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カテゴリー「2-1 日本国憲法」の16件の記事

2016年7月19日 (火)

No.289 無差別テロの恐怖と、日本の果たすべき役割

◆頻発する無差別テロ

 世界各地で一般市民を巻き込んだ無差別テロが頻発している。この半年あまりだけをとってみても、次のようなものがある。
 ①2015年11月15日 フランス・パリで同時多発テロ(銃撃と爆発)、130人が死亡
 ②2016年3月22日 ベルギー・ブリュッセル国際空港と地下鉄で自爆テロ、36人が死亡
 ③6月28日 トルコ・イスタンブールのアタチュルク空港で自爆テロ、48人死亡(犯人を含む)
 ④7月1日 バングラデシュ・ダッカのレストランの襲撃と爆発で、日本人7人を含む28人が死亡
 ⑤7月14日 フランス・ニースでトラックが一般市民を襲撃、84人が死亡

 これ以外に、もちろんイラクやアフガニスタン、トルコなどでは毎日のように自爆テロが起こっているが、上記の無差別テロは、私たち日本人も海外旅行で訪れる観光地や国際空港で行われ、私たち日本人もいつ巻き込まれてもおかしくない事件である。

 特にバングラデシュの事件では、現地で様々な支援活動をしている日本人が狙われたと見られている。恐らくこんなことは初めてではないだろうか。
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 私自身、2013年4月末に、ジュネーブで行われた国連社会権規約委員会の日本審査会議の傍聴(「No.118 国連社会権規約委員会が、過労死・過労自殺の防止を日本政府に勧告!」参照)に先立ってパリ市内を観光し、また、傍聴ツアー解散後のプライベートツアーで5月初め、ニースなど南フランスを観光し、最後に再びパリに戻って日本に帰国した。

 また、2014年4月中旬、ベルギーのブリュッセルで開かれた国際法律家協会(IADL)大会参加をメインとするツアーに参加した(「No.176 世界各地の人権闘争を交流し合う意義───IADLブリュッセル大会とポーランドの旅(その1)」参照)。

 さらに、バングラデシュではないが、その北西にあるネパールのカトマンズで開かれた第6回アジア太平洋法律家会議(COLAP6)に参加するために、6月17日から23日までネパールを訪問してきた(「No.287 アジア・太平洋の22か国の法律家がネパールに集う」参照)。

 そのような、自分が行ってきた都市や空港での無差別テロのニュースや映像を見ると、自分が巻き込まれたらどうだろうかと震え上がる。これからは外国に行くこと自体、そのつど躊躇することになるだろう。
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 特に、南フランスのニースの無差別殺人が行われた美しい海岸は、私と妻が一泊して歩いたところであり、あんな穏やかな観光地で事件が起こったことが、いまだに信じられない。

◆無差別テロが起こる背景・原因

 安倍首相をはじめ、各国のトップの人たちは安易に「テロに屈しない」などと威勢のいいことを言うが、自分はSPに四六時中警護されているのであり、被害に遭うのは何の罪もない一般市民である。また、このようなテロを完全に防止することは至難の技である。

 もちろんテロは断じて許されないものであり、糾弾することは当然であるが、このようなテロが行われる背景には、宗教対立に加えて、発展途上国における先進国同士の権益争い、先進国の収奪も一因となった貧困や失業、政治的不安定と大国の介入、武器の販売などがある。

 特に最近の無差別テロはイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)が関与しているものが多いが、そのような過激派組織が生まれたのは、アメリカが開始したイラク戦争が原因だと言われている。そのイラク戦争には多数の国が多国籍軍として参加し、日本もこれを支持したが、その口実とされた大量破壊兵器は見つからなかった。

 イギリスではつい最近の7月6日、英ブレア政権が2003年にイラク戦争に参戦した経緯や侵攻後の占領政策を検証した独立調査委員会(チルコット委員会)が報告書を公表した。参戦の決断を「(フセイン政権の)武装解除の平和的な方策を尽くす前に侵攻に参加した。軍事行動は当時、最後の手段ではなかった」と断じ、開戦から13年を経て、自国政府の判断や評価の過ちを厳しく指摘している。

 このように、米英主導で開始した「誤った戦争」が、今日の中東での内戦や世界各地での無差別テロにつながっているのである(ところで、小泉元首相は首相を降りてから、首相時代の原発推進政策を反省し、反原発を訴えているが、安易にアメリカに追随してイラク参戦を支持したことについては、反省しないのであろうか。自らが検証委員会を作り委員長になって調査してもよいのではないだろうか)。

◆日本の進むべき道

 現在の安倍政権は集団的自衛権や安保法制など、憲法の枠を超えてまで軍事力の拡大に前のめりであるが、現代の戦争は、単に軍艦や戦闘機や戦車を送り込むということだけでなく、このような自爆テロや無差別テロによって敵国に打撃を与えることも含まれるのである。

 ISに敵国と見なされ(バングラデシュ事件からわかるように、日本は既に敵と見なされている。)、パリやニースのようなことが、日本の銀座や湘南海岸で起こらないといえるのか。また、2020年の東京オリンピックの会場や各地の観光地で自爆テロが起こらないといえるのか。

 私は、今やすっかり傷ついてしまったが、日本が憲法9条のもとで長年にわたって築いてきた「平和ブランド」を復活させ、また日本の豊かな経済力を使って、平和主義国家日本にふさわしい平和外交や経済支援を行っていくべきではないかと思う。

◆憲法改正で導入しようとしている「緊急事態宣言」の恐ろしさ

 ところで、安倍政権は憲法改正を目論んでおり、自民党の改正案には「緊急事態条項」が盛り込まれ、「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるとき」は緊急事態宣言を発することができ(草案98条1項)、その場合、「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができ」(同99条1項)、「内閣総理大臣は‥‥地方自治体の長に対して必要な指示をすることができ(同)、「何人も‥‥国その他公の機関の指示に従わなければならない」(同99条3項)とされている。

