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2017年2月の3件の記事

2017年2月15日 (水)

No.313 「今日も会えて嬉しい」上司が恋愛感情むき出し、セクハラじゃないの?

 久々に(1年ぶりくらいか)、弁護士ドットコムの「ニュース」に掲載された。
 https://www.bengo4.com/c_5/c_1623/n_5706/ 
 今回の事例設定はやや微妙だったので、何度か加筆した。
 いつもこのブログに転載するわけではないが、今回は転載しておきたい。

「今日も会えて嬉しい」上司が恋愛感情むき出し、セクハラじゃないの?

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バイト先の上司に一方的に恋愛感情を持たれて困惑しているーー。ネット上の掲示板に、そんな書き込みが投稿された。

投稿者によると、上司は仕事あまり教えず、「今日も会えてよかった。嬉しい」など「一方的に恋愛みたいな会話」をしてくるのだという。あるときの会話では、「今度どっか遊びに行かない?」という質問に、投稿者が「えー」と返事をしたところ、上司は「分った、じゃ、また誘う」と言ったという。

投稿者は「仕事しづらくなる」「まだハタチなんでどこまでが普通でどこからが異常事態か分らなくてけっこうガチで困惑してる」と胸の内を明かす。

部下に対して一方的に恋愛感情をむき出しにした上司の発言は、セクハラなのか。岩城 穣弁護士に聞いた。

●恋愛感情むき出しの発言はセクハラ?

セクハラには、大きく分けて2種類のタイプがあり、以下のように定義づけられています。

(1)「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること」(対価型セクハラ)

(2)「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること」(環境型セクハラ)

今回のケースでは、上司が部下である投稿者に対して「今日も会えてよかった。嬉しい」といった恋愛感情をあらわにした言葉をかけています。ただ、現時点では、投稿者が拒否して不利益を受けるような事態は生じていないようですので、(1)の対価型に該当するまでには至っていません。

また、「今日も会えてよかった。嬉しい」とか「今度どっか遊びに行かない?」との言葉は「性的な言動」とまではいえないため、(2)の環境型セクハラにも当たりません。そのため、現段階では、まだセクハラには該当しないと思われます。

ただし、今後事態がエスカレートして、上司が投稿者の身体に触ろうとしてきたり、投稿者が拒否しているのにしつこく食事に誘い、投稿者が応じないと仕事上の不利益をちらつかせるような場合は(1)の対価型セクハラに該当する可能性がありますし、投稿者や他の労働者が不快感を募らせて、仕事に支障を来すといった状況が生じれば、(2)の環境型セクハラに該当する可能性があります。

●「不快なので、やめてください」とはっきり伝えることが大切

実質的に考えると、一般論として上司が部下を好きになり、職場恋愛、職場結婚などにつながることはあります。上司が部下に恋愛感情を示す言葉をかけることが許されないとまでいうことはできないでしょう(もっとも、その上司が妻帯者かどうかなど、総合的に評価する必要がありますが)。

大切なことは、投稿者が、上司からこのような言葉をかけられたくないのであれば、早い段階で、「そういう言葉は不快なので、やめてください」とはっきり伝えることです。

あいまいな対応や迎合的な態度をとると、上司が「その気があるのではないか」と誤解したり期待したりして、言動がエスカレートする可能性があります。

自分からどうしても言えない場合は、会社の人事労務などの相談担当者や、信頼できる別の上司に相談するとよいでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

岩城 穣(いわき・ゆたか)弁護士

1988年弁護士登録、大阪弁護士会所属。過労死問題をはじめ、労働・市民事件など幅広く活躍する「護民派弁護士」。


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No.312 政府案は、過労死防止にならない

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 2月14日、政府の「働き方改革実現会議」が開かれ、そこで政府が示した案では、残業時間を原則月45時間などと定めるものの、「特例」として労使協定(36協定)を結べば、繁忙期にはこれを超えてもよく、残業時間を年720時間(月平均60時間)まで認めるとしている。

 しかし、これでは全く過労死の防止にならないし、刑事罰を科すことは極めて困難である。
 例えば、次のような例を考えてみよう。

 Y社では、繁忙期には年間720時間まで残業させてもよいとする労使協定を結んでいた。Aさんは、ある年の1月から、次のような時間外労働をした。

   1月 80時間
   2月 75時間(1月からの累計155時間)
   3月 80時間(1月からの累計235時間)
   4月 75時間(1月からの累計310時間)(9月からの逆累計465時間、6か月平均77.5時間)
   5月 80時間(1月からの累計390時間)(9月からの逆累計390時間、5か月平均78時間)
   6月 75時間(1月からの累計465時間)(9月からの逆累計310時間、4か月平均77.5時間)
   7月 80時間(1月からの累計545時間)(9月から逆累計235時間、3か月平均78.3時間))
   8月 60時間(1月からの累計605時間)(9月からの逆累計155時間、2か月平均77.5時間)
   9月 95時間(1月からの累計700時間)
 9月30日、疲労困憊で帰宅したAさんは、翌朝未明、急性心筋梗塞を発症して死亡した。


