2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
フォト

カテゴリー「3-2 ブラック企業に負けない!」の15件の記事

2016年2月 5日 (金)

No.271 「ブラック社労士」の放置は許されない(その4)

■全国社労士会連合会の会長インタビュー
 朝日新聞デジタルに、全国社労士会連合会の大西建造会長のインタビューが掲載された。

 今回のような事案の背景には、毎年1000人という急速な社労士の増加のもとでの過度の競争があるという。それを言えば、弁護士の場合は毎年2500人くらい激増しているのだから、弁護士についても同じような問題が起こりうるし、現に一部に起こっている。

社労士の役割、どう考える 「社員をうつ病に」ブログ問題 大西健造・全国社労士会連合会会長

朝日新聞デジタル2016年1月29日05時00分

 「社員をうつ病に罹患(りかん)させる方法」をブログに書いた愛知県の社会保険労務士が、県の社労士会から処分を受けた。厚生労働省も処分する方向だ。今回のブログ記事や社労士の役割について、全国社会保険労務士会連合会の大西健造会長に聞いた。


 ■安心できる職場づくり、大原則

 ――問題になったブログの内容をどう思いますか。

 「連合会会長として、全国の皆様に深くおわびしたい。とうてい考えられない内容で、社労士としてどうか、という以前の問題であり、きちんと対処することが組織に課せられた使命だと考えている。昨年12月25日に連合会長として声明を出し、愛知県社労士会も二つの処分を同時に行った。当然の処分だと思う」

 ――社労士は“企業寄り”だと思われているのではありませんか。

 「社労士の役割は、社労士法に定められている通り、『事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること』。確かに、社労士は会社側から顧問料を頂いているケースが多い。しかし、会社だけのことを考えていたのでは会社は発展しない。労働者の意向も尊重しなければ、会社が伸びるはずがない。伸びる会社は、労働者が安心して働くことができて、働きがいを感じている会社だと思う。そういう職場をつくるのが労務管理の大原則だ」

 ――社労士が経営者の意向に逆らうことは無理なのでは。

 「経営者の中には『自分が法律だ』という人もいる。社労士がいきなり『それは違う』と指摘すると、経営者のプライドが傷つくし、反発もある。そこをうまくやるのが社労士の仕事。長くお付き合いして、職場環境の改善を支援していくことがだいご味だ」

 ――一部の社労士が「ブラック企業」を支えているという批判があります。

 「4万人いる個々の社労士の業務をすべて把握することは難しいので、100%ないとは言い切れないが、本来であれば、『社長、それはあきまへんで』というのが社労士の役割だ」

 ――社労士の数が増えています。競争が厳しくて刺激的なことをいう人がいるのでは。

 「ここ数年、会員数は毎年約1千人増えている。適度な競争は依頼者の利益につながるが、刺激的なホームページや過度の競争は望ましいことではない。連合会や都道府県会でも、会員のホームページをチェックしており、極端な内容であれば指導している。今回の件も報道以前に把握しており、対応を協議していた」

 ――昨年4月に改正社労士法が施行されて、業域が広がりました。

 「社労士制度は2年後に創設50周年を迎える。業務は一層高度になっている。連合会は業域を拡大することを目指しているが、そのためには、国民から信頼していただくことが大前提だ。今回のようなことがあると、社労士のイメージが落ちてしまいかねない。今後はこういうことがないように、都道府県会と会員に情報発信していきたい」

 (聞き手=編集委員・沢路毅彦)


 ■厚労省も処分を検討

 問題になったのは「すご腕社労士の首切りブログ」。昨年11月24日付で「社員をうつ病に罹患(りかん)させる方法」と題された記事が掲載された。

 ツイッターなどで批判が相次ぎ、12月4日夕方時点で記者が確認すると記事は削除されていた。

 愛知県社労士会はこの社労士の会員権を3年間停止し、退会を勧告。ただし、勧告に強制力はなく、会員権を停止されても社労士の業務はできる。業務停止の処分を出せるのは、監督官庁である厚生労働省。厚労省は2月に本人から事情を聴き、処分を決める。

 これまでの処分は、具体的な法律違反があったケースがほとんどで、講演会での発言やブログの記事などを理由にした処分は「前例がない」(厚労省監督課)という。

 若者に劣悪な労働環境を強いる「ブラック企業」の背後には、社労士や弁護士などの専門家がいるという指摘がある。「ブラック企業ビジネス」(朝日新書)の著者でもあるNPO法人POSSEの今野晴貴代表は「違法だとわかっているのに、違法行為を指南する社労士がいる。法的正義ではなくビジネスチャンスを広げることを考えている。こうした“ブラック士業”の取り締まりが急務だ」と話す。

 ◆キーワード

 <社会保険労務士(社労士)> 労働・社会保険の手続きや人事・労務の専門家としてアドバイスをする国家資格。社労士として仕事をするには、社会保険労務士試験に合格し、社労士名簿に登録する必要がある。現在の登録者は約4万人。

 研修・試験をへて特定社労士になると、労働者個人と企業の間で起きた紛争をあっせんする仕事もできる。昨年4月の改正法施行で(1)社労士が単独で扱える労使紛争の金額を120万円に引き上げ(2)裁判で、労務管理・社会保険に関して弁護士とともに陳述することができる、など権限が拡大された。

■K社労士に対し「業務停止3か月」の可能性
 2月4日の朝日新聞デジタルは、次の記事を配信した。

労務士、業務停止3カ月へ 「うつ病に」ブログで厚労省

朝日新聞デジタル 2月4日(木)12時46分配信

 愛知県内のベテラン社会保険労務士の男性がブログに「社員をうつ病に罹患(りかん)させる方法」と題した文章を載せた問題で、厚生労働省は4日、懲戒処分に向けた聴聞手続きを愛知労働局で開き、業務停止3カ月とする方針を本人に伝えた。