 もしこのような憲法改正がなされれば、日本国内で無差別テロが起こったような場合には「緊急事態宣言」が出されることになるだろう(実際、フランスでは前述のパリ同時多発テロ後に緊急事態宣言が出され、今般のニース事件で延長されている)。

 そのときには政令によって表現や集会の自由が制限されたり、新聞やテレビの報道が統制されることになるだろう。まるで近未来のSF小説のようなことが、現実のものになるかもしれない。

 日本国内での無差別テロももちろん怖いが、憲法が改正されて、それに対する報復戦争(アメリカのブッシュ大統領は9・11米同時多発テロに対して「これは戦争だ!」と叫び、その報復としてアフガニスタンへの空爆を開始した。)に走ったり、緊急事態宣言により戦時国家体制が作られることは、それ以上に恐ろしいと思うのである。

 ※写真は、2013年5月初めに訪れたニースの美しい海岸線(上)と、海岸脇の道路(下)

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2016年6月27日 (月)

No.286 新しい「連帯」への希望

 このたび、弁護士で資格試験予備校「伊藤塾」の塾長でもある伊藤真先生が所長を務められている「法学館憲法研究所」から、同研究所のホームページの「今週の一言」欄に、今年3月19日に開いたシンポジウム(「No.278 分野・世代を超えた連帯はできる、社会は変えられる──働き方ASU-NET第24回つどい」)を題材にした「若者の連帯」についての寄稿を依頼された。

 伊藤真先生は、伊藤塾の経営や弁護士業務を行うかたわら、護憲の立場から議員定数不均衡問題や安保法制問題などで精力的に取り組んでおられ、私は大変尊敬しているので、今回の依頼は大変光栄なことである。
 以下、本日掲載された拙稿を、この私のブログでも紹介しておきたい(ただし、一部文言を追加・変更した箇所がある)。

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   新しい「連帯」への希望

第1 2つの「連帯」についての考察
1 「連帯」とは何だろうか。一般には、一定のグループや集団が共同の目的のために、気分を共有することだとされる。クラブやチーム、サークルなどの小さなグループでは、この意味の連帯はしばしば実感されるが、グループが大きくなり、更には階層や属性といったものにまで広がっていけばいくほど、連帯は難しく、希薄になっていく。
 しかし、人間が社会的動物であり、様々な集団、最終的には社会や国家の中でしか生きていけない以上、自ら快適に生きられるように社会を改善していくために、自主的に団体を作って連帯していくことは大変重要である(ここでは、これを「自主的連帯」ないし「下からの連帯」と呼びたい)。
 他方、国家や企業など有形無形の権力や権威を持った団体や集団は、その目的のために構成員を都合よく統制しようとし、そのために「上からの連帯」を組織・醸成しようとする。
 この「上からの連帯」は、外観的には下からの連帯と類似し、局部的には混合することもあるが、従わない場合に強制や処罰、排除といった不利益が付属している点で本質的な違いがあり、時には下からの連帯を抑圧・破壊する役割を果たす。

2 この2つの意味の連帯について、戦前がどうだったのかについても興味があるが(例えば下からの連帯としての自由民権運動や労働・小作争議、上からの連帯の完成形としての大日本翼賛会など)、ここでは戦後について考えてみたい。
 戦後民主主義の普及や労働運動・市民運動の高揚の中で、1960年代から70年代にかけて、下からの連帯は大きく広がった。「国民春闘」やストライキ、安保闘争、学生運動やベトナム反戦運動など、枚挙にいとまがない。
 ところが、1973年のオイル・ショック以降、特に1980年代から本格化した新自由主義のイデオロギーと長期不況の中で、「自己責任論」や「同調圧力」が強まり、「下からの連帯」は困難になっていく。若者と中高年、労働者と自営業者、民間労働者と公務員、正規と非正規、男性と女性、既婚と未婚、障害者と健常者など、様々な属性を持つ者同士が対立させられ、自分の地位の向上や権利行使をするのでなく他の属性を持つ人々やグループを叩いて溜飲を下げる風潮が広がってきた。その結果、社会はどんどん細分化され、人々はバラバラになり、最後は「万人の万人に対する闘争」(隣の人間も敵)の心理になっていく。
 そして、そのようなプロセスにおいて、精神的な拠り所を与える「上からの連帯」を(時には不利益や同調圧力を伴って)提示されると、人々は容易にそこに組織されてしまう。
 近年のパワハラの蔓延、生活保護受給者や転落した有名人の袋叩き、ネットでの激しい攻撃や炎上、排外主義やヘイトスピーチ、少数者や障害者の排除、更には突然の無差別殺人などを見ていると、下からの連帯の衰退と関連していると感じるのは私だけではないと思う。

3 このような考察は、恐らく本来は社会学の課題であり、私はその専門ではないが、「下からの連帯」の高揚期の後半(1970年代前半)に思春期を迎え、その後約40年間にわたってその衰退と社会分裂、「上からの連帯」の強化を見てきた世代としての、体験に基づく実感である。

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第2 新しい若者たちの「連帯」を探る企画
1 これに対し、特に憲法9条を中心とする日本国憲法の改正圧力の強化(これ自体が草の根的に組織されている)に抗して2004年に「九条の会」が結成され、また2011年の東日本大震災と福島原発事故を契機とした反原発運動など、草の根の市民運動の広がりがあったが、とりわけこの1年余りの間に、最初は若者の分野で、続いてこれに触発される形で他の世代や階層、様々な分野で、新しい自主的連帯の動きが生まれてきた。集団的自衛権を認める閣議決定や安保法制の強引な国会可決に反対する運動団体として作られた「SEALDs(シールズ)」や「ママの会」や「大学人の会」などがその典型であるが、とりわけ若者の中での運動はSEALDsにとどまるものではなく、劣悪化の進む若者の労働の分野でも、いくつもの団体や運動が生まれている。

