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2017年1月18日 (水)

No.308 誇らしい3人の過労死事件「卒業生」たち

 私にとって、過労死事件(過労死の労災認定、企業に対する民事訴訟など)は、弁護士としてのライフワークとなっている。強い責任感でまじめに働いた末に、突然訪れる理不尽な死。相談に来る遺族の目は、悲しみとやり場のない怒り、愛する人の死を止められなかった自責の念にうるんでいる。

 そんな傷ついた遺族を励まし、弁護団を組み、労災申請や行政訴訟、民事訴訟に取り組む。遺族たちだけでなく、私たち弁護団にとっても辛く、苦しい闘いである。そして結果は、認定や勝訴を勝ち取れる場合もあれば、残念な結果に終わる場合もある。

 かくして事件が決着すれば、依頼者は原告でなくなり、私たちの任務は終わり、弁護団は解散する。寂しさも感じるが、遺族が次のステージに進んでいく以上、それはやむを得ない。中には、元弁護団に声をかけて、「同窓会」を開いてくれる遺族もいて、とても嬉しいことである(かつて担任をした卒業生たちから同窓会に招かれる先生の気持ちがわかる気がする。)。

 しかし、闘いの中で過労死家族の会や過労死を防止する活動に関わり、過労死問題の社会問題としての本質を学び、自分の事件が終わった後も、家族の会などで後に続く人たちの力となり、また過労死を亡くすために社会に働きかける活動を共に担ってくれる「同志」になってくれる人たちがいることは、私にとって本当に誇らしい。

 そんな最高の「卒業生」として、次の3人を紹介しておきたい。

 1人目は、寺西笑子さん。京都の和食店チェーンで店長として働いていた御主人を過労自殺で失い、労災認定の闘いに続き、会社と社長を被告として民事訴訟を闘い、勝利和解を勝ち取られた。10年に及ぶ闘いを終えた翌年(2007年)の寺西さんからの年賀状には、「なごり惜しいけれど原告を卒業します。」と書かれていた。そして寺西さんは、過労死家族の会の活動に本格的に関わり、「全国過労死を考える家族の会」の代表に就任。全国の過労死遺族たちを惜しみなく支援するとともに、過労死防止法制定運動に共に取り組んだ(「No.64 朝日新聞の「ニッポン人脈記」に紹介されました」、「No.77 東京新聞に「過労死防止法」の取り組みが紹介されました」)。ジュネーブの国連社会権規約委員会の会議にも参加し、国会の厚生労働委員会でも意見陳述をされ(「No.187 「過労死防止法」いよいよ制定への最終ステージへ!──(その2)5/23衆議院厚生労働委員会で意見陳述と満場一致採択!」)、法律制定後は過労死遺族の全国の顔として、押しも押されぬ大黒柱となっている。

 2人目は、小池江利さん。和歌山県内の老人介護福祉施設で事務責任者をしていたご主人を過労死で失い、寺西さんと同じく労災認定と民事訴訟を闘い、一審和歌山地裁で勝訴判決(「No.251 和歌山の介護老人施設職員過労死事件で勝訴判決!」)、二審大阪高裁で勝利和解を勝ち取った。和歌山県在住にもかかわらず、闘いの中で大阪過労死家族の会に入会し、過労死防止法制定の署名活動に熱心に取り組み、和歌山県議会、和歌山市議会、有田町議会の3つの地方議会で「過労死防止基本法の制定を求める意見書」の採択を実現した(「No.159 「過労死防止基本法の制定を求める意見書」を和歌山県と和歌山市が同時採択!」)。2015年4月からは大阪過労死家族の会の代表に就任した小池さんは、勝利記念文集の中で、「近い将来、日本、世界中で過労死がなくなり、私達のような苦しい思いをする遺族がいなくなるように願い、過労死問題は私の一生の課題であると決意を新たにしています」と述べている。

「過労死の悲しみ、もう二度と」法整備訴え署名活動(2013年11月8日付け読売新聞) http://blog.goo.ne.jp/stopkaroshi/e/737ff6eb0d3b52bf9e966b9380e66788

 家族を過労死で亡くした遺族らが7日、「過労死防止基本法」の制定を国に求める意見書を有田川町議会の議長らに手渡した。議会での採択を求めており、広川町の介護老人福祉施設で働いていた夫(当時49歳)を亡くした主婦小池江利さん(51)(有田川町)は「夫の死を無駄にしたくない」と活動に励んでいる。(落合宏美)