 社労士は「文章が刺激的だったが、うつ病に罹患させるつもりはなかった」として、業務停止でなく戒告にとどめるよう求めた。厚労省は本人の釈明を踏まえ月内にも処分を決める。

 問題の文章は連載「すご腕社労士の首切りブログ」で昨年11月に掲載。社員を「うつ病にして会社から追放したい」という質問に答える形で、「失敗や他人へ迷惑をかけたと思っていること」を社員に繰り返し、ノートに書かせるよう勧めるなどの内容だった。

 厚労省側は聴聞で、この回を含む昨年7~12月の掲載内容について「労働者への違法な権利侵害をそそのかすような内容で、社労士の信用・品位を害する」と指摘。社労士法が禁じる「重大な非行」に当たるとした。(斉藤太郎)

 社労士に対する懲戒処分は厚生労働大臣が行い、①戒告、②1年以内の業務停止、③失格(注、資格剥奪のこと)の3種類が法定されている(社労士法25条、25条の3)。

 その処分に当たっては、公開の「聴聞」期日が行われることになっており(社労士法25条の4)、この日の聴聞期日で、厚労大臣が処分内容を示したうえで、本人の弁明を聴いたものと思われる。

 今回、厚労大臣が示した「業務停止3か月」という方針は、妥当だろうか。

 私は、今回のブログ内容のひどさ、本人に十分な反省が見られないこと、社会的な反響の大きさ、社労士に対する信頼を大きく損なったことなどから考えると、③の失格処分とされてもおかしくなかったし、業務停止にとどめるとしても、少なくとも6か月以上とされるべきであったと思う。
(ちなみに、弁護士の場合、懲戒の種類は①戒告、②2年以内の業務停止、③退会命令、④除名の4種類となっており、そもそも社労士について業務停止が「1年以内」までとされているのはアンバランスといえる。)

 とはいえ、業務停止は、たとえ1か月であっても、すべての顧問契約を無条件で解除しなければならず(仮に、裏で再契約の約束をしてばれると、それ自体が新たに懲戒処分の対象となると考えられる。)、本人に対する打撃は大きい。

 これに対して「戒告」の場合はそのようなことはないため、本人への打撃は小さく、「この程度のことをしても戒告になるだけだ」という受け止めになり、一般予防の効果も小さい。

 そう考えると、業務停止3か月というのは、厳しい処分であることは間違いない。

 今回の処分を契機に、弁護士や税理士なども含め、士業者のあり方が厳しく問われることになったといえよう。
 何よりもK社労士には、猛省を求めたい。


         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

2016年1月28日 (木)

No.270 未来を切り開く連帯~若者たちの運動から学びあう~

 すごい企画が実現することになった。
1601282420160316


 いま、全国で若者たちの新しい社会運動が始まっている。
 誰から押しつけられたわけでもなく、自分たちの頭で考え、SNSなどを駆使しながら、街頭に出て、社会に訴えている。
 しかし、私たちだってそうである以上に、彼らに悩みや模索がないはずはない。そんな彼らの、生の声を聴いてみたい。また、分野や目的も異なる彼ら同士の議論も聴いてみたい。
 そんな思いを彼らに持ちかけたところ、なんと7つの若者たちの団体のメンバーが集まってくれることになったのである。
 分野も、世代も超えた連帯は可能なのかを考え学び会う、本当に貴重な場になることは間違いない。
 私はリレートークのコーディネーターをさせていただくことになっている。ちょっと緊張するが(笑)、頑張りたい。
 皆様のご参加を、心からお待ちしています。

NPO法人 働き方ASU-NET 第24回つどい

未来を切り開く連帯
 ~若者たちの運動から学びあう~

 若者の働き方や平和問題については、今年も厳しい状況が予想されます。  
 ASU-NETは若者たちの自発的な労働運動や市民運動に注目してきました。
 若者たちはどんな思いで行動を起こしたのか。また、どんな苦労に直面し、どんな展望を持っているのか。活躍する分野は違っても、そこには共通する思いがあるのでは。互いに理解を深め、ネットワークを広げながら民主主義と社会変革を語るつどいにできればと考えています。ディスカッションでは、会場参加者さまからの質問にも率直に答えていただきます。若者から学び、世代を超えて連帯を考えるつどいにできればと思います。多くの皆さんのご参加をお待ちしています。

日時 2016年3月16日(水)18時30分~20時45分
会場 エルおおさか南館10階1023号(開場18時)
    地下鉄谷町線「天満橋」駅より西へ300m
    地下鉄堺筋線「北浜」駅より東へ500m

第1部 代表者によるリレートーク
 坂倉 昇平 さん  NPO法人POSSE 雑誌POSSE編集長
 寺田ともか さん  SEALDs KANSAI(シールズ関西)
 中村  研 さん  SADL(サドル)
 磯田 圭介 さん  ANTS (アンツ)
 北村  諒 さん  関西学生アルバイトユニオン
 橋口 昌治 さん  AEQUTAS KYOTO(エキタス京都)
 北出  茂 さん  地域労組おおさか青年部 書記長

第2部 報告者によるパネルディスカッション
 コーディネータ-:岩城 穣 弁護士(NPO法人働き方ASU-NET代表理事)

資料代:500円

主催 NPO法人・働き方ASU-NET
〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目4-18梅ヶ枝中央ビル7階
TEL:06-6809-4926 FAX:06-6809-4927
E-mail:info@hatarakikata.net  URL:http://hatarakikata.net/


         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

2015年12月31日 (木)

No.266 「ブラック社労士」の放置は許されない(その3)

(その2)から続く)
 12月18日に私たちが行った懲戒請求やブラック企業対策弁護団など6団体の監督要請もあり、K社労士のブログへの対応や社会的な批判が更に広がっている。

◆K社労士が登録している愛知県社労士会は、12月10日に監察綱紀委員会、12月25日に緊急理事会を開き、K社労士に対して「3年間の会員権停止」と「退会勧告」の処分を決めたという。これについては、下記の毎日新聞など多くの新聞が報道し、またテレビでもNHKが12月30日夜7時の全国ニュースで報道したのをはじめ、NNNなどが取り上げ、社会的関心の高さを物語っている。
151231nhk_3


