2018年12月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
フォト

« 2017年11月 | トップページ | 2018年1月 »

2017年12月の3件の記事

2017年12月31日 (日)

No.333 2017年 私の15大ニュース(その2)

 続いて、第9位~第15位である。

【第9位】大阪憲法ミュージカル「無音のレクイエム」の再演に協力したこと
 昨年6月に行われた大阪憲法ミュージカル「無音のレクイエム」が、今年10月6日~9日に再演されることになった。随所に前年からバージョンアップした箇所が見られたが、前年の再演ということでチケット売りに難航が予想されたことから、私も呼びかけ人の一人として頑張り、50人くらいの方にチケットを買ってもらった。結果はほぼ完売、一部は立ち見が出るなどの大盛況となった(「No.328 昨年よりバージョンアップした「無音のレクイエム」に感動」)。私がお誘いした人たちも、揃って「よかった」と言ってくださり、ほっとした。

 聞くところでは、来年は新しい作品を上演する方向で、既に準備が始まっているようだ。1回の公演を実現するのは本当に大変なので、1年くらいお休みしてもいいような気もする。しかし、10月の衆院選で再び大勝した安倍政権と自民党は、いよいよ憲法改正に向かってアクセルを踏み出しており、ここ1、2年の間に憲法改正の国会発議→国民投票が行われそうな勢いである。そんな状況だけに、今の日本国憲法が大切にしてきた価値を見つめ直そうという、このミュージカルの取り組みが大きな意義を持っていることもまた事実である。
 もし、次のミュージカルが具体化したら、また協力していきたい。

【第10位】働き方ASU-NETの10周年記念誌を作成したこと
 私が森岡孝二先生と共に共同代表を務めるNPO法人「働き方ASU-NET」が2016年に10周年を迎え、10月14日に記念の「つどい」を開いたことは、昨年の年末のまとめで書いたとおりである。
19010110img_9145
 この「10周年のつどい」には間に合わなかったが、10周年の記念誌を作って、今年3月22日の次の「つどい」で配布した。
 自画自賛だが、10年間の年表やこれまでの資料を整理していて、10年間本当に地道にいろいろなことをしてきたなあと、感慨深かった。

【第11位】事務所を改装したこと
 事務所の話題が今ごろになって出てくるが、今年1月18日から20日にかけて、事務所の中を改装した。
 主な変更点は、①これまでASU-NETに又貸ししていた部分を返してもらい(ASU-NETは6階に移転した)、そこを弁護士室にした。
 ②弁護士室だった部分を相談室にしたうえで、従前の相談室とL字型につなげられるようにした。
 ③事務室を少し広げた。
180101
 これで、3つの相談室をつなげると最大20人規模の会議ができるようになった。既に過労死家族の会や欠陥住宅関西ネットの事務局会議、ゴルフ預託金返還請求訴訟の弁護団会議などに活用されている。

【第12位】事務所の若手弁護士が頑張ってくれたこと
 事務所の若手弁護士の稗田隆史弁護士は大車輪の頑張りをしてくれているし、安田知央弁護士も、子育てをしながらも今年9月から通常勤務に復帰して頑張ってくれている。昨年12月に入所した元山裕晶さんは諸般の事情で8月末に退所したが、来年1月から新たに井上将宏弁護士が入所することになっている。

 私も既に人生の第4コーナーを回っており、若い人たちに何を伝え、何を残していくかを、そろそろ考えるべき段階に入っているなと思う。

【第13位】事務所開設2周年をお祝いしたこと
 この事務所を開設したのが2015年4月なので、今年4月に2周年を迎えた。まだまだ駆け出しだが、6月9日、事務所内記念イベントとして劇団四季のミュージカル「キャッツ」を観劇し、その後食事をした。
180102img_9098
 「キャッツ」は1998年3月末にあべの総合法律事務所の事務所旅行でニューヨークに行った際に観たことがあったが、そのときは英語で何もわからなかった(笑)。いつか観たいと思っていた劇団四季の「キャッツ」を事務所の全員で観ることができてよかった。