 2003年から事務職として働いていた小池さんの夫は、10年10月、残業中に脳動脈瘤(りゅう)破裂が原因のくも膜下出血で倒れ、8日後に亡くなった。11年6月に御坊労働基準監督署から労災認定を受けた。

 就職してから本来の業務である経理に加え、ヘルパーの資格を生かした業務や宿直もこなし、休日に出勤することも少なくなかった。小池さんが「きちんと休んで」と訴えても時間が取れないようで、ほぼ毎日4、5時間は残業していたという。「まじめで責任感が強い人でした」と振り返る。

 小池さんは、そうした夫の仕事ぶりに疑問を抱き、「過労死110番」に相談。弁護士の紹介で入会した「大阪過労死を考える家族の会」(大阪市)で、同じ境遇の遺族らと出会った。

 「過労死と認められても大切な人が戻らない現実に、『無理にでも仕事を辞めてもらっていれば』と遺族は自分を責める。こんな思いをもう誰にもしてほしくない」と、同法制定に向けた署名活動などに参加するようになった。

 遺族や弁護士らでつくる同法制定実行委員会は、国や企業に過労死を防止する責任があることなどを明記した過労死防止基本法の制定を求める活動を11年にスタート。今年6月には同法制定を目指す超党派の国会議員連盟が結成され、開会中の臨時国会への法案提出を目指している。


 3人目は、桐木弘子さん。宮崎県で23歳の息子さんを過労自殺で失った桐木さんは、労災申請から国を被告とした行政訴訟(「No.69 宮崎の地で、過労自殺行政訴訟を提訴」、「No.195 過労自殺させた会社と、防止できなかった労基署の「醜い野合」」)、会社に対する民事訴訟(「No.211 宮崎ホンダ23歳青年過労自殺事件、民事訴訟でも証人尋問──問われる裁判所の「眼力」」)のすべてが不当にも認められなかったが、各地の過労死防止啓発シンポジウムで遺族として発言し、2016年11月に「東九州過労死家族の会」を結成し、その代表に就任した。桐木さんは、過労死防止全国センターのニュースの中で、「インターネットで、「大阪過労死を考える家族の会」と出会うことができ、労災申請から裁判まで、たくさんの方達の支援を受けて闘うことができた」、「息子の死を無駄にしないために、今度は私が、被災者や遺族のためにこの経験を生かし、地元に家族会を作ろうと決心しました」と述べている。

過労死の悲劇なくそう 「東九州家族の会」発足 (2016年11月23日付け大分合同新聞) https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2016/11/23/JD0055222907

 過労死をなくそうと、大分・宮崎両県の遺族らが22日、「東九州過労死を考える家族の会」を立ち上げた。結成集会が大分市のホルトホール大分であり、過労死を生まない社会にするための啓発活動や遺族支援に取り組んでいくことを誓った。
 会員は、家族を失った大分・宮崎の遺族5人と弁護士9人の計14人。代表に桐木弘子さん(59)=宮崎県川南町、副代表に野本幸治さん(74)=大分市=を選んだ。桐木さんは「手を取り合い、周りの力を借りながら頑張っていきたい」と決意を述べた。
 同会は、過重労働に苦しむ人や遺族からの相談を受ける他、啓発活動に力を入れる。会員が労災申請する際などには、孤立しないよう心理的支援や情報提供をして寄り添う。九州全体に活動を広げる方針。
 2007年に次女(当時31歳)を労災で亡くした野本さんは「娘の死を無駄にしないために、過労死を防ぐ活動を夫婦でしたいと思っていた」と話す。設立が具体化してきた今年8月、妻の美千世さんをがんで亡くした。「『やっとできたね』と妻も言ってくれるだろう」と話した。
 相談、問い合わせは桐木代表(TEL090・9484・2016)。

 3人とも、既に弁護士と依頼者という関係を卒業し、一人立ちして大きく羽ばたいている。頼もしくもあり、また、いとおしくもある。教え子が甲子園やオリンピックに出場した、高校時代の元監督(?)の気持ちは、こんなだろうか。

 私にとって「卒業生」はみんな大切だが、残された人生を過労死の救済と予防に尽くしたいと願う私にとって、上記の3人のような「卒業生」を送り出すことができ、これからの人生を共に手を携えて生きていけることを、本当に嬉しく思うのである。

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