 もっとも、処分といっても、これは愛知県社労士会が自らの会員社労士に対して行う「注意」「勧告」にとどまり(社労士法25条の33)、正式な懲戒処分(戒告、1年以内の業務停止、失格(注、資格剥奪のこと))を行うのは厚生労働大臣である(社労士法25条、25条の3)。

毎日新聞2015年12月30日

社労士 書き込み「社員うつにさせる方法」会員権停止に

 愛知県社会保険労務士会(鬼頭統治会長)は、同会会員の社労士が「社員をうつ病に罹患(りかん)させる方法」などとした文章をブログに記し「社労士の信用、品位を害した」として3年間の会員権停止処分と退会を勧告することを決めた。処分は同会の規定で最も重い懲戒処分という。

 社労士は自身のブログに、社員を「うつ病にして会社から追放」する方法として「バツを与えるべき根拠を就業規則に盛り込みましょう」「モンスター社員に降格減給与えてダメージ与えます。適切な理由でっち上げましょう」「万が一本人が自殺したとしても、うつの原因と死亡の結果の相当因果関係を否定する証拠を作っておくこと」などと記し、11月24日にブログに掲載した。ネット上で批判が相次ぎ、現在ブログは公開されていない。

 内容を問題視した日本労働弁護団や「全国過労死を考える家族の会」が監督官庁の厚生労働省に厳しい監督を要請していた。

 愛知県社労士会によると、今月25日の臨時理事会で処分を決め、28日に郵便で処分内容を記した文書を発送。厚労省にも処分を報告した。会員権停止で会の役員就任や会の事業への参加はできなくなる。会は社労士法に基づく法定団体で、退会した場合はその会が所在する都道府県では社労士として活動できなくなる。

 愛知県社労士会の担当者は「国家資格である社労士資格を会が奪うことはできない中で一番重い処分とした。それぐらいブログの内容は許容できないものだった」と話している。

 この社労士は、事前の毎日新聞の取材に対して「処分が出た場合、粛々と従う」と話していた。【東海林智】

◆また、同社労士会は同日、「社会保険労務士の職業倫理に関する緊急声明」を発表した。

                       平成27年12月28日

社会保険労務士の職業倫理に関する緊急声明

                      愛知県社会保険労務士会
                      会長 鬼頭統治

 最近、社会保険労務士の職業倫理の欠如と言える事件が複数発生しております。そのような中で、今回、愛知県社会保険労務士会所属の会員が「社員をうつ病に罹患させる方法」と題した文章をブログに載せたことで社会的に問題視され、関係機関、一般国民及び全国の社労士から非難を受けることとなった事案が発生しました。愛知会として事態を重くみて、緊急の正副会長会をすぐに開催し対応を検討しました。早急に情報の収集に努め、連合会と愛知労働局監督課と情報連絡を密に取りつつ、並行して監察綱紀委員会を開催することとし、その後、臨時正副会長会を開き、監察綱紀委員会の開催及び臨時理事会の開催へと進めました。愛知県社会保険労務士会会則に則り、会則違反事案として処分を機関決定し、12月25日の臨時理事会において全会一致で承認を得ました。同日,この結果を愛知労働局及び連合会へ報告したところであります。また、全国社会保険労務士会連合会大西健造会長から「社会保険労務士による不適切な情報発信について」という意見書が平成27年12月25日付で発信されました(連合会ホームページに掲載)。
 社会保険労務士の大多数が適正な労務管理や社会貢献事業に日々努力している一方で、ほんの一部の会員による不適切な労務管理の情報発信等は、国民からの信頼・信用を失墜させるものであります。今回の事案の緊急性を鑑み、愛知県社会保険労務士会では急遽1月27日、28日において臨時の「倫理研修」を開催することにしました。
 会員の広告については、会則倫理規定第13条の規定に基づく業務の広告に関する細則第3条(禁止される広告)第2号「誤導又は誤認のおそれのある広告」及び第3号「誇大又は過度な期待を抱かせるような曖昧・不正確な広告」をすることができないと規定されています。また、インターネットによる広告、ソーシャルメディアにおける情報発信の場合、専門家として発信する情報に対する責任感の欠如や顧客の機密情報を漏えいするリスクに対する認識の欠如が見られますが、この場合には、不適切な情報発信により、当該会員に対する顧客、国民一般からの信用が失われ、ひいては社会保険労務士全体に対する国民の信頼、行政機関との信頼を大きく失墜させることにつながることを自覚すべきであります。愛知会として、不適切な情報発信、職業倫理に反する非違行為に対して指導を強化するとともに、一般国民から非難されることの無いよう社会保険労務士法の第1条(目的)の趣旨を理解し、国民の信頼向上に努めてまいりたいと考えております。

以 上

◆私たちが懲戒請求を行い、また愛知社労士会が労働局(厚生労働大臣)に報告を行ったことから(社労士法25条の3の2)、今後、K社労士に対する懲戒手続きが開始されると考えられる。そのためには「聴聞」手続きが行われ、聴聞期日は公開で行われる(社労士法25条の4)。

 厚労省は社労士に対する懲戒処分の基準を定めており、「社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行があったとき」は、「失格処分、1年以内の業務の停止又は戒告」とされている。

 報道によると、K社労士は「世間をお騒がせしたのは申し訳ないと思っています。一部、筆が滑って過剰な表現はありましたがブログに書いた趣旨は間違っていないと思います」などと話しているという(NHKニュース)。

 一般に、懲戒処分を行うに際しては、本人が反省しているかどうかも考慮される。このようなK社労士の態度は、「十分に反省していない」と評価され、厳しい処分につながる可能性がある。

