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カテゴリー「2-2 国民主権と選挙制度」の5件の記事

2016年8月12日 (金)

No.291 参議院の選挙制度改革に必要な視点

 今日(8月12日)の朝日新聞社説は、「参院選挙改革 国会は「合区」を論じよ」との社説を掲載している。
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 7月10日に投開票が行われた今回の参院選では、鳥取と島根、徳島と高知が「合区」され、それぞれ両県から1人しか議員が選出できなくなった。特に「徳島・高知選挙区」では3人の候補全員が徳島出身であったため、高知では選挙が盛り上がらず史上最低の投票率に終わったとされる。
 選挙後の7月29日、全国知事会は、選挙区の合区の解消を求める決議を採択した。

 他方、このように合区して行われた選挙で、鳥取・島根選挙区での当選者(青木一彦氏)の得票数は387,787票、徳島・高知選挙区での当選者(中西祐介氏)の得票数は305,688票であったのに対し、例えば東京選挙区の田中康夫氏(おおさか維新)は459,314票で落選し、埼玉選挙区の伊藤岳氏(共産)は486,778票で落選しているのである。

 選挙制度は民主主義の要であり、国民がその主権を行使するほぼ唯一の場であることから、圧倒的多数の国民が納得できるものにすべきである。
 私は3年前にこのブログで、「参議院議員の選挙は、様々な属性に着目して別枠で選出できる制度にし、同一の枠内では許容される格差は衆議院と同じく1.5倍未満とすべきである」との一文を書いたことがあるが(No.152 「一票の格差」(投票価値の平等)について──国民主権と選挙制度のあり方(その1))、そこまで一足飛びに改善できないとしても、当面、以下のような視点での改革を急ぐべきだと思う。
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① 最も重視されるべきは、やはり「投票価値の平等」であり、衆議院と同じく「2倍」を超えてはならない。
 最高裁は2014年11月26日の判決で、2013年の参院選での1票の格差「4.77倍」について、「著しい不平等状態」であり「違憲状態」と判断した上で、「都道府県単位の区割り方式を改めるなど、現行の選挙制度自体を見直して不平等状態を解消する必要がある」としている。

 その際、他のいかなる理由をつけても、格差を2倍以上にすることは、「1人2票」を認めるのと同じ結果となり、絶対に正当化されないと考える。
 この点、今回の参院選は上記の「合区」をしても「3.08倍」であり、これは憲法違反だと考える。選挙翌日の7月10日にはさっそく違憲訴訟が提起されており、今後の判決が注目される。

② 特定の県だけを「合区」して議員定数1人を割り当てるのは、合区される県を他の都道府県と合理的理由なく差別するものであり、許されない。
 都道府県が現在の形になったのは様々な歴史的経緯があり、隣県だから仲がよいとか課題が共通しているわけではなく、その逆の場合も多いといわれる。それを無理やり合区させると、選出できなかった方の県は事実上切り捨てられる可能性があり、憲法14条1項が禁止する不合理な差別に該当すると考える。

③ 都道府県別の選挙区が地方代表的性格を持つことは否定できないが、憲法43条1項は、国会議員は「全国民を代表する」としているし、その地方にも様々な意見があるはずであり(東京などの大都市だけに多様な意見があるのではない)、それは1人が代表できるものではない。

 そもそも参院の「1人区」は、衆議院の小選挙区と同じで、その時々の支持率が比較第1党の政党が、得票率をはるかに上回る数の議席を得る、極めて非民主的な制度である。今回の選挙でも、全国32の1人区で自民党は21勝11敗で、約3分の2の議席を獲得している。11の選挙区では野党共闘が実現し、野党候補が競り勝ったためこのような結果になったが、野党共闘がなければ自民党がほぼ全部の議席をとった可能性がある。実際、前回2013年の参院選では自民党は29勝2敗と圧勝したのである。
 このように、そもそも選挙区に「定数1」を割り当てることは、衆議院の小選挙区と同じく、極めて重大な弊害があるのである。
 この点、朝日の社説は、「選挙区の定数を増やして、比例区を減らすといった策が考えられるのではないか」としているが、国民の多様な声が反映しやすい比例区を減らすのは論外である。