2 そこで、私が共同代表の一人を務める「NPO法人働き方ASU-NET」(「働き方」をキーワードに若者と中高年が手をつなぐ労働者・市民のネットワーク)は2016年3月16日、「未来を切り開く連帯~若者たちの運動から学び会う」と題するシンポジウムを大阪市内で行った。関心の高さを反映してか、会場は145人の参加者で埋まった。
 特段基調講演といったものはなく、第1部で7つの団体から7人のパネラーを出してもらい、各団体の紹介と主な活動、訴えたいことなどを報告していただいたうえで、第2部のパネルディスカッションで質疑・交流を行う、というものであった。

3 第1部の7つの団体のパネラーからの報告の要旨は、以下のとおりである(なお、要旨は私がまとめたものであり、文責は私にある。)。

①労働相談に取り組みブラック企業を社会問題化した「NPO法人POSSE」の坂倉昇平さん
 年間1500件の労働相談に取り組み、起こっていることを社会的に発信して、社会問題化し政策課題としていくことを重視している。最近では美容・塾など大手企業において、業界全体に影響を与える取り組みを強めている。

②アルバイト学生を組織し団体交渉も行っている「関西学生アルバイトユニオン」の北村諒さん
 今の学生には奨学金が重くのしかかっている。ブラックバイトで泣き寝入りする状況を変えていきたい。学生が相談しやすいのは学生であり、"耐える力を変える力に"をモットーにして、働くこと・学ぶことを問い直している。

③労働相談と団体交渉で成果を上げる個人加盟労組「地域労組おおさか青年部」の北出茂さん
 一人でも入れる地域ユニオンとして、20代~30代を中心に労働相談から企業との交渉も行い、解決まで取り組んでいる。パワハラや職場の労働条件の劣化と闘う若者に"正しくキレよう"を合い言葉に学習・交流に取り組んでいる。

④民主主義を原点に戦争法の廃止を訴える「SEALDs KANSAI(シールズ関西)」の寺田ともかさん
 与党は国会で何でもやれてしまう3分の2の議席を占め、憲法を改正しようと目論んでいる。今止めなければという思いで野党間の結集を求め、「統一候補を立ててください」と地方でもテーブルを設けてきた。また、大学に投票場を設ける運動もしてきた。3・11の原発事故やイラク戦争などを通じて政府や報道に疑問を持ったことが声をあげる活動に参加するきっかけとなった。

⑤戦争法に反対し街頭での対話活動に取り組む「SADL(サドル)」の中村研さん
 サドルは大阪都構想の取り組みから生まれた。単に賛成か反対かではなく不安に思っている人との対話を大事にしてきた。サドルの特色はそれぞれのライフワークでつながり、一人ひとりの背景を活用し、何ができるかを持ち寄って街の雰囲気を変え、国会の内と外をつなげようとしている。「チャット」をするように該当で対話するのはその手段であり、イメージは井戸端会議。政治のハードルを下げていきたい。

⑥堺市で戦争法廃止の署名活動をする「ANTS(アンツ)」の磯田圭介さん
 堺市で戦争法を廃止させることを目標に地域に根差して結成した。気軽に集まり戦争法反対の声を上げるゆるい組織。昨年6月から毎月1回のデモや駅前でのスタンディングに取り組んできた。SNSで呼びかけるので常に新しい人が参加し、中学生たちも「カッコいい!」と署名を集めてくれ、お母ちゃんたちから差入れもある。署名活動は心意気。

⑦最低賃金1500円への引き上げを求める「AEQUITAS(エキタス)京都」の橋口昌治さん

 「最賃1500円」「中小企業に金をまわせ」「経済にデモクラシーを!」がスローガン。運動で引き上げさせていくことに意義がある。街頭・路上での活動が中心になっている。しかし、最賃は本来労働組合の重要な課題でもあるはずである。

4 第2部のパネルディスカッションでは、私がコーディネーターとなって「各組織のコミュニケーションの取り方」「デモやサウンドの形態」「各団体の苦労や悩み」「民主主義やサイレントマジョリティの受け止め方」といったことについて質問し、興味深い議論がなされた。
 最後に「社会は変えられるのか」と質問したところ、「社会は絶対変えられる。しかし、今まで政治の話をしなかった人たちに働きかけない限り変わらない。変えることをみんなでやりたい。」「社会は変わっている。自分も変わった。展望と希望を持つことで今では他の人を変えたいという気持ちになった。」「今の若者の動きを労働者階級全体に広げることが大事。」「『野党は協力』という、今まで考えられなかったことができている。社会は変えようと思えば変えられる。」「全ての人が安心して働ける方向に変えられる。人生の先輩の皆さんは、もっと私たちに成功した話だけでなく失敗した話も教えてほしい。」「戦争法反対の大きなうねりが労働相談に来る若者たちの変化につながっている。『助けてほしい』から『職場を変えたい』と言う人が出てきている。」など、率直で前を見据えた発言が次々となされた。

5 7つの団体は大きくいって「労働系」と「平和系」に分けることができると思うが(①~③は労働系、④~⑥は平和系、⑦は両方にまたがっているといえる)、共通するのは若者が主体となって民主主義を志向しているということである。1、2部を通して、どの団体もとても個性的で、困難を抱えながらも、生き生きと活動していることがわかった。デモのサウンド一つをとっても古い世代とはずいぶん違うが、若者が声を上げ始め、柔軟で多様性がある活動を展開していることを知り、参加した若者同士も盛り上がり、また中高年の参加者たちも元気と勇気をもらって、熱気の中で閉会した。二次会にも若者を中心に30人以上が参加し、分野を超えて更に交流を深めた。

6 このような若者の自主的連帯の動きに対し、様々な攻撃も行われている。また、当然のことながら、若さゆえの間違いや行き過ぎも出てくるかもしれない。しかし、このような新しい下からの連帯の動きは、大きく見れば半世紀ぶりのことであり、また、その柔軟さや多様性において過去に例のないものである。折しも18歳・19歳の若者に選挙権が広げられ、若者の政治・社会への積極的参加が期待される中、日本国憲法を日本社会に内実化させ、日本社会全体が豊かに発展していくために、これらの動きや交流を大切に育てていきたい(共に育ちあいたい)と願っている。