 「その1」に書いたようにK社労士はいわば確信犯であり、「筆がすべった」、「表現の自由の範囲内だ」などといった不合理な弁解を許さず、大きく損なわれた社労士に対する社会的信頼を回復させるためにも、同社労士には厳しい処分を求めたい。


         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

2015年12月27日 (日)

No.265 「ブラック社労士」の放置は許されない(その2)

151225
((その1)から続く)

 私たちの懲戒請求や監督要請を受け、また、社会的な批判が広がるなかで、現在、厚労省と愛知県社労士会が本件について調査をしており、年明け早々にも処分結果が公表されるようである。

 12月25日、全国社会保険労務士会連合会が次のような会長声明を発表した。

平成27年12月25日

「社会保険労務士による不適切な情報発信」に関する会長声明

               全国社会保険労務士会連合会
                 会長 大西健造
                  (社労士制度推進戦略室)

今般、複数の報道機関により報じられている「社員をうつ病に罹患させる方法」と題する文章をブログとして掲載する等の社会保険労務士による不適切な情報発信は、社会保険労務士に対する国民の皆様からの信用を失墜させるものであり、到底容認できるものではないと考える。

大多数の社会保険労務士が企業における適正な労使関係の維持、発展に貢献している一方で、一握りの会員が、インターネット等の公の情報発信の場で、中立公正を旨とする社会保険労務士の職業倫理に反し、労働社会保険諸法令の規定を理由として、労働条件を不当に引き下げることを助長するような就業規則の作成、労働社会保険の保険料を不当に引き下げる脱法的行為、雇用関係の助成金等の不適切な方法による受給等を指南するような広告等を発信している。

これらの行為は、社会保険労務士法第1条に目的として掲げている「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上」からかけ離れたものであることから、当会としては、あらためて、すべての社会保険労務士に対して、社会保険労務士倫理綱領に定める品位保持の観点から自らの行為を律すべきことについて、注意を喚起したい。

今般の事態を踏まえ、当会としては、あらためて都道府県社会保険労務士会と連携の上、不適切な情報発信をはじめとする職業倫理に反する行為を行う会員に対する指導等を強化するとともに、職業倫理の徹底を図るための研修、広報等の事業を拡充し、国民の皆様からの信頼向上に努めてまいる所存である。

以 上

 K社労士のブログに対する社会的な批判の広がりを受けたものとはいえ、全国社労士会連合会がこのように迅速な対応を行ったことは、高く評価したい。

 K社労士ほど露骨でなくても、程度の差はあれ、企業のパワハラや解雇などを積極的に指導することを「ウリ」にする社労士は一定数いるといわれる。

 また、社労士だけではなく、一部の弁護士にも、労働者との対立を煽り、さまざまなノウハウを売り込むような人たちが大手を振っており、「ブラック士業」などと呼ばれている。

 今回の懲戒請求や厚労省の監督責任の履行要請を契機に、社労士や弁護士のあり方について議論が深まることを期待したい。


         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

2015年12月26日 (土)

No.264 「ブラック社労士」の放置は許されない(その1)

151226k_3


 まずは、以下の文章を読んでいただきたい。

Q 当社にいるモンスター社員は、上司に逆らう、遅刻する、タバコさぼりなど行動が異常です。なんとかうつ病にして会社から追放したいのですが、いい方法ありますか。もちろん会社が法的に責任取らなくていい方法に限ります。


結論から言えば可能です。少し手間がかかります
まずバツを与えるべき根拠を就業規則に盛り込みましょう。
①就業時間中の喫煙の禁止 
②上司に文句を言うことの禁止 
③遅刻の禁止  

そしてこれから違反した場合には厳しく処罰を与えることを決めます。そして指導として本人に反省文書を書かせることです。これもバツの一つです。適切合法なパワハラを行ってください。適切にして強烈な合法パワハラ与えましょう

①まずノートと筆記具を用意します。
それから、ノートに自分が今まで行ってきた失敗や他人へ迷惑をかけ  
たと思っていること、不快に感じたこと、悲しかったことなどを思い出せるだけ書き、その事柄に対して自分に非があるように関連付けて考えて書いていくことを繰り返しましょう。うつ状態というのは自分を責める病気なので、後悔の量が多ければ多いほど(過去に否定的な執着する程)発症し易いです。

②次にモンスター社員に降格減給与えて経済的にダメージ与えます。  
適切な理由でっち上げましょう

③そして万が一本人が自殺したとしても、うつの原因と死亡の結果の相当因果関係を否定する証拠を作っておくことです。なぜなら因果関係の立証は原告側にあり、それを否定する証拠を作成しておくことは、会社の帰責事由を否定することになるからです。したがってそれができればうつ病自殺されても裁判で負けることはありません。

④本当にうつ直前になったら、休職命令与えてもいいでしょう。休職満了による退職でも可能でしょう。
 その際には企業法務労働法務に詳しい特定社労士のサポートを得ることが必須となります。
 モンスター社員に精神的打撃与えることが楽しくなりますよ。
以上

 これは、愛知県のK社労士が自らのブログ「すご腕社労士の首切りブログ」で、「第40回 社員をうつ病に罹患させる方法」と題して書いているものである(批判を浴びたため現在は抹消している)。
151226k_4


 この人は「公開設定」した自らのフェイスブックでも右のようなやり取りを載せており、いわば「確信犯」である。

 私は、12月上旬にこれを読んで、頭に血が逆流するような怒りを覚えた。
 過重労働やストレス、パワハラなどでうつ病にかかった労働者が、どれほど苦しんでいるか。過労自殺にまで追い込まれることがどれほど悲惨か。被災者や遺族たちがどんな思いで労災認定を求め、企業責任を問い、さらには過労死防止法や過労死防止大綱を制定させてきたのか。
 この社労士が行っているのは、被災者や遺族たちのこれらの思いや努力を踏みにじるものであり、ようやく国が遺族や事業主らと連携しつつ過労死防止対策を総合的に推進しようとしている動きに冷水を浴びせるものである。絶対に許すことができない。