【第14位】事務所の親睦会「ゆうあい会」の2年目の企画が順調にいったこと
 わが事務所の親睦会である「ゆうあい会」も2年目に入った。今年は3月4日に産経新聞の小野木康雄記者をお招きして第2回総会、7月4日に神戸散策のイベントを行った。

 12月16日のお楽しみ講演会は、ソプラノ歌手・徳畑作子さんの美しい独唱で始まり、岩城弁護士が「老後を安心して生きるために」、安田弁護士が「相続にまつわるQ&A」と題してミニ講演を行った後、NPO法人生活館を運営する武内冠二さんから「高齢者の願いと現状~高齢者をサポートするNPO法人の経験から」と題して講演をいただいた。途中、同じく生活館で介護支援専門員(ケアマネージャー)として活動している清水あゆ美さんからも、介護認定の実情について、貴重なお話をいただいた。
 その後の会場の参加者を交えた質疑応答では、次々と手が挙がり、参加者の関心の高さを示した。
 詳細な報告は、年明けに発行する事務所ニュース「春告鳥」第7号に掲載されている。

【第15位】5回のコンサートに行ったこと
 今年は、5回のコンサートに行った。①加山雄三(1月13日)、②青木まり子(3月31日)、③「君と歩いた青春2017」(9月17日)、④沢田研二(10月31日)、そして⑤サム・トゥッ・ソリ(11月17日)である。
 ②については「No.317 昭和の香りが漂うお店で、懐かしい歌に浸る──青木まり子さん“弾き語りLIVE”」で、また③については「No.326 5年ぶりの「君と歩いた青春2017」で書いた。
 ①の加山雄三さんは、私のほぼ一世代上で、「若大将」として一世を風靡し、今も根強いファンがいる。
 ④の沢田研二さんは、グループサウンズ全盛期から「ジュリー」の愛称でスーパースターとして活躍してきた人であるが、還暦を過ぎたあたりからパワーあふれるコンサートを続け、今や「中高年の星」のような大人気である。かつての貴公子のイメージはなく、小太りだがワイルドな風貌、それでいて意外とひょうきんな感じも受けているのではないか。何よりも、少ししわがれたが声量が半端でない。
180102img_9105
 ⑤のサム・トゥッ・ソリは、日本のうたごえ運動との音楽交流の中で生まれた、韓国の実力はアーティストによる特別編成ユニットで、「生・志・歌」の意味だそうである。
 ある方の熱心なお勧めで初めて聴きに行ったが、その歌の上手さと迫力に感動した。
180102img_9104
 韓国では昔からの民主化運動の中で生まれた歌が、新しい歌とともに民衆の運動の中にしっかりと根付いている。日本にもかつて労働歌や革命歌があり、また60年代から70年代にカレッジフォークが流行したが、今ではナツメロになってしまっている。今後日本でも社会運動が盛り上がるためには、こういった歌が生まれてくる必要があるのではないか。そんなことを感じたコンサートだった。

 以上が、私の2017年の15大ニュースだった。他にもいろいろあるが、書き出すときりがないので、これをもって1年間のまとめとしたい。
 これらのどれをとっても、周囲の皆さんのご協力がなかったら実現しなかったものばかりである。
 改めて、お世話になったすべての皆さんに、御礼を申し上げたい。ありがとうございました。

 ※画像は上から
 ①働き方ASU-NET10周年記念誌の表紙
 ②改装後の事務所内の様子
 ③ミュージカル「キャッツ」のパンフレットより
 ④サム・トゥッ・ソリのメンバーからのコメント(当日配布されたパンフレットより)
 ⑤「ふたたび光化門で」の歌詞

         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

2017年12月30日 (土)

No.332 2017年 私の15大ニュース(その1)