④ 国民の声が届きにくいのであれば、むしろ議員数を増やすべきである。
 合区は地方の声を切り捨てるものだというが、その一方で国会議員の数は「多すぎる」という。どこかおかしくないか。どこかに、余っている議員がいるのか。業界代表や労働組合代表であっても、それも「国民の声」である。

 国民の声が十分に国会に届かないとすれば、そもそも国会議員が少ないのである。もともと、議員定数削減を声高に叫んできたのは、国会に多様な国民の声が反映するのを快く思わない、大企業と富裕層(いわゆる「1%」の人たち)であり、議員定数削減によって切られるのは国民の声なのである。

⑤ 国会議員の経費削減を言うのなら、議員歳費を減らすか、むしろ政党交付金をやめるべきである。
 現在、国会議員には、「歳費」(給与)、文書・交通費、秘書(3人分)給与、立法調査費(所属政党へ)など(以下「歳費等」という。)で1人年間約6000万円が支払われているとされる。そして、これに加えて、所属国会議員5人以上の政党に、政党交付金(政党助成金)が合計320億円も、同じく国から支払われている。議員一人あたりにすると4300万円以上になる。

 政党交付金の320億円というのは、上記の国会議員の歳費等(1人6000万円)で割ると、何と530人分の歳費等の額に相当する。国会議員を仮に100人増やしても、それに要する歳費等(60億円)は、毎年の政党交付金の5分の1にしかならないのである。
 政党交付金が始まったのは1995年であるが、その前は政党は自前で活動資金を工面していたのである。この政党交付金こそが、現在の政治を金まみれにし、国民の声を遠ざけている元凶である。

 必要な議員数を増やし、それに要する経費は、政党交付金や議員歳費を減らすことによって捻出すべきである。この点朝日社説は、議員歳費を削ることには言及するが、政党交付金については触れていない。何かタブーでもあるのだろうか。
 いずれにせよ、国民はもうそろそろ、国会議員の定数削減を「身を切る改革」などともてはやし、とにかく「善」だとする誤った呪縛から、自らを解放すべきではないか。

⑥ 私としては、結論として、あるべき参議院の選挙制度は、「地域ブロック別の比例代表制」がベストだと考える。
 これによって、投票価値の平等は限りなく平等にできるし、また、ブロック内の政党はそのブロックの中の過疎の問題などで議論を戦わせ、その地域の住民はそれを評価して投票し、その投票数に応じて選出された議員によって、住民の声が国会に反映されることになる。

 ぜひ、国民の議論を深め、このような方向で制度の改正につなげていってほしいと思う。

 ※画像は、いずれも日本経済新聞のサイトから借用しました。

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2016年3月 8日 (火)

No.276 「政治の春」を呼ぶには──谷口真由美さんをお招きして<「ゆうあい会」結成総会>

◆昨年4月に開設した「いわき総合法律事務所」の1周年を前に、3月5日、大阪天満橋のドーンセンターで「いわき総合法律事務所友の会」(愛称「ゆうあい会」)の結成総会を行った。
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 ゆうあい会は、当事務所に親しみを感じてくださる依頼者や元依頼者、友人、専門家の皆さんによる親睦団体である。日々の暮らしに役立つ講演会や相談会などを行ったり、ハイキングなどの楽しいイベントを行ったりしながら、会員同士や事務所の所員との交流・親睦を図ることを目的としている。昨年8月ころから準備を重ね、この日結成総会を迎えた次第である(なお、「ゆうあい」は、「友愛」と「You & I」と「たか・わき」の頭文字を懸けている(最後は少し苦しいが(笑))。
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 果たしてどれだけの皆さんが参加してくれるか心配であったが、続々と親しい方々、懐かしい方々が集まってくださり、50人を超え会場はほぼ満席になった。

