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カテゴリー「1-2 法教育・出張授業」の3件の記事

2017年1月11日 (水)

No.307 初めての過労死防止啓発授業で高校に行ってきました

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 1月10日夕方、過労死防止法に基づき、教育活動における啓発として今年度から始まった高校等での啓発授業に、過労死遺族である小池江利さんと2人で行ってきた。

 授業をしたのは、大阪府和泉市にある大阪府立和泉総合高校の定時制課程。昼間働きながら勉強し、この春卒業して本格的に働く予定の3,4年生約40人に、視聴覚教室で授業をした。
 教室に入っていくとき、「こんばんわ!」と声をかけると、「こんばんわ!」と大きな声で返してくれた。
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 最初に、小池さんが約20分間、介護老人福祉施設で事務の仕事をしていた夫が、長時間労働の末に過労死した事例について話した。最初、少しざわついたり私語をしていた生徒たちも、だんだん真剣に聴き入るようになり、特に、父を失った小池さんの3人の子どもたちの手記やブログの一部を読み上げたときは、シーンと静まり返った。
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 続いて、私が約40分間、「仕事に命を奪われないために」と題して、スライド(パワーポイント)を使って講義をした。

 できるだけ具体的な事例を話そうと、小池さんの件を含めて5件の過労死・過労自殺の事例を紹介したうえで、「過労死の悲しみと損失」「過労死はなぜ起こる?」「どんな働き方をしたら過労死する?」「過労死の労災認定と雇用主の責任」「過労死から自分を守るには」といったことについて話した。
 先に小池さんが自らの辛い経験を話した後だったこともあり、生徒たちはとても熱心に聴いてくれた。
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 私が最後に、
「命より大切な仕事はありません。
 生きるための仕事であり、仕事のために生きるのではありません。
 あなたの周りには、あなたが守りたい人がおり、また、あなたを守りたい人がいます。
 現在認められている労働者の権利は最初からあったのではなく、歴史の中で闘いとられてきたものです。
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 過労死・過労自殺は、決して個人の問題ではありません。国、社会全体の問題なのです。
 あなたも社会の一員として、過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会をともに作っていきましょう。」
と述べて話を締めくくると、生徒たちは拍手をしてくれた。
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 限られた時間での駆け足の授業ではあったが、本格的に社会に出て働く予定の若い人たちに、過労死するような働き方をしてはいけないというメッセージを伝えることはできただろうか。
 終了後、今回の啓発授業を準備してくれた清水先生、山野教頭先生、加納准校長先生にご挨拶をして、すっかり暗くなった学校を後にした。
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2012年4月12日 (木)

No.66 生きるための「力」と「武器」を与える憲法・労働法教育

 有名な資格試験予備校「伊藤塾」の塾長をされている伊藤真氏は、護憲派の論客としても有名であり、「国民主権、基本的人権の尊重と平和主義を高らかにうたう日本国憲法の理念・精神を研究し、広く社会にひろげるため」の研究機関「法学館憲法研究所」の所長も務められている。
 その明晰さと誠実さにファンは多く、直接の接点のない不肖私も、同氏のファンの一人である。

 その研究所内にある「中高生のための映像教室 『憲法を観る』」普及事務局から、中学・高校の教員の皆さん向けに、労働基本権・社会権教育への期待についての寄稿を依頼され、以下のような文章を寄稿させていただいた。
 未来ある若者が、その熱心さと真面目さゆえに亡くなるようなことが決してあってはならない。
 そのために、学校の先生方のみならず、心あるあらゆる個人、団体が憲法・労働法教育に取り組む必要があると思う。

                    ◇   ◇   ◇

生きるための「力」と「武器」を与える憲法・労働法教育

1 増え続ける若者の過労死・過労自殺──最近の2つの事例から
 吹上元康さん(死亡時24才)は2007年4月に大学を卒業し、東証一部上場会社である株式会社大庄に就職し、居酒屋チェーン「日本海庄や」の石山駅店で調理業務に従事し始めました。この会社では、初任給として表示されていた196,400円の中に、1か月あたり80時間分の時間外手当に相当する「役割給」を予め組み込み、これに満たない場合は給料が減額されることになっていたのです。吹上さんはそれをクリアしようと毎月100時間を超える時間外労働を続けた結果、4か月後の同年8月11日未明、急性左心機能不全で亡くなりました。