◆岩城 穣(いわき ゆたか)さんのプロフィール

 1988年弁護士登録(大阪弁護士会)、いわき総合法律事務所所長。
 弁護士登録の直後から、過労死問題にライフワークとして取り組む。
 現在、大阪過労死問題連絡会事務局長、過労死弁護団全国連絡会議事務局次長、NPO法人働き方ASU-NET共同代表、過労死等防止対策推進全国センター事務局長、厚生労働省過労死等防止対策推進協議会委員。
 また、1995年の阪神大震災を契機に結成された欠陥住宅被害全国連絡協議会(欠陥住宅全国ネット)の事務局長・副幹事長などを歴任し、現在は欠陥住宅関西ネット代表幹事。

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2016年5月16日 (月)

No.284 憲法という希望──木村草太さん、国谷裕子さんの対談に感銘

 5月14日(土)午後1時から4時まで、大阪弁護士会主催の2016年憲法行事「憲法という希望」が行われた。
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 今回は新進気鋭の憲法学者の木村草太さんの講演と、23年間にわたるNHKの「クローズアップ現代」のキャスターをこの3月いっぱいで降板した国谷裕子さんとの対談ということで、800人収容の2階ホールはもちろんのこと、映像中継の第2・第3会場を含めて参加を受け付けた市民の数は1100人。大阪弁護士会のイベントでこれほど盛り上がったのは初めてではないだろうか。
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◆最初の30分間、私たちが現在準備を進めている大阪憲法ミュージカル2016「無言のレクイエム」(本番は6月2日~5日、大阪ビジネスパーク円形ホール)のプレビュー(一部実演)が行われた。まだ練習途中で、かつ、舞台装置も衣装もない中での短時間の実演だけだったが、ミュージカルの雰囲気はある程度伝わったと思う。実際、イベント終了後、会場の外にあるブースに、たくさんの方がチケットを買いに来てくれた。
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◆木村草太さんのお話は、報道ステーションのコメンテーターとして話されるのを聴いたことがあったが、まとまったお話を聴くのは今回が初めてだった。
 司法試験科目で憲法を勉強してきた私たちにとっても、木村さんのお話は目の覚めるような興味深いものであった。お話しされたことは多岐にわたり、とてもここに書き切れるものではないが、箇条書きにメモだけしておきたい。
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・立憲的意味の憲法とは、過去に国家がしでかしてきた失敗のリストである。無謀な戦争→軍事力の統制、人権侵害→人権保障、権力独裁→権力分立と民主主義など。
・私たちの「当たり前な生活」を支えるのが憲法である。何をしたい、何を食べたい、どこに行きたいなど。
・夫婦別姓違憲訴訟の最高裁判決(最大判平成27年12月16日)の誤りと、弁護団の闘い方の問題点。男女の区別ではなく、同氏希望カップルと別姓希望カップルの区別として法律構成をすべきであった。
・辺野古移設の法的根拠の不十分さ。そもそも、辺野古移設は内閣だけで決定してよい問題なのか。米軍基地を置く地方自治体は自治権が大きく制限される。憲法92条により、どの自治体の自治権をどう制限するかは法律事項であり、国会で定める必要がある。更に、憲法95条によって、地方特別法は住民投票の承認が必要である。本件はこのような形による解決こそが望ましいのではないか(これを先生は「木村理論」「木村定石」とおっしゃっていた)。
・善き統治を実現するために、私たち一人ひとりが国家権力に憲法を守らせていかなければならない。

◆続いて行われた木村さんと国谷さんの対談も、立ち込めた霧が晴れ渡っていくようで、すばらしかった。
 国谷さんの木村さんからの話の引き出し方が大変上手で、まるで「クローズアップ現代」を観ているようだった。
 これも、箇条書きのみ。
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・別姓違憲訴訟の戦略の誤り。意識の変化によって最近になって違憲になったというのは欺瞞的。違憲なものは最初から違憲であり、それに多くの人々が気づいたのが最近ということ。裁判は法律構成によって勝ち負けが変わってくることも多く、弁護士の能力は大変重要。
・辺野古問題について、米軍基地が自治権の問題だという意識は最近高まってきた。
・統治行為論をとった昭和34年の最高裁判決は、憲法判断の責任放棄ではあるが、究極的には国民が判断するというのは正しい(憲法の番人としての国民)。
・憲法裁判所の要否については、議論の必要はあるが、裁判官の人事が重要になり、また、悪い方に固定化させる危険もある(ドイツの憲法裁判所が憲法解釈を変更して集団的自衛権を解禁した苦い教訓)。
・憲法を専門にすることになった理由は、中学校が極めて抑圧的だったが、憲法を読むと「自由だ、自由だ」と書いてあったから(笑)。
・道徳教育よりも法学教育が重要。価値観が違う人間同士の共存の仕方を考えるのが法学教育。
・今は、憲法の危機だが、憲法を定着させるチャンスでもある。
・現在の日本はドイツやフランスの「第一共和制」のような段階。改憲派の中には、「王政復古派」と「共和制発展派」の2つのタイプがあり、これらの間には矛盾がある。
・例えば内閣総理大臣の衆議院の解散権など、憲法改正の議論が必要なものもあるが、合理的な改憲は権力者を縛るものなので、その時々の権力者は好まないものである。
・専門家は、わかりやすく説明する責任がある。

 木村さんは将棋が趣味だというだけあって、実に緻密に理論を組み立てる方である。私たちにとってバイブルのような「芦部理論」を、「緩すぎ・粗すぎで、これでは憲法を守れないと思った」という自負、自信は、すごいの一語である。その一方で、すごくユーモラスでお茶目な面もあり、決して偉ぶらない。大変魅力的な人である。