 このケースでは、Aさんの時間外労働時間は、①発症1か月前は100時間に至らず(95時間にとどまる)、②発症前2か月前から6か月前まで順次平均しても80時間に達しないため、現行の過労死認定基準を満たさない。そして、③時間外労働時間の累計が年間720時間に達する前(700時間)で死亡したため、刑事罰も受けないということになるのである。
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 仮にAさんが、9月にあと5時間時間外労働をしていたら①の「発症1か月前100時間」の基準を満たしたことになるし、7月にあと5時間、又は6月と5月であと10時間の時間時間外労働をしていたら②の「発症前2か月から6か月で平均80時間」基準を満たしたことになる。そして、10月に入ってあと20時間働いていたら、累計時間外労働時間が、刑事罰を受ける年720時間を超えたことになる。

 上記のうち労災認定に関する部分は現在も同じであり、このような不都合な例は実際に数多くあるが、これを法律をもって正当化することになる。
 また、刑事罰に関する部分(年間720時間を超えると処罰する)は、今回初めての導入となるが、刑罰法規の運用は厳密になされなければならないから、「Aさんが持ちこたえてあと20時間時間外労働をしていたら有罪となるが、その前に倒れたから無罪」となるのは当然ということになる。

 このような結果をもたらす政府案が、過労死防止に役立つとは到底思えない。かえって、「100時間、80時間ギリギリまで働かせても問題ない」というお墨付きを与え、また、今でさえまともに行われていない労働時間の管理・把握を、いっそう杜撰にした方が得だということにならざるを得ない。
 国に過労死防止の責務を負わせた「過労死等防止対策推進法」のもとで、このような、いわば「過労死推進法案」が認められてよいはずはない。

【2月18日追記】
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 2月17日の衆議院予算委員会で、大西健介議員が、私のこの設例を取り上げて安倍首相に質問をした。
 前々日の2月15日に、この私のブログ記事をご覧になった大西議員から、「質問に使わせてほしい」との要望があった。大変光栄なことであり、もちろん了解した。
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 予算委員会での質疑を録画しておき、見せていただいた。
 年間720時間の時間外労働の規制と、1か月100時間、2か月から6か月平均で80時間という過労死ラインを上限にしただけでは、このような過労死事例を防げないのではないかという大西議員の質問に対し、安倍首相の答弁は、「大西委員の設例はいわば架空のものにすぎない」、「時間外労働を延長する特別な事情があるかどうかについては、現場のことをよく知っている労使が決めるので問題ない」といった、逃げの答弁に終始した。
 一方で首相は、「働き方改革実現会議で、労使の合意が得られなければ国会に提案しない」という趣旨の答弁もしていた。これは、反対を押し切って決定するつもりはないという反面、「合意が得られないのであれば上限規制の立法自体をやめますが、いいんですか」という脅しともとれた。
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 私たち過労死事件に取り組む弁護士にとっては、この設例のような事例はしばしば見受けられ、決して机上の空論ではない。にもかかわらず、首相の答弁は、そのような現場の実態を無視するものであり、真に過労死を防止する働き方改革をする意思などないのではないか、という疑いを拭えないものであった。

 この設例を使って追及してくださった大西健介議員に、心から感謝したい。


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2017年2月12日 (日)

No.311 真に過労死を防止できる労働時間規制を!~長時間労働の規制を求める院内集会に350人~

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◆2月10日、衆議院第一議員会館の地下大会議室で開かれた「高プロ・裁量労働制の規制緩和に反対し、真に実効性のある長時間労働の規制を求める院内集会」(日本労働弁護団、過労死弁護団全国連絡会議、全国過労死を考える家族の会の3団体主催)に参加してきた。
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 院内集会というのは、衆議院に2つ、参議院に1つある議員会館で、市民と国会議員が一緒に参加する集会のことで、国民・市民の声を国会に届ける重要な場である。
 私達が過労死等防止対策推進法(過労死防止法)を議員立法で制定する運動をしたときは、2010年10月から2014年6月の法律の制定までの間に、合計11回の院内集会を開き、毎回たくさんの国会議員の方々に参加していただいたことが、議員連盟の結成につながり法律制定の大きな力になった。
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◆この日は各地で大雪が降る寒い日で、新幹線も少し遅れたが、何とか開始までにすべり込むことができた。会場に着くと、入りきれないほどの参加者で、後に350人と発表された。私たちが開いてきた院内集会は200名前後から最大で274名だったから、今回の参加者数の多さがわかる。
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◆主な進行次第は、次のようなものであった。
・開会挨拶 日本労働弁護団 (弁護士)棗一郎幹事長
・報告 過労死弁護団全国連絡会議 (弁護士)川人博幹事長
・電通事件ご遺族(高橋幸美さん)からのビデオメッセージ
・長時間労働による被害者など当事者の声 2人(過労自殺で26歳の長男を亡くした高知県在住の男性、三菱電機の研究所で過重労働により精神疾患を発症し労災認定を受けた31歳男性)
・報告 全国過労死を考える家族の会 寺西笑子代表
・報告 森岡孝二関西大学名誉教授
・報告 労働団体3団体(連合、全労協、全労連)
・集会アピール採択
(終了後、厚労大臣・副大臣、公明党代表・副代表へ資料を持参)
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◆この合間合間に、以下の13人の国会議員の皆さんが次々と会場に来られ、挨拶をされた(もし抜けている方がおられたらお詫びします。)。
 蓮訪(参、民進)、山井和則(衆、民進)、長妻昭(衆、民進)、大西健介(衆、民進)、泉健太(衆、民進)、井坂信彦(衆、民進)、田村智子(参、共産)、高橋千鶴子(参、共産)、吉良佳子(参、共産)、長尾敬(衆、自民)、福島みずほ(参、社民)、牧山ひろえ(参、民進)、阿部知子(衆、民進)