120412  2008年6月、大手居酒屋チェーン「和民」で働いていた森美菜さん(当時26歳)は、入社してわずか2ヵ月でうつ病にかかり自殺しました。最長で連続7日間の深夜勤務を含む長時間労働、連日午前4~6時までの調理業務のほか、休日も午前7時からの早朝研修会やボランティア活動、リポート執筆が課されたりと、森さんの労働は過酷きわまり、5月中旬の時点で1ヵ月の時間外労働が約140時間に上りました。
 「体が痛いです。体が辛いです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」――亡くなる1ヵ月前に森さんが手帳に書いた日記には、すでに心身の限界に達していた森さんの悲痛な声が残されていました。

 吹上さんの死亡は大津労基署が労災と認め、また両親が起こした民事訴訟で大阪地裁も大阪高裁も、会社のみならず社長ら役員にも連帯責任があると断定しました(現在被告らが上告中)。森さんの自殺についても、2012年2月14日、神奈川労働局の審査官は労働災害であると認めました。しかし、2人の若者の命は、もう帰ってきません。

2 日本の学校教育が憲法・労働法教育に消極的であった理由
 これまで日本の学校教育では、一部の例外を除いて、憲法や労働法をしっかり教えてきませんでした。憲法については、「アメリカからの押しつけ憲法」という批判、9条と自衛隊をめぐる問題、教科書問題などがあったことから、政府や文部省(現在の文科省)は、日本史や道徳教育に力を入れ、憲法教育を軽視してきたきらいがあります。
 また、労働法についても、社会で働くうえでの基礎知識として教えてきませんでした。その背景には、終身雇用制や企業内福利制度のもとで、会社のために献身的に働けば、それなりに安定した生活ができるのだから、会社の中で権利ばかり主張すべきでないという風潮がひろくありました。

3 新自由主義のもとでの自己責任論と極限的な過重労働
 ところが、1990年代後半から、いわゆる新自由主義による規制緩和と自己責任論が広がり、労働分野でもこれが推し進められました。その結果、終身雇用は崩壊し、正社員のリストラと非正規雇用の激増が進みました。その中で労働者は事実上無制限・無定量の労働を求められ、これに応えられずに解雇されるとたちまち生活に行き詰まってしまい、それはすべて「自己責任」とみなされます。

 このような状況や風潮は2008年のリーマン・ショック以降、極限まで進んでいます。とりわけ若者は、未曾有の就職難の中で、出口の見えない「就活」に疲れ果て、自己の尊厳を傷つけられ続けています。そして、運良く正社員として就職できたとしても、そこでは荒廃した職場と、無制限・無定量の労働が待っているのです。

4 今や生きるための「力」・「武器」となっている憲法・労働法
 このような状況のなかで、個人の尊厳と平等を確認し、健康で文化的な最低限度の生活をする権利(生存権)を保障する日本国憲法は、自己責任論のもとで打ちひしがれた人々に対して、「あなたも生きていていいんだよ。あるがままのあなたが肯定されるべきなんだよ。」と励まし、生きる「力」を与えるものになっています。
 そして、労働条件の最低限を定めた労働基準法(1日8時間労働や時間外手当、年次有給休暇の保障、解雇の規制など、実際には「最高の労働条件」となっています)や、使用者の横暴に対して労働者が団結して闘う権利を保障する労働組合法などの労働法は、労働者が生き続け、働き続けるための不可欠の「武器」となっているのです。

5 新たな位置づけがなされるべき憲法・労働法教育
 このように、現在の青年たちが自分に誇りを持って生き続け、働き続けるためには、憲法と労働法を学び、自ら権利を自覚的に行使する中で血肉化していくことが必要となってきています。
 ですから、今や中学や高校、大学で憲法、労働法をきちんと教えることは、生きる「力」と「武器」を与えるものとなっているといっても過言ではありません。
 これらの学校で憲法・労働法教育に関わっておられる先生方の役割は、これまでになく重要となっています。また、最近出張授業などを担当させていただくことも多い私たち弁護士・法律家の役割も大変大きくなっていると思います。

6 「過労死防止基本法」の制定を
 ところで、冒頭で述べた「日本海庄や」や「和民」の事例は、決して特殊な出来事ではなく、現在の苛酷な労働実態全体が過労死・過労自殺と隣り合わせになっていることを示しています。そして、元気で体力のある若者たちでさえ過労死・過労自殺してしまう職場で、中高年労働者が健康で働けるはずがありません。
 前述のように、そこで働く労働者たちが、生きる「力」としての憲法、「武器」としての労働法を得ることも重要ですが、一方で、法律によってそのような働かせ方を是正していくことがどうしても必要です。