◆中田進先生の開会あいさつの後、メインの記念講演として、大阪国際大学准教授の谷口真由美さんに、「政治の春はいつ来るか?」と題してお話をしていただいた。
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 谷口先生は、人権の国際的保障や女性の権利、ジェンダー法などを専門とされ、大阪大学での「日本国憲法」の講義は名物となっているそうである。また、「全日本おばちゃん党」の代表代行をされ、「日本国憲法 大阪おばちゃん語訳」という本を出版されたことで一躍有名になり、現在はいくつものテレビ・ラジオなどでコメンテーターを務められたり、各地でご講演をされるなど、人気急上昇中である。
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 私は、谷口先生が企画の中心に関わっておられる大阪弁護士会の「市民、弁護士のための国際人権法連続講座」の中の「長時間労働と国際人権法」(2015年5月26日)で講師の一人となり、谷口先生がコーディネーターを務められてお近づきになったことから、今回ご無理をお願いしたところ、超ご多忙であるにもかかわらず快諾してくださった。
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 谷口真由美先生のお話は、とてもわかりやすく、気づかされることがたくさんあった。
・隣の人に、「どう思う?」など、疑問形で語りかけること(問題意識を持っている人は、どうしても自分ばかりがしゃべってしまいがちである)
・マスコミがいい記事を書いたらほめて、応援すること(悪い記事に批判ばかりが集中するが、良い記事をほめることが大切)
・「空気を読まない」人がいることも大事。日本社会に根強い「同調圧力」を上手に乗り越える工夫が必要
・「パーソナル イズ ポリティカル」(日常のすべてが政治につながっている)
・自分が嫌いな政治家にも、言うべきことを言うこと(嫌いな政治家であっても私たちの「代表」である)
・「春」にするには、私たちにも努力がいること
・諦めてはいけない。諦めたら終わり
などなど・・・。
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 講演後の質疑応答にも、臨機応変、縦横無尽に回答してくださった。
 本当はかなり難しい中身を、これだけ平易に、しかも関西弁テイストで話せるのはすごいと思う。これまでの解説者やコメンテーターにはいなかったタイプで、これからもっともっと要請が増えるのではないか。
 先生の著書「日本国憲法 大阪おばちゃん語訳」は、先生がサインをして下さったこともあって20冊全部が完売。一気に「谷口先生ファン」が増えたと思う。
 谷口先生はその後の懇親会、更には有志でのカラオケにまでお付き合いくださった。本当に気さくで、魅力的な方である。
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◆谷口先生に続いて、私から「依頼者に学び、依頼者とともに」と題してお話をさせていただいた。
 まず、私の生まれ育った故郷のこと、両親のこと、小学校時代から大学時代までの、私が弁護士をめざすことに影響を与えた出来事などを話させていただいた。

 続いて、私が弁護士として努めている次の3点について話した。
 ①「なぜ闘うか、どう闘うか」を依頼者と共に考える(単に経済的救済を求めるだけでなく、過去に受けた傷を回復し、未来に向かって歩きだすために闘うこともあるし、「こんなことは許せない」といった義憤・公憤から闘うこともある。そのための手段選択も重要)

 ②「汝は事実を語れ、余は法を語らん(ローマの法格言)」(これは依頼者と弁護士の役割分担でもあるし、二人三脚でもあるし、また、弁護士としての最高水準の活動が求められる)
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 ③支援者がいる場合の「依頼者・弁護士・支援者のトライアングル」(この「3本の矢」が一つになると大きな力を発揮する)
について、実際の事例を挙げながらお話しした。
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◆休憩をはさんで、ゆうあい会の規約と役員の提案をさせていただき、承認された。本当は、今後のゆうあい会の活動のイメージについて意見交換をしたかったが、時間不足でできなかったのが残念である。
 最後に、会長に就任してくださった森岡孝二先生のお礼の言葉と閉会のあいさつで、結成総会はお開きとなった。
 終了後、約50人で撮影した記念写真は壮観だった。
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◆二次会にも、「ドタ参」も含めて約40人の参加があり、谷口先生も参加してくださって、大いに盛り上がった。お互い、それまで知らない者同士だった人たちが親しくなり、話し込んでいるのを見て、私が作りたかったのはこのような会だったと、改めて嬉しく思った。
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◆終了後、まだ物足りない(笑)有志15人くらいでカラオケに繰り出した。なんと谷口先生までお付き合いくださり、振り付け付きで美声を披露してくださった。歌う人も、歌わない人も他の人に「同調圧力」を加えることなく(笑)、皆が楽しめたと思う。