 また、このような国谷さんを失ったNHKの損失は、はかり知れないと思う。

 このようなお二人自体が、日本国憲法にとって希望ではないだろうか。

 今回の企画は、まさにタイムリーなもので、大阪弁護士会の面目躍如といってよいだろう。
 この講演と対談の中身が、広く国民、市民の間に広がっていけばいいなあと思う。

 ※画像は上から
  ①今回のイベントのチラシ
  ②進行次第
  ③「無言のレクイエム」のプレビュー
  ④講演をする木村草太さん
  ⑤木村さんと国谷裕子さんの対談


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2016年5月 2日 (月)

No.282 大阪憲法ミュージカル、上演まであと1か月──準備も練習もいよいよ佳境に

 No.260No.269でもご紹介した、6月2日~5日の4日間(7公演)にわたって大阪・京橋の大阪ビジネスパーク(OBP)円形ホールで上演が予定されている、「大阪憲法ミュージカル2016」までちょうどあと1か月となった。

 この憲法ミュージカルは、大阪(第3回は大阪・神戸)の若手弁護士たちが呼びかけ人となり、平和や人権の大切さなど日本国憲法に込められたメッセージを伝えたいということで始まったもので、今回は5年ぶり4回目となる。
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 今回のタイトルは「無音のレクイエム」。昭和初期の大阪千日前を舞台に、活動弁士を夢見る明、作家を目指す貞夫、それを応援する三智子の3人の若者が、日米開戦、出征、大阪大空襲に翻弄されていく青春群像を描いている。

 戦後70年を迎えた昨年、国会で集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法が議決され、「新たな戦前」が始まっているのではないか、という懸念が広がっている。こんな時代だからこそ、身近な戦前の大阪を舞台にしたこのミュージカルで、平和のすばらしさと日本国憲法の果たしている役割を共に考えたい。
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 1月24日のオーディションを経て参加した市民と、在阪劇団の「劇団往来」の皆さんが一緒になって、2月14日から毎週土日に練習を続けている。

 昨日5月1日、天王寺区民センターで行われた練習を見に行ってきた。70人以上の出演者、スタッフの皆さんが、制作陣の人たちから厳しい指導を受けながら、全力で役を演じ、歌を歌っていた。また、完成した台本も読ませていただいたが、途中から涙をこらえるのに苦労した。
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 この取り組みがすばらしいのは、実行委員会として、出演者やスタッフ自身が、歴史の事実や日本国憲法について学びながら、それをミュージカルの成功に結びつけていくところである。

 第1回実行委員会(2015年12月16日) 弘川欣絵弁護士(明日の自由を守る若手弁護士の会=あすわか)による憲法トーク「こんな時だから、憲法のことを考えてみる」
 第2回実行委員会(2016年2月16日) 無声映画「雄呂血(おろち)」の上映会
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 第3回実行委員会(3月28日) 大前治弁護士(大阪空襲訴訟弁護団)による「大阪大空襲を考える」と、森永常博さん(空襲体験者)のお話
 第4回実行委員会(4月27日) 谷口真由美大阪国際大学准教授「谷口真由美さんと憲法を知る。──おばちゃんに聞く、おばちゃんでも分かる憲法──」

 このブログを読んでくださった皆さん、ぜひ「無言のレクイエム」を観に来てください。
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 チケットは、私の事務所(いわき総合法律事務所、電話06-6636-9361)でも取り扱っていますし、大阪憲法ミュージカル2016の公式ホームページの「チケット販売」からも、購入の申込みをすることができます(何月何日のどの公演〔昼の部、夜の部〕かを指定してください)。

 皆様のチケットの購入と当日のご観劇を、心よりお待ちしています!

 ※(1)画像は、上から
 ①「無言のレクイエム」のチラシ(表)
 ②同じくチラシ(裏)
 ③大阪大空襲後の様子。堂島朝日新聞社から東方向に写したもの。右手に映っているレトロ調の建物は旧大阪市役所、その手前の橋は大江橋。
 ④今回のミュージカルの舞台になった千日前の映画館、常盤座が空襲で破壊された写真。窓ガラスの破壊が空襲のすさまじさを物語っている。(③、④は「ピースおおさか」の展示より)
 ⑤公演の日程など(申込みの際に確認してください)

 ※(2)練習風景を取り入れたPR動画ができています。雰囲気を感じてください。
 ①無音のレクイエムPV no.1
 ②大阪憲法ミュージカル2016「無音のレクイエム」 PR映像
③無音のレクイエムPV no.2


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2016年3月19日 (土)

No.278 分野・世代を超えた連帯はできる、社会は変えられる──働き方ASU-NET第24回つどい

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 事前にお知らせしていたように(No.270 未来を切り開く連帯~若者たちの運動から学びあう~)、今広がっている若者たちの社会運動の7団体の代表の方に集まってもらってリレートークをしてもらう企画を行った。

 もたもたしているうちに、森岡孝二先生がASU-NETのホームページに詳細な報告を書いておられるので、団体紹介と、採択された「つどい宣言」もあわせて紹介しておくことにする(なお、7団体の順序を、当日の発言の順に並べ替えさせていただいた)。
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■3.16若者たちの運動から学びあう集いが満員盛況で

 3月16日、午後6時半~8時50分、エルおおさかで働き方ASU-NET第24回つどい
「未来を切り開く連帯 ~若者たちの運動から学びあう~」が開催されました。

 第1部のリレートークでは、7つの若者団体を代表して下記の7名の方からそれぞれ10分前後、各団体の結成時期、主な活動、訴えたいことなどを報告していただきました。
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 ①労働相談に取り組みブラック企業を社会問題化した
NPO法人POSSEの坂倉 昇平 さん

 ②アルバイト学生を組織し団体交渉も行っている 
 関西学生アルバイトユニオンの北村 諒 さん
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 ③労働相談と団体交渉で成果を上げる個人加盟労組
  地域労組おおさか青年部の北出 茂さん