 そこで、「ブラック企業対策プロジェクト」の事務局長をされている島﨑量弁護士らと相談し、12月18日、ブラック企業対策や過労死問題に取り組む弁護士7人・社労士2人の有志9人で、この社労士に対する懲戒請求を行った。

1512261218


 また、同日、日本労働弁護団、過労死弁護団全国連絡会議、全国過労死を考える家族の会、ブラック企業被害対策弁護団、ブラック企業対策プロジェクト、NPO法人POSSEの6団体の連名で、厚生労働大臣に、このような企業に違法不当な指導を行う社会保険労務士に対して積極的に監督責任を果たすよう要請を行うとともに、記者会見を行った。

 K社労士に対する懲戒処分を求めるネット署名(change.org)も行われ、既に600人以上の署名が寄せられている。

 これらの動きはマスコミ(新聞、テレビ)でも報道され、社会的反響を呼んでいる。

◆ブログに公開 弁護士らが厚労相に懲戒請求

毎日新聞2015年12月19日

 日本労働弁護団や全国過労死を考える家族の会など6団体は18日、愛知県社会保険労務士会に所属する社労士が「社員をうつ病に罹患(りかん)させる方法」と題した文章をブログに公開したとして、管轄する厚生労働省に監督責任を果たすよう求めた。弁護士と社労士計9人は、塩崎恭久厚労相にブログを執筆した社労士の懲戒を請求した。

 この社労士は11月24日付のブログに質問に答える形で「上司に逆らう社員をうつ病にして追放する方法」を書いた。就業規則を変更して上司に文句を言うことの禁止などを盛り込むことを提案するなどし、「万が一自殺したとしても、うつの原因と死亡の因果関係を否定する証拠を作っておくこと」とした。ブログは批判を浴び、現在は公開されていない。

 過労死家族の会のメンバー、中原のり子さんは「ブログの内容は殺人を勧めるようなもの」と批判した。この社労士は「モンスター社員を真人間にするためとの思いで書いたが、誤解を与え、申し訳ない」と話している。【東海林智】

◆「社員をうつにする方法」 社労士、ブログに掲載
朝日新聞2015年12月19日

 愛知県内のベテラン社会保険労務士の男性が「社員をうつ病に罹(り)患(かん)させる方法」と題した文章をブログに載せ、県社労士会が問題視して今月に調査を始めた。職場での取り組みに逆行するような発信はネットでも批判され、厚生労働省愛知労働局も事態を重く見て調べる方針だ。

 問題の文章が載ったのは11月下旬。「すご腕社労士の首切りブログ モンスター社員解雇のノウハウをご紹介!!」と題した連載の40回目で、上司に逆らったり遅刻したりする社員を「うつ病にして会社から追放したいのだが」という質問に答える形だった。

 ブログでは、「失敗や他人へ迷惑をかけたと思っていること」などを社員に繰り返しノートに書かせるよう勧めた。「うつ状態は後悔の量が多いほど発症しやすい」とし、社員が自殺した場合の助言もあった。

 ネットでは「あまりにひどい」などの批判が起きた。「ふざけるな!」といったメールを数件受けた男性社労士は「怖くなった」として、12月上旬に連載をすべて削除した。

 国家資格の社労士は「適切な労務管理その他労働・社会保険に関する指導を行う専門家」(愛知県社労士会)。同会では40回目の内容について「多くの人が自殺に追い込むような主張と読む。同じ社労士として迷惑だ」と批判が出ており、調査を開始した。

 関係者によると、会則で処分対象となる社労士の「信用または品位を害する行為」にあたりかねないとして監察綱紀委員会を10日に開催。男性社労士は聴取に対し、「うつ病に罹患させる」というのは本旨でなく「筆が走りすぎた」としつつ、「表現の自由」の範囲内と主張したという。

 厚労省にも苦情が続き、18日には日本労働弁護団や全国過労死を考える家族の会など6団体が「若者使い捨てが疑われる企業に違法行為を教唆する極めて悪質なもの」として監督責任を果たすよう要請した。

 愛知労働局は社労士法上の「重大な非行」にあたるかどうかを調べる方針だ。担当者は「ブログの内容は時代に逆行している。社員が自殺しても構わないととられる論調はどう考えても行きすぎ」と指摘する。

 男性社労士は取材に対し、「不快に思った人におわび申し上げる。雑記帳のように書き誤解を招いた。強烈な教育的指導で社員が真人間になれば、社員も会社も楽しくなるというつもりで書いた」と話した。

 厚労省によると、仕事のストレスなどによる「心の病」の問題で昨年度に労災と認められた人は497人で過去最多。職場でメンタルヘルスが不調な人を見つけて改善を促すため、政府は12月から従業員50人以上の事業所で「ストレスチェック」を義務化している。(斉藤太郎)


((その2)に続く)

         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

2015年12月10日 (木)

No.262 「時の人」2人によるツイン講演とビッグ対談──働き方ASU-NET 第23回つどい

15120923
 今年、『雇用身分社会』(岩波新書)を著した森岡孝二さんと、『下流老人』(朝日新書)を著した藤田孝典さんのお二人の講演と対談が、2015年12月9日、働き方ASU-NET第23回つどい「これでええんか!雇用と貧困 『雇用身分社会』と『下流老人』」で実現した。

 開場には、140人を超える人たちが詰めかけ、大変な盛況となった。

 第1報告 森岡孝二さん 「雇用身分社会」を問う~働きづらさと生きづらさの正体~
15120923img_0026
 この27年間で非正規労働者(パート、アルバイト、契約、嘱託、派遣など)が17%から40%に増加。若者と中高年では50%を超える。名ばかり正社員、請負労働者、個人請負を含めると50%を超える。
 年収200万円以下が1800万人もおり、うち1500万人が非正規。非正規を中心に、労働者の貧困化が進んでいる。
 現代のブラック企業は、『職工事情』に書かれた戦前の暗黒工場での働かせ方と極めて似ている。
 非正規の増大の結果、年収150万円未満の若者が激増している。
 雇用身分社会から抜け出す鍵は、①労働者派遣制度の根本的見直し、②非正規労働者の比率の引き下げ、③雇用・労働の規制緩和との決別、④最低賃金の引き上げ、⑤8時間労働制の確率、⑥性別賃金格差の解消である。