◆このようにして誕生したゆうあい会が、参加者が「楽しかった。勉強になった。参加してよかった」と言ってくれる会になっていくよう、所員一同、世話人の皆さんと力をあわせて頑張っていきたい。

 ※画像は上から、
 ①開会あいさつをする中田進先生
 ②司会をする寺西笑子さんと岩城陽さん
 ③谷口真由美さんの「日本国憲法 おばちゃん語訳」の本の表紙
 ④会場の様子
 ⑤講演する谷口真由美さん
 ⑥谷口真由美さんに花束贈呈
 ⑦講演する岩城弁護士
 ⑧「3本の矢」のイラスト
 ⑨閉会あいさつをする森岡孝二先生
 ⑩二次会の乾杯
 ⑪翌日誕生を迎える谷口真由美さんにサプライズでお贈りしたバースデーケーキ(とっても喜んでくださいました)

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2016年2月23日 (火)

No.273 日本国憲法の平和主義・立憲主義・民主主義の回復への巨大な一歩に──2・19「5野党合意」に期待する

 これは、まさに歴史的な出来事だ。
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 安保法制が強行可決された9月19日からちょうど5か月目にあたる2月19日、民主党、共産党、維新の党、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの5野党が共同で安保法廃止法案を提出するとともに、党首会談を行い、次の4点を確認した。

1.安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする。
2.安倍内閣の打倒を目指す。
3.国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む。
4.国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う。

 これで、当面のいくつかの補選や7月の参議院選挙はもちろん、仮に衆参ダブル選挙が行われても、野党が結束して闘うことができる。
 文字どおり、日本の未来を切り開く歴史的な5党合意だと思う。

 私は、2014年12月14日の前回衆院選の告示前、「小選挙区制のもとで野党は「連携」模索を」と訴えた(「No.220 「いきなり解散」で総選挙へ──小選挙区制のもとで野党は「連携」模索を」)。

 「少なくとも現時点においては、現在の小選挙区制で選挙が行われる以上、その弊害を少しでも減らし、民意に近い国会構成にすべきである。そのためには、何が必要だろうか。

 私は、それは「野党共闘」又は少なくとも「野党連携」ではないかと思う。」

 「もちろん、本来は政策協定までも締結することが望ましいが、そんなことを言っていてはいつまでも「泡沫候補同士の足の引っ張りあい」にならざるを得ない。選挙は当選しなければ意味がなく、「独自の闘い」や「善戦」では、ダメなのである。

 もちろん、比例代表での議席を狙うことは大切だが、比例区の定数はどんどん減らされつつあり、最終的にはゼロにされてしまう可能性もある(そのようなことを許してはならないが)。国会で多数を獲得して政権を取ろうとする以上、小選挙区制でどう多数をとるかを本気で考えないと、政権をとるなど夢のまた夢である。

 今回もまたこれまでのように、野党が一強多弱で選挙に臨むならば、実質的に選択肢のない有権者は白け、投票率は上がらず、その結果、「自民・民主」の二大政党制ならぬ「自民と無関心」の二大政党制になり、日本は破滅に向かうことは確実である。

 この問題は、単にどの政党に有利だとか不利だとかという問題ではなく、日本の民主主義の根幹に関わる問題なのである。

 難しいとは思いつつ、大なり小なり政策を共通にする野党同士で、離合集散ではない、地に足のついた連携が模索されることを、切に願うものである。」

 しかし、このときの総選挙は野党乱立で行われ、自民党が「漁夫の利」を得て圧勝した。そして、悪夢のような憲法違反の「安保法制」の成立が強行されていったことは周知のとおりである。