 一昨年、昨年に続いて、私にとって大きな出来事だったことを整理しておきたい。今回も、前半(第1位~第8位)と後半(第9位~第15位)に分けて書くことにする。

【第1位】弁護士登録30年目を迎えたこと
 私は1988年に弁護士登録したので、今年は30年目の節目の年であり、9月30日には、司法研修所第40期30周年記念大会」という名の大同窓会が福岡で行われた。これについては「No.327 30年前の修習時代に一気にタイムスリップ──司法研修所第40期30周年記念大会に参加して」で書いたが、この時に30年ぶりに会い、4次会まで旧交を温め合ったT君が、12月26日に急死されたとの訃報が届いた。私と同じ61歳、あまりに早すぎる。
 もう、私たちはそういう年代に入っていることを自覚し、健康維持に努めたい。

【第2位】初孫が生まれたこと
 7月16日、長男夫婦に、私たち夫婦にとっては初孫にあたる男の子(今は「たくちゃん」と呼ばれている)が生まれた(「No.324 「孫はなぜかわいいか」についての一考察」)。
180101
 生まれて1週間後から39日間、我が家で過ごしてくれたが、その後お宮参り(9月10日)、お食い初め(10月22日)でも来てくれ、そしてこの年末年始も来てくれている。生後5か月半となり、倍くらいの大きさになった。まだ「アウ、アウ」くらいしか言えないが、よく笑うし、うつ伏せになっても大丈夫なくらい首もしっかりしてきた。上野動物園のパンダの「シャンシャン」はたくちゃんの1か月ほど前の6月12日に生まれたが、既にもうおてんば娘となって走り回っているが、人間は大きくなるのに何とも時間がかかるんだなあと、改めて思う。

【第3位】フォークギターで歌を始めたこと
 2年前の1月5日の投稿で、「ただカラオケに行ったりパソコンやi-Podで音楽を聴くだけでなく、演奏も含めて、何かしてみたいと思う今日この頃であるが、仲間もいないし、特に演奏できる楽器もない。誰か誘ってくれないかなあ。」と書いたが(「No.268 歌は楽しい。Let's sing together!」)、ついに一歩を踏み出した。
180101171022img_8297
 1月末にあったある会で、同じ事務所だった後輩弁護士のN君に、「フォークギターで歌うグループ作らへん?」と提案したところ、「僕、キーボードできるんですよ。やりましょか」と言ってくれた。次に、私の高校時代の友人の女性に声をかけてみたところ、こちらもOKしてくれたのである。
 3月に顔合わせをして今後の進め方について相談し、その後ほぼ月1回のペースで練習してきた。ここまでの感想は、「意外といい線いってるけど、人様に聴いてもらえるまでになるのは大変。でも、何より楽しい」というところだろうか。
 実は、1月13日に開催予定の「今里フォークジャンボリー」に、思い切って参加を申し込んでいるので、この日が私たちのデビューの日になる予定である。私の知り合いの方は、来なくていいです(笑)。

【第4位】6つの過労死防止啓発シンポジウムに参加したこと
 今年は、①高松(3月6日、No.315参照)、②大阪(11月2日、No.329参照)、③中央(11月8日)、④和歌山(11月29日)、⑤鹿児島(12月2日)の5つの過労死防止啓発シンポジウムに参加した(①以外は国主催、①・④・⑤では私も講演者の一人)。
 未開催で残っていた5県(福島、高松、高知、鹿児島、沖縄)が平成28年度に自主開催にこぎつけたことから、平成29年度はついに全47都道府県+中央会場の合計48会場で、国主催で啓発シンポジウムが実現した。過労死防止法制定後、過労死防止全国センターとしてこれを目指してきたので、本当に嬉しい。
180101171202
 鹿児島シンポでは、過労死110番の第1号事件の原告だった平岡チエ子さんと、過労死したNHKの女性記者佐戸美和さんのお母様の佐戸恵実子さん、息子さんを過労自死で亡くし私が担当して宮崎地裁で闘った桐木弘子さんが揃い踏みで遺族発言を行ったことは感慨深かった。