 第2報告 藤田孝典さん 「下流老人」の現状と対策~知っておきたい知識とノウハウ~
15120923img_0030
 皆さん、まずは今日、絶望してください。
 日本の国民の貧困率(相対的貧困率)は16.1%(6人に1人)で、OECD加盟国34か国中6番目に高い数値。高齢者(65歳以上)では22%で、4~5人に1人となる。
 下流老人とは、生活保護基準(さいたま市の場合12万7000円程度)以下で暮らしている、又はその恐れがある高齢者で、現在700万人いると推計される。
 下流老人の特徴は、①収入が少ない、②十分な貯蓄がない、③頼れる人がいない、の3つの「ない」である。
 下流老人になるパターンは、①病気や事故による医療費負担、②子どものパラサイトによる共倒れ、③熟年離婚による資産分与、④認知症による防衛力の低下。
 若者で年収400万円以下は下流化のリスクが高く、非正規雇用は下流老人に直結する。
 下流化を防ぐには、①生活保護制度の正しい理解、②社会保障・福祉制度の活用、③プライドを捨てること、④可能な限り貯蓄すること、⑤地域社会への積極的参加(自治会、市民団体、NPO法人、老人クラブ、各種の生涯学習教室など)、⑥「受援力」を身につけること、である。
 下流老人を増やさないためには、自虐的な貧困観から脱し、ソーシャルアクション(ITの活用を含む)を続けることである。
15120923img_0048
 休憩を挟んで、私の司会で、2人に壇上対談を行っていただいた。
 いろいろ愉快な掛け合いも含めて、大変盛り上がったと思う。
 会場から、全大阪生活と健康を守る会の大口耕吉郎さんと、関西学生アルバイトユニオンの青木克也さんが、生々しい報告をしてくださった。

 最後に、「集会宣言」(案)が、満場一致の拍手で採択された。

 確かに、今回のつどいは衝撃的な内容だった。これまでは若者の非正規化や貧困が語られてきたが、藤田さんのお話は、これまで終身雇用の中できちんと年金保険料を納め、そこそこの退職金も受け取って「逃げきり」を果たしたと思われている高齢者の中で「下流老人化」が進んでいるというものである。とすると、現在の中年も若者も含めてほとんどの国民が下流老人になることが避けられないことになる。

 その意味で、事態は余りにも深刻である。しかし、一方で、その深刻な危機感を共有することによって、新しい社会連帯も生まれてくるのではないか。そして、制度(政治)によって生み出された現状は、政治を変えることによって変えられるはずである。今回のつどいでは、そんな希望や展望も共有できたのではないだろうか。

 終了後、エルおおさかの隣の「多氣」で行った懇親会も、お2人を囲んで大いに盛り上がったことは言うまでもない。

         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたらとっても嬉しく、励みになります。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

2013年12月12日 (木)

No.156 ハッピーエンドでよかった!──「ダンダリン」最終話

1312112


 12月12日、「ダンダリン」最終話の録画再生のボタンを、緊張しながら押した。
 だって、第1話の出だしが、労基署の同僚たちが黒い喪服を来て、宿舎の片づけをするところから始まっていたんだから‥‥。
 いったいどんな終わり方をするんだろうか。お願いだから、死ぬなんてことはやめてほしい‥‥ドラマを毎週観ていた人は、ずっと気になっていたはずである。

 でも、ダンダリンは死ぬどころか、退職も「未遂」に終わり、冤罪で捕まった南三条クンは釈放されたうえ、南三条クンをハメた小西美月や、アプリドリームに魂を売りダンダリンに「死んで下さい」とまで言い放った胡桃沢社労士までもが救われて、見事なまでのハッピーエンドだった。
 よかった、よかった。

 No.143で、「なかなかやるな」と書いて以降も、毎回ダンダリンは楽しみに観てきた。
 前回投稿以降の各回の一応のテーマは、次のようなものであった。

  第5話(10月30日)  労働者の退職の自由
  第6話(11月6日)  外国人の技能実習と最低賃金法違反
  第7話(11月13日)  過重労働と通勤災害
  第8話(11月20日)  ブラック企業の「自主的研修」
  第9話(11月27日)  労働者から「個人事業主」への契約切り替え
  第10話(12月4日) 労働時間の記録改ざん+南三条が冤罪で逮捕
  最終話(12月11日) 働くことの意味は?

1312112_2

 最初は、おちゃらけた行進曲のようなオープニング曲や、融通の効かないダンダリンのキャラに違和感を感じたが、だんだんこれらが「クセに」なり、松任谷由実のエンディング・テーマ(「今だけを きみだけを」)がジーンとくるようになってきた。
 「リーガル・ハイ」と競合したこともあって視聴率は今イチだったとも聞くが、私の周囲では、概ね評判はよかった。
 労働基準監督署を舞台に、労働基準監督官を主人公にした初のドラマとしては、予想以上の反響を呼んだのではないだろうか。
 時代的にも、大変マッチしていたと思う。
 聞くところでは、このドラマが始まってから、労基署への相談が激増しているという。
 来週から観れないと思うと、ちょっと寂しい。

 最後に、「ダンダリン」をおさらいしたい人は、こちらがおすすめです。
 ・ウィキペディア 「ダンダリン」
 ・「ダンダリン」公式サイト
 ・「ダンダリン」あらすじ


         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

2013年10月27日 (日)