 その後の国民的な運動の盛り上がりを経て、今般、冒頭に述べたような「5野党合意」が実現したことは、本当にすばらしいことである。

 折しも、翌2月20日に開かれた社民党の大会に4党の代表が招かれ、それぞれからあいさつと合意事項を実行する決意表明がなされた。

 以下のユーチューブで、4党の代表のあいさつを視聴することができる。
 私は、全部聴き、胸が熱くなった。

 民主党 枝野幸男 幹事長
  https://www.youtube.com/watch?v=GHShycmhGKk
 日本共産党 志位和夫 委員長
  https://www.youtube.com/watch?v=NojPZKQtZqE
 維新の党 今井雅人 幹事長
  https://www.youtube.com/watch?v=PAPd9-we5mU 
 小沢一郎 生活の党と山本太郎となかまたち代表
  https://www.youtube.com/watch?v=aa4NBhoPs8g

 ※画像は、2月20日の社民党大会に勢ぞろいした、民主・枝野幹事長、維新・今井幹事長、共産・志位委員長、生活・小沢代表、社民・吉田ただとも党首。


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2014年11月19日 (水)

No.220 「いきなり解散」で総選挙へ──小選挙区制のもとで野党は「連携」模索を

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◆山積する争点──国民は審判を下したいのに、この無力感
 どうやら、安倍首相は衆議院を解散し、12月2日公示、12月14日投票の日程で衆議院選挙が行われることがほぼ確実になったようである。

 本来、衆議院解散・総選挙というのは、「国民の信を問う」、すなわち、それまでの政権の政策の当否・今後の重要な政策・争点について国民の評価を仰ぎ、批判が強ければ軌道修正し、時には政権そのものが交代するというのが、議院内閣制の建前である。

 今回でいえば、①消費税10%の延期と1年半後の絶対増税の当否、②特定秘密保護法の強引な制定と今月10日の施行、③これまでの原発稼働ゼロから再稼働の開始、④憲法9条の解釈変更により集団的自衛権を認めた閣議決定とそれを前提とした今後の法整備、⑤アベノミクスの評価と格差拡大、⑥TPPへの参加の当否と範囲、⑦新しい労働時間制度(ホワイトカラーエグゼンプション)など、どれをとっても日本の現在と将来にとって決定的に重要で「国民に信を問うべき」問題が山積している。

 しかし、この閉塞感、諦め感はどうしたことだろう。それは、小選挙区制のもとで、「一強多弱(他弱?)」の政党状況である以上、結局自民・公明の圧倒的多数は変わらず、これまでの政策が追認され、政権を長らえるためのものではないか、という思いが拭えないからだと思う。

 これでは、国民には事実上、安倍自民党政権の政策を積極的に追認・承認するか、投票しないで消極的に追認・承認するかの選択肢しかなく、政権はいっそう傲慢・強権となり、日本の議会政治はいっそう危機に陥っていくことになる。

◆憲法が予定している選挙制度とは
 日本国憲法43条は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」とし、前文は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」するとしているが、「全国民を代表」するべく「正当に選挙」する選挙制度とは、どのようなものを想定しているのであろうか。

 憲法は、条文には出てこないが、政党政治を前提にしていると解釈されている。そうだとすると、国会議員を選ぶ選挙においては、主権者である国民は、自分の投票が完全な「死票」になるのではなく、可能な限り国会の構成に反映してもらう権利があるというべきであり、そのためには、投票した政党が、その獲得した得票率にできるだけ近い議席数を得るような選挙制度が憲法上要請されているというべきである。そのような制度としては、いわゆる比例代表制(これには全国単一と、ブロック別がある)がベストであるが、かつてのような中選挙区制もこれに近い結果となる。

◆小選挙区制は憲法違反の選挙制度
 これに対して、現在のような小選挙区制は、死票の率が極めて多く(例えばある小選挙区に4人が立候補し、4:3:2:1の得票割合だったとすると、1位の人以外に投票した6割の票が完全に死票になる。そして、これを全国で見ると、わずか3割台の得票率の政党が、議席の8割を占めるという結果もあり得ることになるのである。これでは、憲法の予定している正当な選挙方法とはいえない。