 この中で、過労死防止を考える超党派議員連盟の事務局長をされている泉健太議員の「今日この場に、与党議員の方にこそ来てほしかった。」という言葉が、私にとって印象的だった。
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◆日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎幹事長の挨拶のあと、過労死弁護団全国連絡会議の幹事長で電通の高橋まつりさん事件の代理人でもあった川人博弁護士が報告した。

 川人弁護士は、電通で過労自殺した高橋まつりさんの労働実態を報告し、「上限100時間、80時間はあってはならない。もっと低いレベルでないといけない。これが、電通事件で明らかになった教訓だ」と批判するとともに、過労死対策の決定打として、勤務と勤務の間に一定の「休息時間」を義務付ける「インターバル規制」の導入を訴えた。
 また、政府が導入しようとしている、一部専門職を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ制)」の導入や、「裁量労働制」の拡大について、「裁量労働制が導入された職場でも過労死は発生している。ほとんどの場合、10時間以上働いても、8時間労働とみなされる。当然、裁量労働制度の導入は長時間労働を促進する。」、「高プロは労働法そのものの破壊といってもよい。長時間労働で高度のプロの仕事が果たせるのか。過労死寸前の長時間労働を繰り返すことで、日本の技術革新や企画開発が本当に促進されるのか」と批判した。

◆続いて、電通過労自死・髙橋まつりさんのお母様からのビデオメッセージが流された(以下全文)。


 はじめまして。髙橋幸美と申します。
 亡き娘まつりの過労死について、多くの励ましの言葉をいただき、ありがとうございます。
 この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
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 娘は、たくさんの夢を抱いて社会に出てから間もなく、望みを叶えることなく、亡くなってしまいました。
 母である私は、会社から娘を守ることができませんでした。悔しくてなりません。
 娘は、一日2時間しか、一週間に10時間しか眠れないような長時間労働の連続でした。この結果、疲れ切ってしまい、うつ病になり、いのちを絶ちました。
 娘のように命を落としたり、不幸になる人をなくすためには、長時間労働を規制するための法律が、絶対必要だと思います。
 36協定の上限は、100時間とか80時間とかではなく、過労死することがないように、もっと少ない残業時間にしてください。
 また、日本でも、一日も早く、インターバル規制の制度をつくり、労働者が、睡眠時間を確保できるようにして下さい。
 残業隠しや36協定違反などの法令違反には厳しい罰則を定めるのが大事だと思います。

 逆に、労働時間の規制をなくす法律は、大変危険だと思います。
 高度プロフェッショナル制や裁量労働制など、時間規制の例外を拡大しないでください。
 24時間365日、休息を取らずに病気にならないでいられる特別な人間など、どこにもいないからです。人間は、コンピューターでもロボットでもマシーンでもありません。
 娘のように仕事が原因で亡くなった多くの人たちがいます。それが日本の現実です。
 経済成長のためには、国民の犠牲はやむをえないのでしょうか。
 今の日本は、経済成長のために国民を死ぬまで働かせる国になっています。
 娘は戻りません。娘のいのちの叫びを聞いて下さい。
 娘の死から学んで下さい。死んでからでは取り返しがつかないのです。
 ぜひ、しっかりと議論をして、働く者のいのちが犠牲になる法律は、絶対につくらないでください。

◆和光大学教授の竹信三恵子さんは、「WEBRONZA」の記事(2017年2月7日付け)の中で、次のように述べている。まさに、言い得て妙だと思う。
 http://webronza.asahi.com/business/articles/2017020300001.html
「今回の政府案をスピード違反に例えるなら、制限速度45キロを守らないと重大事故が起きかねない道路でのスピード違反を規制するとして、「80キロ、100キロを超えたら罰金」と立札だけは立て、監視装置も沿道の警察官も増やさないようなものだ。これでスピード違反を取り締まれるのだろうか。

 規制だけでなく、全企業に罰則付きの客観的な労働時間の把握・記録義務を課し、監督官だけでなく労働行政の担当官全体も増やさなければ、実効性は担保できない。」

「労基法で規定された週40時間労働の基準が、「働き方改革」の名の下、知らぬ間に月80時間・100時間残業の基準へとすり替えられていくおそれはないのか。
 「総活躍」とは、だれもがそうした残業を前提とする働き方で目いっぱい働かされることにならないか。
 「働き方改革」が「過労死促進改革」にならないよう、今後の関係会議の動きを監視していく必要がある。」


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