 ④民主主義を原点に戦争法の廃止を訴える 
SEALDs KANSAI の寺田ともか さん
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 ⑤戦争法に反対し街頭での対話活動に取り組む  
  SADLの中村 研 さん 

 ⑥堺市のフーパー前で戦争法廃止の署名活動をする
 ANTSの磯田 圭介さん 
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 ⑦最低賃金1500円への引き上げを求める
  AEQUITAS京都の橋口 昌治さん

 第2部のパネルディスカッションでは、岩城穣ASU-NET代表理事(弁護士)の司会のもとで、各団体がどんな苦労に直面しているのか、またどんな展望を持っているのかを話してもらいました。
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 7つの団体は平和系と労働系に色分けすることもできますが、共通するのは若者が主体の民主主義を志向する団体であるということです。1~2部を通して、どの団体もとても個性的で、困難を抱えながらも、生き生き活動していることがわかりました。デモのサウンド一つをとっても古い世代とはずいぶん違いますが、若者が声を上げ始め、柔軟で多様性がある活動を展開していることを知って、参加者は、若者も中高年も、元気がでるつどいだったと異口同音に話していました。

 年度末の忙しいなか、会場を埋め尽くす145名の参加がありました。この場を借りてお礼を申し上げます。

■3.16 NPO法人働き方ASU-NET第24回つどい パネリストの団体紹介

◆NPO法人 POSSE(ポッセ)
 24時間無料の労働相談を中心に、若者の「働くこと」に関する様々な問題に精力的に取り組む労働NPO。ブラックバイトユニオンを支援。若者が創る雑誌POSSEを年間4回発行、ブラック企業を社会問題化してきた。

◆関西学生アルバイトユニオン
 関西の学生アルバイトを中心としたユニオン(労働組合)。ブラックアルバイトなどアルバイトに関して悩む学生や奨学金の相談活動をしている。また学生以外の相談にも応じている。

◆地域労組おおさか青年部
 全国屈指の「一人でも加入できる労働組合」の青年部として有名。東京の首都圏青年ユニオンと並び、大阪で、泣き寝入りしない若者たちの駆け込みユニオンになっている。労働相談・交渉・和解に至るまでを一貫して行い、抗議宣伝も行う能力を有する。解決した争議は多数。

◆SEALDs KANSAI(シールズ・カンサイ)
 反戦争法で若者たちの自主的な大きな運動のうねりをつくりだし、今まで関わってこなかった層や世代を巻き込み民主主義や立憲主義についても社会的問題にして来た。運動は全国規模に広がっている。

◆SADL(サドル)
 戦争法に反対し、民主主義と生活を守ることを目ざして活動している。継続的に街頭での対話活動に取り組み、参議院選挙への関心を拡げ 「争点は市民がつくる」をキャッチフレーズに活動している。

◆ANTS(アンツ)
 戦争法に反対する行動を「堺市で暮らし、働く若者」で行っている。地元に足を付けた取り組みをしている。毎月、デモや街頭宣伝をするなど、戦争と政治の強い関わりをわかりやすく伝える活動をしている。

◆AQUITAS KYOTO (エキタス 京都)
 エキタスは「正義」「公平」を意味するラテン語で「最低賃金1500円以上」を掲げ、昨年10月、12月には東京で700人のサウンドデモを行った。憲法25条の精神「社会正義」を掲げて活動している。

■3.16 NPO法人働き方ASU-NET第24回つどい宣言

         未来を切り開く連帯~若者たちの運動から学びあう~
 
 今日、わたしたちは若者の置かれた現状を変革したいという、わきあがる熱い思いを聞きました。

◇国民の半数以上が反対しているにもかかわらず、安倍内閣は民主主義をないがしろにし、平和憲を捨て、遮二無二に戦争をする国へ進んでいます。

◇3.11の東京電力福島第一原発の過酷事故の収束が混乱を極めるなかで、反対多数の世論を押し切って停止原発の再稼働が強行されています。

◇若者を使い潰すブラック企業に対する批判が強まるなかでも、過労とストレスとパワハラで心身を病み、はては過労死と過労自殺に追いやられる若者が跡を絶ちません。

◇雇用の非正規化がすすむなかで、日本の貧困率は世界最悪水準の16%となり、24歳未満の若者世代では非正規労働者の割合が5割に達し、生活困窮者が著しく増えています。

◇家計の窮迫と乏しい奨学金のために、勉学に専念すべき学生が学費や生活費を稼ぐために長時間のアルバイトを強いられ、学生を酷使するブラックバイトへの批判が高まっています。

◇若年労働者の賃金の底上げのために、最低賃金の全国平均(現行798円)を速やかに1000円に引き上げ、近い将来、生活可能な1500円に引き上げることも課題になっています。

 しかし、私たちは声を上げ行動することでこうした現状を変えることができます。いろんな課題に取り組む多様な若者グループがお互いの主張と行動に耳を傾けることは、社会を変える道筋を探ることに通じています。若者も壮年も熟年も、男も女もこうして集い、率直に語り合うなかで、互いに見えていなかったことが見えてきました。

「自分たちの未来は自分たちで決める!」という若者たちの力強い声と、柔軟でいて地に足をつけた取り組みには目を見張るものがあります。海の向こうからも政治と雇用に異議を申し立てる若者たちの声が聞こえてきます。平和と民主主と暮らしが危険にさらされるとき、長い苦難の道のりを切り開いてきた壮年・熟年世代の底力も捨てたものではありません。

 若者たちの、素直に思いを伝えあい、柔軟で壁を作らない運動の新しい流れに学びながら、すべての世代の人々が語り合い、つながり合って、政治を変え、働き方を変えて、この国の未来を切り開くために、ともに前へ進みましょう。

 ここに本つどいの名において宣言します。

                  2016年3月16日
                   NPO法人働き方ASU-NET第24回つどい

 ※画像は上から、
 ①リレートークの様子
 ②POSSEの坂倉さん
 ③関西学生アルバイトユニオンの北村さん、エキタス京都の橋口さん
 ④地域労組青年部の北出さん、SADLの中村さん
 ⑤SEALDs KANSAIの寺田さん
 ⑥ANTSの磯田さん
 ⑦コーディネーターをする私