【第5位】5回の過労死防止啓発授業を担当したこと
 今年は、私も高校での過労死防止啓発授業を5回担当した(和泉総合高校(1月10日、No.307参照)、藤井寺工科高校(2月6日)、西野田工科高校(2月8日と12月22日)、四條畷学園(3月2日))。
 私が担当したのは、卒業して社会に出る直前の夜間高校生が多かった。厳しい労働環境の中、働きすぎ・働かされ過ぎで命を亡くしたり心身の健康を害することがないように願うばかりである。

【第6位】過労死遺児交流会(かいじゅうの会)に委員として参加したこと
 8月8日~10日の2泊3日で、長野県の池の平(白樺湖畔)で行われた過労死遺児交流会(愛称かいじゅうの会)に企画委員として関与し、当日も参加してきた。詳細は別稿(No.322)を参照されたい。

【第7位】過労死遺児マー君の「ぼくの夢」が歌になったこと
 これも、別稿で投稿したが(「No.330 マー君の詩「ぼくの夢」が歌になりました」)、私にとって大変嬉しいことだった。
180101171215
 上記【第3位】で述べたように、ギターと歌を始めた私は、ぜひこの歌も歌いたいと思って練習し、12月15日にあった大阪過労死家族の会の忘年会で、寺西笑子さんと2人で歌うことができた。また、来年1月13日の今里フォークジャンボリーの初ステージでも歌いたいと考えている。

【第8位】過労死をテーマにした落語第2弾「ケンちゃんの夢」の制作に協力したこと
180101_2
 昨年、過労死をテーマにした落語「エンマの願い」(No.298参照)を書いた落語作家の小林康二さんが、第2作となる「ケンちゃんの夢」を作り、各地の啓発シンポジウムで桂福車さん、笑福亭松枝さん、桂三風さんらによって上演されている。
 これについても、私は過労死遺族の平岡チエ子さんや寺西笑子さんとともに、制作段階で意見を述べたり議論に参加した。
180101171111
 なお、この2つの過労死落語の制作過程について、現在毎日新聞の夕刊の「晴レルデ」のコーナーで「エンマの願い」のタイトルで長期連載が続いている(ただし、①以外はいずれも有料記事)。
過労死、落語で問いかける(2017年05月20日)
②言い合い重ねネタ昇華(2017年06月03日)
③遺族の思い込めて(2017年06月17日)
④本気の語りに遺族も涙(2017年07月01日)
⑤落語の力で世論動かす(2017年07月15日)
⑥堅い用語を軟らかく(2017年07月29日)
⑦滅私奉公に異を唱え(2017年08月12日)
⑧今も悔いは消えない(2017年08月26日)
⑨哀しみに友という明かり(2017年09月09日)
⑩闘いは一人よりみんなで(2017年09月30日)
⑪国連巻き込み必死のパッチ(2017年10月14日)
⑫国会動かした遺族の粘り(2017年10月28日)
⑬労組の責任問う新作(2017年11月11日)
⑭オチに思いを落語の色を(2017年11月25日)
⑮競争あおって三者三様(2017年12月09日)

(以下「その2」に続く)

 ※写真は上から
 ①たくちゃん(12月18日撮影)
 ②お食い初めの日の食事会にてギター披露(10月22日)
 ③鹿児島シンポにて、佐戸美恵子さんの訴え(12月2日)
 ④大阪家族の会忘年会で、寺西笑子さんと「ぼくの夢」を歌う(12月15日)
 ⑤鹿児島シンポで「ケンちゃんの夢」を上演する桂三風さん(12月2日)
 ⑥私の事務所で小林さん、福車さん、寺西さんと「ケンちゃんの夢」の打合せ(11月11日付け毎日新聞夕刊)