No.143 なかなかやるな、「ダンダリン 労働基準監督官」

131027_3


 「半沢直樹」の終わりあたりから話題になっていたこのドラマ(竹内結子主演)が、10月2日から毎週水曜22:00~23:00に放映されている。視聴率は各回とも10~7%くらいのようで、まずまずのヒットといえよう。
 平日の夜のドラマはなかなか観れそうにないが、録画しておいた4話をこの週末にまとめて観た。
 一言で言えば、「なかなかやるな」という感じである。
 そうか、「ダンダリン」というのは、主人公の労働基準監督官の名前(段田 凛)の名前だったのか。法令違反を見つけると見逃さずに突き進んでいく主人公のイメージと重ねることに成功している。

 各回のテーマは、次のとおりであり、いずれもタイムリーで、いい線をついている。
 第1回(10月2日) ブラック企業、サービス残業
 第2回(10月9日) セクハラ、名ばかり店長
 第3回(10月16日) 建設現場の転落事故
 第4回(10月23日) 就活学生の内定切り

 原作は、マンガ「ダンダリン一〇一」(いちまるいち)で、コミック「モーニング」に2010年に月1回で連載されたものとのことである。2010年当時これらの問題は話題になっていたものの、マンガに取り上げたのは先見的だったといえるが、現在はもっともっと酷くなっていることから(「ブラック企業」はまさに今年の流行語大賞になってもおかしくない言葉になっている)、今年になってTVドラマに制作され人気を博する条件が整ったということであろう。

131027_2


 作者の田島隆氏は社会保険労務士ではなく行政書士の方のようであるが、労働法規や労基署についてよく勉強していると思う(おそらく、弁護士や社労士、労基署関係者の助言があるのであろう)。
「現実は少し違う」といった議論もあり得るが、実態とかけ離れた裁判ものや弁護士ものに比べたら、ずっとましである。

 このドラマのいいところは、「本当は労働者はこんな風に法律によって守られているんですよ」「労基署は、本当はこんな風に労働者を守ってくれる役所なんですよ」というメッセージを発しているところだと思う。こんなドラマは、これまでなかったのではないか。

 また、折しもこの9月から、厚労省が率先して「若者の使い捨ての疑われる企業への取組み強化」(電話相談や集中監督指導)を行っているが、このドラマは、これまであまり日が当たらず地味に苦労してきた現場の労働基準監督官や職員たちも励ましているのではないだろうか。
先日大阪府内の労基署に、過労死の労災申請に赴いたが、心なしか署内の雰囲気も、私たちたちに対する対応も明るく感じた。

 残りの回も、楽しみに観たいと思う。
 それにしても、主人公が理不尽さを感じたときに「ウー」と唸るのはなかなか面白い。僕もやってみようかな。(笑)

         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村


2013年9月30日 (月)

No.137 朝まで生テレビ「激論!雇用と若者」に思う

 月1回の「朝生」で、2013年9月27日(金)25:25~28:25(日付が変わった9月28日の深夜から未明)、「激論!雇用と若者」というテーマで放映された。
 9月27日~28日は、過労死弁護団全国連絡会議の年1回の総会で、しかも今年は大阪で行われたのでリアルタイムで観ることはできなかったが、「ブラック企業」や「企業の社会的責任」が議論されるということで、録画しておいて、土・日の2日に分けて観た。

130928_2


 司会はもちろん田原総一朗氏。
 パネリストは
 ・佐藤ゆかり(経済産業大臣政務官、自民党・参議院議員)
 ・辻元清美(民主党・衆議院議員、党幹事長代理)
 ・荻上チキ(「シノドス」編集長、評論家)
 ・奥谷禮子(ザ・アール社長、経済同友会幹事)
 ・勝間和代(経済評論家)
 ・今野晴貴(NPO法人POSSE代表)
 ・宋文洲(ソフトブレーン創業者)
 ・永沢徹(弁護士)
 ・堀紘一(ドリームインキュベータ会長)
 ・松田元(武蔵野学院大学SMB研究所所長、アズグループホールディングス社長)
の各氏であった。
 台風の目は、何といっても「ブラック企業」について数々の本を出し、この言葉を社会用語にした今野晴貴氏だったと思う。
 田原氏や他のパネリストの皆さんから疑問や批判を浴びせられながらも、よく頑張っておられた。

 全体として、よい番組だったと思うが、率直な感想として、次のような疑問を感じた。

① まずは、パネリストの人選の問題である。
 「若者の雇用」をテーマにしていながら、実際に就職や雇用で苦しんだり、ブラック企業で使い捨てられている若者の声を代弁するパネリストが、今野氏と荻上氏くらいしかいなかった。他のパネリストの方々はそれぞれ一家言お持ちの方であり、私が思っていた以上に、是々非々の柔軟な議論をされていたと思うが、基本的には良心的な企業経営者で、かつ、ご自分は成功された方であり、議論が噛み合いにくいと感じた。

 また、経済産業大臣政務官の佐藤ゆかり氏、民主党の辻元清美氏は、いずれもよい発言をされていたが、お二人とも本来この問題に責任を負っている厚生労働省の関係者ではない。

 それに、ブラック企業は社会全体に損害を与えるものである以上、日本経団連の然るべき部署の人にもパネリストになってほしかったし、労働者全体の権利・利益を守る立場にある連合の方にも登場してほしかった。さらには、使用者側の弁護士だけでなく、ブラック企業対策弁護団や労働者側の弁護士にも登場してほしかった。

 しかし、そう言っていくと、どんどんパネリストが増えてしまうので、難しいとは思うが・・。

② 議論の仕方として、現実に就職やブラック企業で苦しんでいる若者の実情やデータを提示せずに行われていたことである。例えば、異常なまでの長時間労働やパワハラでうつ病になったり自殺したとして労災認定を受けた人の半数は20代、30代の若者なのである。
 アルバイトをして高い学費を払い続けながら、何十社も採用試験を受けて落とされ続け、ようやく「正社員」として採用された企業にひどい働かせ方をさせられても、そう簡単に辞めることなどできない。
 そのような実情を踏まえないで、すぐに「甘えている」「弱い」「なぜ組合を作って戦わないのか」というような発言が多かったのは、残念に思った。