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2016年3月 1日 (火)

No.275 “Enough is enough!(もうたくさんだ!)”アメリカ大統領予備選挙、サンダース候補に注目する

 アメリカの大統領選挙について、今回ほど日本で話題になったことはないのではないか。
 2008年に現職のバラク・オバマ氏が選出されたときも相当な話題であったが、今回は共和党・民主党の党内でそれぞれの候補を絞り込む予備選挙段階での盛り上がりはすごい。
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 共和党では、ドナルド・トランプ氏が大旋風を巻き起こしている。不動産王といわれる大富豪で、既成の政治家に対する批判、女性や移民に対する蔑視発言、隣国のメキシコや中国・日本に対するあからさまな敵意など、暴言・放言を繰り返して喝采を浴びている。
 大阪の橋下徹氏を彷彿とさせる、ポピュリズム的な政治手法である。
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 民主党では、元大統領ビル・クリントン氏の妻であるヒラリー・クリントン前国務長官の圧勝と見られていたが、自ら民主主義的社会主義者と称するバーニー・サンダース上院議員が想定外の猛追をする展開となっている。米FOXニュースの世論調査では、民主党支持層からの支持率は、1年前にはクリントン氏61%に対しサンダース氏はわずか3%だったのに、今年2月の支持率はサンダース氏47%、クリントン氏44%とわずかであるがサンダースがついに逆転したのである。
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 注目されるのは、サンダース氏は公立大学の無償化、労働者の最低賃金の倍増、上位1%の富裕層に対する課税強化、国民皆保険の導入など、中間層以下の社会的弱者に対する支援と富裕層に対する責任強化を正面から打ち出していることである。その結果、学生や若者たちが圧倒的にサンダース氏を支持しているという。

 サンダース氏は、アイオワ州予備選挙後の総括演説で、次のように述べている。
 http://hbol.jp/83029
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 アメリカの人々は、この国が、公正さの上に築き上げられた国だと理解しています。トップ1%の中のわずか1/10の人が、その他90%の人の合計よりも多くの富を所有しているのは公正ではありません。この国最大の金持ち20人が、この国の底辺半分の人々の合計よりも多くの富を持っているのは、公正ではありません。

 みなさん。革命的なアイデアへの準備はいいでしょうね?

 その革命的なアイデアとは、我々が、富裕層だけでなく、勤労世帯にも機能する経済体制を作るということです。

 そして、数百万もの人々が貧困ライン賃金で働いている状況で、我々は、最低賃金を15ドルに引き上げるということです!
 そして、そうです、女性にも同一賃金を支払うのです!

 アイオワ中を駆け巡りました。我々の陣営は集会に次ぐ集会で7万人近い人々とお話ししました。

 多くの人々が立ち上がって”バーニーさん!大学行ったんだ、大学卒業したんだ、で、今、6万ドル、8万ドル、9万ドルの借金を抱えている”とおっしゃるのを聞きました。

 狂ってる。これは狂ってる。彼らはまともな教育を受けようとしただけです。罰せられるべきではない。これこそが 2016年に、公立大学は学費無料になるべきだと信じる理由です。この主張に対しては私の批判者たちはこういうでしょう「バーニーさんよ、そりゃいい考えだ。タダだってね。でもどうやって財源を確保するの?」と。財源の確保をどうするか言いましょう。ウオールストリートの投機筋に課税すりゃいいんですよ。貪欲で無軌道で不法なウオールストリートの振る舞いは、この国の経済を無茶苦茶にしました。国民はそのウォールストリートを助けたんです。今度は、ウォールストリートが中流層を助ける番です。

 既に行われた州の予備選の結果は次のとおりである。
 ①アイオワ州(2月1日) クリントンが僅差で勝利(49.9%:49.6%)
 ②ニューハンプシャー州(2月10日) サンダース氏が勝利(56%:42%)
 ③ネバダ州(2月21日) クリントン氏が接戦で勝利(48.9%:41.5%)
 ④サウスカロライナ州(2月27日) クリントン氏が圧勝(73.5%:26%)

 「スーパーチューズデー」と言われる今日3月1日には、多くの州で予備選が行われることになっており、天王山とされる。

 私はもともと共和党よりリベラルな民主党の方に親近感を感じており、その中でも女性であるクリントン氏には好感を持っているが、サンダースが民主党の候補者に選ばれ、トランプ氏との一騎討ちで勝利するようなことになれば、アメリカ国内はもちろん、世界への影響もはかり知れないほど大きいだろうと思うので、今は、よりサンダース氏に期待したい。
 もっとも、オバマ氏の時もそうだったが、いざ大統領になると多くの点で現実的な政策をとらざるを得ないことも考えられる。しかし、それでも、トランプ氏がなるのとサンダース氏がなるのとでは、天と地ほどの違いがあるであろう。

 今回のアメリカのように、極右・新自由主義・排外主義などを特徴とする勢力と、リベラル・福祉・共生などを特徴とする勢力の両方が伸長し対立が激化しているのは、イギリスやフランスでも見られるし、大きく見れば世界的な傾向でもある。

 翻って考えると、日本でも同じような傾向が見られる。新自由主義を徹底させた小泉政権、これに復古主義・排外主義をプラスした安倍政権、敵を次々と作ってこき下ろすことで喝采を浴びる橋下徹氏とおおさか維新などが大手を振る状況が続いてきたが、他方、原発再稼働や集団的自衛権をめぐる安倍政権の強引な手法に対する危機感から、ここ1年ほどの間にSEALDsをはじめとする若者たちやママさんたち、大学人や学者などの運動が急速に広がった。そして、そのような世論の後押しを受けて「5野党合意」が成立し、バラバラだった野党が一つになって選挙での対立軸を作る流れができつつある。