         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

2017年12月10日 (日)

No.331 過労死・過労自殺の正当な認定のために、認定基準の改正を

 現在、過労死・過労自殺(自死)が労働災害に当たるかどうかは、厚労省が定めたそれぞれの認定基準に基づいて、労働基準監督署が判断している。この認定基準の内容と運用が適切でなければ、過労死・過労自殺の遺族が切り捨てられるばかりか、労基署による是正勧告や刑事訴追、企業名公表といった措置も執られず、過労死・過労自殺を生み出す労働実態が改善されないことになる。

 現在の過労死(脳・心臓疾患)の認定基準は2001年12月12日に制定されたもので、既に16年、過労自殺(精神障害)の認定基準も2011年12月23日に制定されて、既に6年が過ぎている。また、内容的にも、私たち過労死弁護団からみて不十分な点や不合理な点も多い。

 例えば、脳・心臓疾患の認定基準では、発症前の時間外労働時間が100時間以上、2か月以上の平均で80時間以上という基準が一人歩きし、これを超えると認定されやすく、それを下回るとほとんど認定されないというのが実情であるが、例えば20歳の若者と65歳の高齢者が同じ基準でよいのだろうか。身体障害者と健常者はどうか。また、同じ時間外労働時間数でも、昼間と深夜、交替制労働では疲労が異なるのではないか。

 精神障害の認定基準についても、労働時間については同じことがいえる。また、いったんうつ病などの精神障害にかかった人については、それが「増悪」したか、いったん「治ゆ」したうえで「再発」したと認められるかで認定要件が全く異なるのは不合理である(「増悪」の場合は、初めて精神障害にかかった場合よりもはるかに厳しい「極度の長時間労働や「極度の心理的負荷」が求められている)。

 2014年に制定された過労死等防止対策推進法(過労死防止法)は、過労死等があってはならないとし、これをゼロにするために総合的な対策を執るとしているが、たくさんの過労死遺族たちが、この認定基準のハードルによって切り捨てられ、苦しんでいる。極端にいえば、認定基準のハードルを上げれば上げるほど、過労死等は「減らせる」のである。

 過労死防止法の附則第2項は、「この法律の規定については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。」としており、3年が過ぎたことから、「過労死防止を考える超党派議員連盟」で同法の規定の見直しが始まっており、また、これとあわせて改訂が行われる予定の「過労死等防止対策大綱」についても厚労省に設置された「過労死等防止対策推進協議会」で議論が始まっている。

 過労死・過労自殺の認定基準の改正は、法律や大綱の改定そのものではないが、過労死防止法14条は「政府は、過労死等に関する調査研究等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、過労死等の防止のために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。」としているのであるから、認定基準の然るべき改正が「過労死等の防止のために必要な法制上の措置」に当たることは明らかである。

 私が所属する過労死弁護団全国連絡会議では、本年9月29~30日に宮崎市で開かれた総会で、過労死弁護団としてこれら認定基準の改定案を作ることを決め、来年4月には公表できるようにすることを視野に、それぞれについて検討チームを設置し、議論を開始している。私は脳・心臓疾患のチームに所属し、議論に参加している。

 そのような問題意識から、10月28日に開かれた「第9回過労死等防止対策推進協議会」で私は、次のように発言した(議事録が厚労省のホームページに公開されている)。 

(引用開始) 171120img_8328

○岩城委員 弁護士の岩城です。私は4年目に入ろうとしている過労死防止の取組を大きく進める上で、過労死防止法14条の過労死等の防止のために必要な法制上又は財政上の措置としての心臓疾患と精神障害それぞれの労災認定基準の見直しが急務になっているのではないかということをお話をしたいと思います。