 実際、前回2012年12月の総選挙では、自民党は、比例区では得票数が前回よりも219万票減らして1662万票(得票率27.6%)にとどまった。この27.6%というのが、国民の自民党に対する支持率であるといえる。

 にもかかわらず、小選挙区では得票率43.0%で(これは、小選挙区では自民党とせいぜい民主党くらいしか当選の可能性が少ないため、立候補者が減るからである)、全300小選挙区議席に占める割合(議席占有率)は79%に達した。わずか2割台の支持率の自民党が、小選挙区では8割もの議席を得たのである。

 そして、小選挙区と比例区を合わせた議席数は294議席となり(前回の09年総選挙よりプラス175)、公明党の31議席(プラス10)と合わせて3分の2を超える320議席を獲得したのである。

 実質的には2割台の支持しか受けていない政党が、国会で圧倒的多数の議席を得る──このように民意を極端にゆがめる制度は、憲法の予定する「正当な選挙」とはいえず、憲法違反の選挙制度ではないだろうか。
 この点、導入当初の考え方は、「世論の反映」を比例区で、「世論の集約」を小選挙区で行い、両者の定数を半々とするというところからスタートしたのに、その後、比例区の定数だけが減らされ続けて現在に至っているのである。 

 しかも、選挙の時に吹いている「風」によって議席数は劇的に変わり、「風」にあおられたベテラン議員は大量に落選し、「一年生議員」ばかりが増えることになり、議員の資質や国会審議も大きく劣化していることは、当時小選挙区制を導入した人たちも含め、ベテランの国会議員や専門家がつとに指摘しているところである。

 私は、このような現状を憂える心ある国民や政治家は、今こそ、小選挙区制の廃止(中選挙区制の復活又は全国ないしブロック別の比例代表制)に向けた国民運動を、憲法訴訟も含めて展開すべきだと思う。

 投票価値の平等(一票の重みの格差)についてはこれまで裁判が粘り強く行われてきているが、この小選挙区制による民意の歪曲や膨大な完全死票の問題も、一票の格差以上に重要な問題ではないだろうか。

 それに、一票の格差の問題自体、無理な小選挙区の区割りによって生じているものであり、比例代表制にすれば一票の格差は限りなくゼロに近づき、中選挙区制の場合も、相当程度格差を小さくすることが可能になるのである。

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◆小選挙区制のもとでの野党連携の必要性
 しかし、少なくとも現時点においては、現在の小選挙区制で選挙が行われる以上、その弊害を少しでも減らし、民意に近い国会構成にすべきである。そのためには、何が必要だろうか。

 私は、それは「野党共闘」又は少なくとも「野党連携」ではないかと思う。
 例えば、政策的に自民党と対局にある日本共産党と社民党は、現在では主要な政策はほとんど共通しており、沖縄や労働者派遣法、新しい労働時間制度などの悪法反対の闘争では共闘が行われている。そうであれば、これら両党の間で一定のルールを決めて(例えば、直近の世論調査での政党支持率など)、選挙区を超えた調整・連携がなされるべきである。「連携」のレベルには、「政策協定」まで締結できるレベル(Aランク)から、「支持」や「推薦」レベル(Bランク)、さらには自党からの立候補見送りによる間接的協力(Cランク)など、さまざまなレベルがあってよいと思う。例えば、甲党(支持率4%)と乙党(2%)が連携する場合、Bランクの連携として、乙党は甲党を2選挙区で推薦し、甲党は乙党を1選挙区で推薦する、といった具合である。

 もちろん、本来は政策協定までも締結することが望ましいが、そんなことを言っていてはいつまでも「泡沫候補同士の足の引っ張りあい」にならざるを得ない。選挙は当選しなければ意味がなく、「独自の闘い」や「善戦」では、ダメなのである。

 もちろん、比例代表での議席を狙うことは大切だが、比例区の定数はどんどん減らされつつあり、最終的にはゼロにされてしまう可能性もある(そのようなことを許してはならないが)。国会で多数を獲得して政権を取ろうとする以上、小選挙区制でどう多数をとるかを本気で考えないと、政権をとるなど夢のまた夢である。