③ この問題は、本来、日本の未来を担うべき若者を守り、育成していくという日本全体の問題であり、国・業界団体・労働組合などが連携し力を合わせて改善していくべき問題であるのに、そのような責任論や改善の筋道論が議論されず、せいぜい「そんな企業は自然淘汰されていくと思う」とか、「今野さんやブラック企業対策弁護団の皆さんには頑張ってほしい」といった程度の議論しかなされなかったのは残念である。
 この点は、私たちが取り組んでいる「過労死防止基本法」制定の目的とも重なる問題であり、個人レベルの問題や個別企業の問題にしてはいけないと思うのである。

 とはいえ、このような番組で、若者の雇用問題やブラック企業問題がテーマに選ばれたことは、画期的なことである。これが話題になり、社会全体で議論が発展していくことを望みたい。

         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

2013年5月27日 (月)

No.120 政府が「ブラック企業」の名前を公表!? 問題解決につながるか──「弁護士ドットコム」掲載(2013.5.27)

 以下の私の文章が、本日、「弁護士ドットコム トピックス」に掲載された。
 同サイトには、これまでも2回ほど掲載していただいたことがあり、依頼していただけるのは光栄なことである。
 もっとも、書く以上は無責任なことを書くわけにいかず、きちんと調査・確認するので、結構大変である。
 せっかくなので、自分のこのブログにも掲載しておくこととする。

 政府が「ブラック企業」の名前を公表!? 問題解決につながるか

過剰なノルマを要求したり、低い賃金で長時間労働させるなどして、従業員を使い捨てにする企業のことを俗に、「ブラック企業」という。もともとは、若者中心に使われはじめたスラングだったが、最近では一般にも浸透する言葉になってきているようだ。

インターネットの掲示板では、このようなブラック企業を批判するスレッドが多数存在しており、なかには、「ブラック企業ランキング」というタイトルがついているものもある。そこには日夜、特定の企業名が挙がり、その従業員や退職者と思われる人から過酷な労働実態についての書き込みが行われている。

もちろん、これらの書き込みすべてが信用できるものではない。だが、ブラック企業の存在が身近なものとなりつつあることは間違いないだろう。このような状況の下、自民党はブラック企業対策として、社名の公表も含めて検討すべきだとする提言をまとめた。今夏の参院選の公約にも反映させる方向という。

はたして、行政がブラック企業の名前を公表することで、問題の解決につながるのだろうか。労働問題に詳しい岩城穣氏に聞いた。

●「ブラック企業の名前を公表することは有意義である」

「悪質な『ブラック企業』の会社名を公表することは、その企業を社会的な批判にさらし、改善を促すことができます。また学生などが就職するに際しての判断材料となり、有意義なことといえるでしょう」

このように公表の意義を語る岩城弁護士によると、「これまでも、違法行為を行ったり、社会問題を引き起こした企業は、行政機関によってしばしばペナルティを科されたり、企業名を公表されている制度がある」という。

「たとえば、建設現場などで重大な労働災害を発生させた企業は公表され、公共工事の指名競争入札に一定期間参加できなくなります。ほかにも、産地偽装を行った食品会社や耐震偽装を行った設計事務所なども公表され、行政処分などの制裁を受けることになります」

●公表にあたっては、「ブラック企業」の具体的な基準が必要となる

では、ブラック企業の公表はどのような形で行われるのがよいだろうか。

「そもそも、『ブラック企業』という言葉そのものは、『悪徳企業』や『ならず者企業』と同じような抽象的なレッテルに過ぎません。

したがって、『ブラック企業の名前を公表する』と言っても、『どのような場合がブラック企業に当たるのか』といった具体的な基準が必要になります。とりわけ政府が発表するとなれば、誰もが納得できる、明確な基準が必要でしょう」

岩城弁護士はこのように指摘する。では、ブラック企業の具体的な基準はどのようなものになるのだろうか。岩城弁護士は、現時点で考えられるものとして4つの例をあげる。

(1)違法な時間外労働や時間外手当の不払いについて、労基署から是正勧告を受けたこと(労基法違反)

(2)労働者の死亡が長時間過重労働やパワハラなどによるものであったとして、労基署から労災と認定されたこと(過労死・過労自殺の労災認定)

(3)上司等が違法なパワハラ・セクハラを行ったことについて、裁判で会社の責任が認められたこと(労働契約上の債務不履行責任、不法行為責任)

(4)従業員に対して暴行、脅迫、傷害、逮捕監禁、強要、違法行為の教唆などを行ったことについて刑事事件として摘発されたこと(犯罪への関与)

「(1)~(4)について、マスコミが自主的に取材して報道する場合は別として、政府や労働基準監督署(労基署)がこれらの事実を公表することはほとんどありません。もっとも、(1)のうち労基法違反が刑事訴追された場合に、労基署は公表することがあるようです。

しかも、(2)については、過労死を出した企業名について市民が労働局に情報開示請求をしたところ、労働局は「開示しない」との決定を行いました。これに対して、その不開示処分の適法性をめぐって現在、行政訴訟が行われています。

大阪地裁判決(2011年11月10日)は原告勝訴(不開示は違法)、大阪高裁判決(2012年11月29日)は原告敗訴(不開示は適法)と、まったく正反対の判決が下され、現在、最高裁の判断待ちとなっています」

このように実際の裁判を引き合いに出した上で、「自民党などが現在検討しているブラック企業名の公表の動きは、最高裁の判断にも大きな影響を与えると考えられます」と岩城弁護士は話している。

言葉が一人歩きしている感もある「ブラック企業」だが、きちんとした社会的批判を行うためにも、みんなで納得のいく基準を作ってみてはどうだろうか。

(弁護士ドットコム トピックス編集部)


         ↓   ↓   ↓  

♪ここまで読んで下さった方は・・・ワンクリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

無料ブログはココログ