 過労死防止法2条は、過労死等について定義をし、このような過労死等はあってはならないということで、防止対策を定めております。他方、労基法、労基法の施行規則、労災保険法では、血管病変等、著しく増悪させる業務による脳・心臓疾患、心理的に過度な負担を与える自死を伴う業務による精神障害について、労働災害として補償を行うとしておりますが、これは過労死防止法における過労死、過労自殺の定義とほぼ同じものと考えられます。

 そして、厚労省や人事院、地方公務員災害補償基金は、これら認定のために、いわゆる認定基準を作って運用しており、これに基づいて労災と認定されたものが、いわゆる過労死、過労自殺の件数や事例として、今回の白書などでも取り扱われております。

 また、業務上認定がなされると、過労死を発生させたということで、刑事訴追や是正勧告等の監督行政が行われたり、企業名が公表されるなどして、過労死防止に向けた働きかけが行われております。

 そうであるならば、これらの認定基準は、社会的実態として発生している過労死、過労自殺を過不足なく、労災として認定するものでなければなりません。なぜなら、もし認定基準の要件が不当に厳しく、社会通念上は過労死防止法や労基法に定める過労死等であるにもかかわらず、認定要件の基準の要件に当てはまらないために、労災ではないとされると、当該事案は過労死等には該当しないとされ、遺族への補償もされず、また防止措置も取られないことになり、過労死の防止は進まないということになります。私は旧認定基準の時代に、3か月連続で100時間を超えた事案で、当時は直前1週間しか中心に見ないという制度の下で、業務外の認定がなされ、非常に悲しい思いをした記憶があります。
171120img_8326
 このような観点から、現在の過労死と精神障害の認定基準を見ますと、以下のような点が指摘できます。1つは、現行の認定基準は、脳心は2001年から実に16年、精神障害は2011年から既に6年が過ぎております。いずれも、過労死防止法が成立する前に制定されたものであり、過労死防止法の趣旨に合致するものかどうかの検証が十分とは言えません。また、その後の調査研究や、社会意識の変化の反映も担保されておりません。

 例えば、①脳・心臓疾患の認定基準では、80時間、100時間といった時間外労働時間を中心としており、80時間を下回る事案では、今回の白書33ページの表1-10を見ても、60時間以上~80時間未満の事例では、248件中わずか14件しか認定をされておりません。80時間というのは、事実上の足切りの基準になっているというのが実状です。
171120img_8327
 また、②労働時間を会社が適切に把握していなかったために、かえって労災認定が受けられないという不都合も生じております。さらに、 ③60歳、70歳といった高齢者や、身体障害や内部障害を抱える障害者であっても、若者や健常者と同じ100時間、80時間という時間外労働時間によって評価をされている。また、④出張のための移動時間、持ち帰り残業、自主的に疲れの取れない中途半端な中抜けの休憩時間といったものも、きちんと評価すべき仕組みがありません。さらには、⑤深夜交替制勤務や不規則な勤務、精神的な負荷の強い勤務などの質的過重性が、事実上軽視されているといった問題もあります。

 このように、一方では過労死防止法で過労死をなくすという宣言をしながら、他方で、明らかに社会的に見れば過労死とされる事案が十分な評価を受けられていないという問題があることから、認定基準の見直しについて御検討いただけないかということで、厚労省のほうに御質問したいと思います。

○岩村会長 では、厚労省の方、いかがでしょうか。今日、担当部局が来ていないので難しいかとは思いますけれども、可能な範囲でお願いします。

○村山総務課長 御意見は、担当の部局にもしっかり伝えたいと思います。他方で、現行の認定基準は多数の訴訟の中でも業務上外判断の規矩準縄として一定認められてきている、そういう積み重ねもあろうかとは思います。いずれにしても、御意見があった点については、しっかり担当の方に伝えたいと思います。
(引用終わり)

 ※画像は、10月28日の第9回過労死等防止対策推進協議会の会合の様子


         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

« 2017年11月 | トップページ | 2018年1月 »

無料ブログはココログ