 そこで、私たちは、①過労死があってはならないことを国が宣言する、②過労死をなくすための、国・自治体・事業主の責務を明確にする、③国は過労死に関する調査・研究を行うとともに、総合的な対策を行うことを内容とする「過労死防止基本法」の制定を求め、「100万人署名運動」をはじめとする取り組みを行っています。皆様のご支援・ご協力をお願いします(詳しくは実行委員会のHPをご覧ください)。

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2011年10月22日 (土)

No.49 高校生たちとの「一期一会」~出張授業に行ってきました~

 10月20日、大阪弁護士会から派遣されて、大阪府立長尾高校の3年生のクラスに「出張授業」に行ってきた。出張授業は、昨年の北千里高校に次いで2年目である。

111021kousya1_3  長尾高校は、枚方市の北東の端のほうで、京都府に近い高台にあり、環境も見晴らしもすばらしい学校である。
 ちょうど2年生が修学旅行中で、校長先生はそれに同行されているとのことで、教頭先生が出迎えて下さった。教頭先生によれば、大阪でも少し田舎の高校になるので、おとなしい素直な生徒が多いとのことだった。ほんの少し話しただけだが、学校への愛着、生徒たちへの深い愛情が伝わってきた。

 授業は、3年生の7クラスを7人の弁護士が担当する。私とO先生を除く5人はみんな若く、弁護士3~5年目くらいだと思う。生徒にとっては、自分の父親と同じくらいかそれ以上の年齢のオッサンよりも、お兄さんのような年代の若い弁護士のほうが刺激的だったに違いない(2組の皆さんゴメンナサイ)。

 授業の内容については、「労働者の権利について話してほしい」というだけで、内容についてはすべて講師の弁護士に任されている。いろいろな切り口があるだろうが、私は過労死問題に関わっていることから、若者の過労死・過労自殺の実例から入っていくことにした。
111021_2  過労死については、1998年に23歳でクモ膜下出血で亡くなった、デザイナーの土川由子さんの事例、過労自殺については、2008年8月に27歳で過労自殺し、この9月に民事訴訟を提訴した、飲料配送会社員のNさんの事例(No.45で紹介)について、お母さんの手記(陳述書)を読みあげてもらうところからスタートした。なくなった人たちと年代が近いからか、みんな真剣に話を聞いてくれた。

 この世の中のすべての商品、サービスは、労働者の労働によって作られている。労働は、生活のための手段であるとともに、自分を実現し、世の中に貢献するすばらしいものである。
 しかし、労働はぐったりと疲れる。それを回復するには、十分な休息、休日と、自分のための時間、家族との団らんが必要である。
 他方で、雇う側は、安い賃金で無限に働いてもらうのが最も効率的。だから、放っておけば、際限のない低賃金と長時間労働になっていくので、労働基準法は1日8時間、週40時間を始めとする労働条件の最低限を定め、また労働組合法が労働者の集団的な行動を保障している。
 しかし、現在の日本では労働基準法が守られていない場合が多く、また労働組合の組織率や活動が低下していることから、労働者は過酷な働き方を余儀なくされている。過労死・過労自殺は、無理をして働かざるを得ない中で生まれている。

 ここ数年のうちに社会に出ていく君たちの労働環境は、過去にない最悪の状況となっている。君たちの先輩、親の世代として責任を感じている。
 労働者にはどんな権利が保障されているのか。いま、ご両親やきょうだいの人たちの働き方は大丈夫か。過労死・過労自殺しないためにはどうしたらいいのか。みんなで一緒に考えていこう。
──うまく話せなかったが、私が言いたかったのはこんなことだった。しかし、あっという間に50分が経ち、チャイムが鳴った。

 高校3年生の多感な、珠玉のような人生の一時期の若者たちに、たった一度だけ会って、弁護士として、人生の先輩としてメッセージを送る。人生の一瞬の交差。「一期一会」というのは、こういうことを言うのだろうと思う。
 生徒たちの心の片隅にでも、今回の話が残ったらいいなあ。そんなことを思いながら、他のクラスを担当した弁護士たちといっしょに帰路に着いた。

(写真上は、長尾高校のホームページから借用しました。
 写真下は、土川由子さんの学生時代の作品です。)

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