 今回もまたこれまでのように、野党が一強多弱で選挙に臨むならば、実質的に選択肢のない有権者は白け、投票率は上がらず、その結果、「自民・民主」の二大政党制ならぬ「自民と無関心」の二大政党制になり、日本は破滅に向かうことは確実である。

 この問題は、単にどの政党に有利だとか不利だとかという問題ではなく、日本の民主主義の根幹に関わる問題なのである。

 難しいとは思いつつ、大なり小なり政策を共通にする野党同士で、離合集散ではない、地に足のついた連携が模索されることを、切に願うものである。

 ※下の写真は、大阪・天満橋から西方向を撮影。


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2013年12月 2日 (月)

No.152 「一票の格差」(投票価値の平等)について──国民主権と選挙制度のあり方(その1)

◆現在の選挙制度の深刻な問題点
 日本国憲法では主権は国民にあるとしているが(憲法第1条)、日本国憲法前文は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」するとしており、国民は、具体的には国会議員を選挙で選ぶことによって、その主権を行使することになる。
 したがって、国民主権を実質化するためには、選挙制度のあり方は極めて重要である。

 しかし、私は、現在の選挙制度は、いくつもの深刻な問題点を抱えており、憲法の理想から著しくかけ離れた状況になっていると思う。
 具体的には、
① 投票価値の不平等(一票の格差)
② 小選挙区制と定数削減論
③ 二院制のあり方
④ 企業・団体献金と政党交付金
⑤ 不自由だらけの選挙活動
といった点である。
 今後、これらについて、私なりの意見を書いていきたいと思っている。

◆一票の格差(投票価値の平等)の問題について
 まず手始めに、①の投票価値の不平等(一票の格差)の問題を取り上げたい。

 選挙区によって(特に過疎地域の選挙区と都市部の選挙区の間で)、議員一人あたりの有権者数(逆に言えば、有権者一人ひとりが持っている投票権の価値)が大きく異なるのは、法の下の平等(憲法14条)に違反するのではないか、という問題は、昭和40年代から論じられるようになり、昭和51年4月14日の最高裁大法廷判決が、昭和47年12月の衆議院議員選挙における投票価値が最大約5対1になっていたのは憲法の選挙権平等の要求に反する程度になっていたが、合理的期間内によける是正がなされなかった場合に初めて違憲とされるべきであると判断して以降、常に国会と司法の間で判断と是正の応酬がなされてきた。

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 そして、最高裁は長年、一票の格差が衆院選ではおおむね3倍未満、参院選では6倍未満であれば合憲としてきたが、最近はやや厳格になり、衆議院では2.30倍(2009年8月衆院選についての最高裁H23・3・23判決)や2.43倍(2012年12月衆院選についての最高裁H25・11・20判決)、参議院では5.00倍(2010年4月参院選についての最高裁H24・10・17判決)は「違憲状態」とした。もっとも、いずれも「違憲状態」ではあるがただちに「無効」とまではしないとしている(事情判決の法理といわれる。)。

 日本の司法(裁判所)は、「立法府・行政府という政策決定者の決断は最大限度の『謙譲と敬意』をもって扱うべきだとする立場」(司法消極主義)を採っているが、いわゆる「民主政の過程」に関わる問題については、積極的に憲法判断をしていくべきである(すなわち、いったん不平等な制度ができてしまうと、その制度のもとで選出された議員にその是正を求めるのは困難だから、その前に裁判所が積極的に是正すべきである)というのが、憲法学界の通説である。

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 そのような考えからすれば、この一票の格差(投票価値の平等)の問題について、司法はより厳しい対応をすべきであり、「違憲無効」というショック療法も必要な段階になっていると思う(「無効」といっても、将来に向かって無効を宣言すれば、既に成立した法律に影響はないし、その後の立法についても、他の改選時期の議員と比例選出議員によって活動は可能である。)。
 この点、この11月28日に広島高裁岡山支部が、今年7月の参院選で岡山選挙区の選挙を違憲・即時無効との判決を出したことは、高く評価されるべきである。

