、SNSで「死にたい」などのメッセージを同僚・友人らに送っていた。三田労基署は「仕事量が著しく増加し、時間外労働も大幅に増える状況になった」と認定し、心理的負荷による精神障害で過労自殺に至ったと結論づけた。

 電通は先月、インターネット広告業務で不正な取引があり、広告主に代金の過大請求を繰り返していたと発表した。担当部署が恒常的な人手不足に陥っていたと説明し、「現場を理解して人員配置すべきだった」として経営に責任があるとしていた。高橋さんが所属していたのも、ネット広告業務を扱う部署だった。

 電通は00年の最高裁判決以降、社員の出退勤時間の管理を徹底するなどとしていたが、過労自殺の再発を防げなかった。代理人弁護士によると、電通は労基署に届け出た時間外労働の上限を超えないように、「勤務状況報告書」を作成するよう社員に指導していたという。電通は「社員の自殺については厳粛に受け止めている。労災認定については内容を把握していないので、コメントは差し控える」としている。(千葉卓朗)


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 高橋さんが亡くなる前にSNSに行ったとされる書き込みや、記者会見に臨むお母さんを見ていると、無念の涙を抑えることができない。

◆この件については、既にあちこちで紹介・論評がなされているが、私なりに思うことを何点か書いておきたい。

①25年前にも若者の過労自殺を発生させながら、今回再び同様の事件を引き起こした電通の責任の重大性
 電通では、1991年にも入社2年目の24歳の男性社員が過労自殺し、両親が民事訴訟を起こし、東京地裁(平成8年3月28日原告勝訴判決)→東京高裁(平成9年9月26日原告一部勝訴判決)→最高裁(平成12年3月24日原告敗訴部分破棄差戻し判決)→東京高裁(平成12年6月23日和解成立)、という経過をたどった。
 この和解において、電通は遺族に謝罪し、過失相殺なしの賠償金全額を遺族に支払い、同社はその後労働時間管理を徹底しているとされていた。
 しかし、今回の事例も、膨大な仕事量と長時間労働によって高橋さんは精神障害を発症し、過労自殺に至っている。
 広告業界の最大手で日本の代表的な企業でありながら、25年後に再び同様の過労自殺事件を引き起こした電通の責任は、極めて重大というほかない。
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②前回の事件以降、多数の裁判例や認定基準の制定・改定、過労死防止法や大綱の制定が行われてきたにもかかわらず本件の発生を防止できなかったことの痛恨さ
 1988年の「過労死110番」開設以降、全国の過労死遺族や弁護団が、上記の裁判を含めた多数の過労死・過労自殺の労災認定を求める裁判や企業責任を追及する裁判などに取り組み、過労死・過労自殺の労災認定基準の改正や勝訴判決を積み重ねてきた。また、2010年から過労死を防止する法律の制定運動に取り組み、2014年6月「過労死等防止対策推進法」(過労死防止法)が制定され、2015年7月には「過労死等防止対策大綱」が閣議決定されるなど、過労死防止に向けた取り組みが本格的に始まっている。
 その間、「日本海庄や」や「ワタミ」での過労死・過労自殺事件が社会的な批判を浴びてきたが、それに追い討ちをかけるような今回の過労自殺の発生は、痛恨の極みである。
 このことは、法律や大綱ができただけで過労死・過労自殺がなくなることはなく、日本社会全体を変えていかなければならないことを示している。

③高校・大学等での過労死問題や自らを守るワークルールについての教育の重要性
 上記にも関連するが、高橋さんは東大文学部を卒業して電通に就職したのであるが、これまで高校や大学で、過労死・過労自殺についての知識や、自らを守るワークルールについてしっかりと学ぶ場を与えられていたら、違った結果になっていたのではないかと思わずにいられない。
 前回の過労死事件が発生したときは、高橋さんはまだ生まれていなかった。その後の25年間で、彼女が過労死の恐ろしさを学び、自らの働き方を問う教育、また職場で過労死を防止できるだけの啓発が行われていたら、彼女は自ら助けを求め、また周囲が彼女を救うことができたかもしれない。
 今年の秋以降、全国の高校等で過労死防止とワークルールについての啓発授業が一定の予算措置を伴って行われていくことになっている。このような悲しい事件が、今度こそ最後になるよう、私も力を尽くしていきたいと思う次第である。

 ※画像は上から、
 ① 高橋まつりさんの写真(ニュース報道より)
 ②・③ 高橋さんの過労自殺の労災認定を報じた朝日新聞記事(2016・10・8付)
 ④ 高橋さんの死亡前のSNSの書き込み(毎日新聞より)
 ⑤ 高橋さんの両親と川人博弁護士の記者会見

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コメント

岩城先生、玉木先生にも申し上げたのですが、是非ここでは「懲罰的慰謝料」を川人先生に勝ち得て貰いたいと思っています。

 米国など、普通に何十億という「懲罰的慰謝料」が認容されます。電通など2億や3億くらい支払っても、どういうことはなく、こういう悪質な事案については、企業に対して「過労士弁護団」が「懲罰的慰謝料」を認めさせるために、積極的に司法に訴えかけるべきじゃないでしょうか。米国並の200億とまでは行かなくとも20億くらいの判決がでるくらい、頑張って頂けませんか。

 そうでないと、こういう企業は凝りませんよ。
何度やれば気が済むんですか!全く、反省などしていない。

 当職も大手IT企業の顧問に入っておりますが、過重労働対策については、一番力を入れており、当職の話がきけないのであれば、いつ顧問を辞めても良いくらいの厳しい話しをトップにもしております。

 命を懸けて働く仕事などない。といつも言っています。
若くて、真面目で優秀な社員を自殺に追い込んだことは許し難い。だから、過労死弁護団の、当職が尊敬する弁護士の方々がきっちりとかたをつけてあげて下さい。

 ご両親の気持を鑑みると、悲し過ぎる。
それでも川人先生だから、やってくださるでしょう。当職ら社労士も皆見ていますから、「過労死弁護団」是非頑張ってください。

 当職も決して顧問先会社で、過労死・過労自殺が起こらないように人事・労務管理に精進致します。

 昨日も事案で、過重労働における労災に付いて労災等級1級の認定が下されたと従兄弟から電話がありました。当職らも当然に尽力しているのですが、労災等級1級ということです。

 障害者手帳も傷害厚生年金も、労災の障害補償年金も全て1級であったので、当職らの役目は終わりましたが、これから民事損害賠償請求等を行います。神戸なので立野弁護士にお願いすると同時に、玉木弁護士にもお願いしています。

 被災労働者は当職と同い年であり、何とも言えない思いがあります。当職は、この立場になったらきっと絶望して自殺するでしょう。本人が、どれ程辛いか。

 だから、絶対に過労死・過労自殺は撲滅しなければならないと考えています。

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