◆衆議院議員選挙‥‥完全平等が原則であり、格差は最大1.5倍未満とすべきである
 私は、まず衆議院議員選挙については、一票の価値は限りなく完全平等に近づけるべきであり、日本人の「四捨五入」的感覚からいえば、1.5倍以上になることは許されないと考える。例えば、1対1.3であれば何とか納得できるが、1対1.8では2倍に近いので納得できない、という人が多いのではないだろうか。
 ちなみに、アメリカの下院は州ごとに人口比例で議席数が割り振られ、州内では行政区画と別に選挙区が設定され、完全平等が要求される。フランスは原則1.50倍以内、イタリアは1.22倍以内とのことである。3倍や6倍になるまで認めてきた日本は、あまりに投票権の平等に無頓着すぎたと思う。

 もっとも、そもそも私は、1選挙区から1人しか選出しないという小選挙区制は、憲法上重大な問題があり、かつてのような中選挙区制(議員数3~5名程度)、または比例代表制にすべきだと考えている(比例代表の場合、全国一区、ブロック別、都道府県別の3つが考えられるが、この中ではどれでもよいと思う。)。
 現在の比例代表選挙(ブロック別)を見ればわかるように、比例代表制をとると、投票価値は限りなく完全平等に近づくことになり、この点でも望ましいものである。中選挙区制は、比例代表制に比べるとやや格差が生じるが、人口の変動に伴う調整は、小選挙区制よりもはるかにやりやすい。

◆参議院議員選挙‥‥様々な属性に着目して別枠で選出できる制度にし、同一の枠内では許容される格差は衆議院と同じく1.5倍未満とすべきである
 なぜ日本で衆議院・参議院という二院制(両院制)をとる必要があるのかについても、別に書きたいと思っているが、結論だけを言えば、様々な属性を踏まえて選挙ができる制度設計を行うべきだと考える。

 現在、制度的に属性として考慮されているのは、地域代表(選挙区=都道府県の代表)ということのみである。確かに、参院の選挙区が過疎の県の声を反映させるという役割を果たしていることは事実である。
 しかし、属性というのは地域(都道府県)だけではない。男女、年代(例えば20~30代、40~50代、60代以上といった区分)、少数民族(アイヌなど)や障がい者、性的少数者などの社会的少数者、所属階層(例えば労働者、中小企業経営者、農林漁業者、医師・税理士といった専門職など)といった属性も、それぞれ大変重要である。

 これらのうち一定の属性については、事実上、比例代表選挙で打ち出されている(例えば経団連、労働組合、農協、医師会などが推薦したり、組織内候補を出して支援したりしている)。
 しかし、例えば女性や若者といった属性では選出しにくいし(「〇〇女性党」のような政党はあるにはあるが)、社会的少数者については、まさに社会的少数者であるが故に、別枠の取扱いも考慮されてしかるべきはないかと思う。

 少なくとも、現在の選挙区(都道府県単位)と比例区の2本立てが絶対のものとは思えない。現在、それぞれについて1人が2票を持つことを認めているが、そうであれば、もっと分野別に分けて、1人が何票も持ってもよいはずである。
 また、例えば、政策的に女性議員を増やすために、総定数の2割を別枠にして女性だけが立候補できるようにするとか、障がい者の枠に5議席を与えるなど、女性や若者、社会的少数者に別枠で一定の議員数を割り当ててもよいのではないだろうか(高校野球の「21世紀枠」のように)。

 本当に少子高齢化のもとでの世代間の負担や女性の社会参加を考えるのであれば、それについての国民の様々な意見を反映できる選挙制度を、特に参議院について作るべきだと思う。
 大変難しい作業であるが、国民みんなで議論して決めていくことは、ある意味で夢のある作業ではないだろうか。
 こんな議論が、もっとあちこちで起こればいいなあと思う(もしかしたら起こっているのに、私が知らないだけかもしれないが)。

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