 世界的な政治動向、アメリカの対日政策への影響、日本での政治潮流の変化を占うといいった様々な意味で、アメリカ大統領選挙に注目していきたい。

▼2016年度米国大統領選挙スケジュール日程
 http://matome.naver.jp/odai/2144602223945665801

──指名期間──
【2015年春〜年末】
 共和党・民主党ごとの候補者が出馬表明、討論会など

【2016年1月〜6月前後】
 各州での予備選挙、党員集会など
 3月頃にはスーパーチューズデー(天王山、複数州での一斉選挙)

【2016年7月】
 それぞれの党大会にて各党1名の大統領候補者が選出

──大統領選──
【2016年7月〜11月】
 共和党・民主党の大統領候補者同士での討論会

【2016年11月】
 大統領選挙(本選挙)、新大統領選出

【2017年1月】
 新大統領就任

 ※画像は上から、①ドナルド・トランプ氏、②クリントン氏とサンダース氏、③クリントン氏・サンダース氏の支持率の変化(2月19日付け朝日新聞より)、④サンダース氏

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2016年2月23日 (火)

No.273 日本国憲法の平和主義・立憲主義・民主主義の回復への巨大な一歩に──2・19「5野党合意」に期待する

 これは、まさに歴史的な出来事だ。
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 安保法制が強行可決された9月19日からちょうど5か月目にあたる2月19日、民主党、共産党、維新の党、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの5野党が共同で安保法廃止法案を提出するとともに、党首会談を行い、次の4点を確認した。

1.安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする。
2.安倍内閣の打倒を目指す。
3.国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む。
4.国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う。

 これで、当面のいくつかの補選や7月の参議院選挙はもちろん、仮に衆参ダブル選挙が行われても、野党が結束して闘うことができる。
 文字どおり、日本の未来を切り開く歴史的な5党合意だと思う。

 私は、2014年12月14日の前回衆院選の告示前、「小選挙区制のもとで野党は「連携」模索を」と訴えた(「No.220 「いきなり解散」で総選挙へ──小選挙区制のもとで野党は「連携」模索を」)。

 「少なくとも現時点においては、現在の小選挙区制で選挙が行われる以上、その弊害を少しでも減らし、民意に近い国会構成にすべきである。そのためには、何が必要だろうか。

 私は、それは「野党共闘」又は少なくとも「野党連携」ではないかと思う。」

 「もちろん、本来は政策協定までも締結することが望ましいが、そんなことを言っていてはいつまでも「泡沫候補同士の足の引っ張りあい」にならざるを得ない。選挙は当選しなければ意味がなく、「独自の闘い」や「善戦」では、ダメなのである。

 もちろん、比例代表での議席を狙うことは大切だが、比例区の定数はどんどん減らされつつあり、最終的にはゼロにされてしまう可能性もある(そのようなことを許してはならないが)。国会で多数を獲得して政権を取ろうとする以上、小選挙区制でどう多数をとるかを本気で考えないと、政権をとるなど夢のまた夢である。

 今回もまたこれまでのように、野党が一強多弱で選挙に臨むならば、実質的に選択肢のない有権者は白け、投票率は上がらず、その結果、「自民・民主」の二大政党制ならぬ「自民と無関心」の二大政党制になり、日本は破滅に向かうことは確実である。

 この問題は、単にどの政党に有利だとか不利だとかという問題ではなく、日本の民主主義の根幹に関わる問題なのである。

 難しいとは思いつつ、大なり小なり政策を共通にする野党同士で、離合集散ではない、地に足のついた連携が模索されることを、切に願うものである。」

 しかし、このときの総選挙は野党乱立で行われ、自民党が「漁夫の利」を得て圧勝した。そして、悪夢のような憲法違反の「安保法制」の成立が強行されていったことは周知のとおりである。

 その後の国民的な運動の盛り上がりを経て、今般、冒頭に述べたような「5野党合意」が実現したことは、本当にすばらしいことである。

 折しも、翌2月20日に開かれた社民党の大会に4党の代表が招かれ、それぞれからあいさつと合意事項を実行する決意表明がなされた。

 以下のユーチューブで、4党の代表のあいさつを視聴することができる。
 私は、全部聴き、胸が熱くなった。

 民主党 枝野幸男 幹事長
  https://www.youtube.com/watch?v=GHShycmhGKk
 日本共産党 志位和夫 委員長
  https://www.youtube.com/watch?v=NojPZKQtZqE
 維新の党 今井雅人 幹事長
  https://www.youtube.com/watch?v=PAPd9-we5mU 
 小沢一郎 生活の党と山本太郎となかまたち代表
  https://www.youtube.com/watch?v=aa4NBhoPs8g

 ※画像は、2月20日の社民党大会に勢ぞろいした、民主・枝野幹事長、維新・今井幹事長、共産・志位委員長、生活・小沢代表、社民・吉田ただとも党首。


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2016年1月14日 (木)

No.269 5年ぶり開催の「大阪憲法ミュージカル」が大きく新聞報道

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 「大阪憲法ミュージカル」が5年ぶりに開催されることになったことについて、毎日新聞(1月9日付け朝刊)、朝日新聞(1月14日付け朝刊)がいずれも、写真付きで大きく紙面を割いて紹介してくれた。

 朝日新聞には、共同代表の一人として私のコメントも掲載されている。
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 1月24日にオーディションが予定されている。これらの記事を読んで、たくさんの人たちがオーディションを受けてくれることを期待したい。

大阪)憲法ミュージカル、5年ぶり復活へ 出演者を募集

朝日新聞2016年1月14日付け朝刊 大阪版

 歌い、踊って、憲法の明日を考えよう――。安全保障関連法の成立など憲法をめぐる状況が大きく変化する中、大阪の弁護士らが企画し、市民が演じる「憲法ミュージカル」が5年ぶりに開かれることになった。戦前の大阪で映画制作に夢をかけた若者が戦争の荒波にのまれる姿を描き、平和の尊さを訴える。6月に公演予定で、今月24日に開く出演者オーディションの参加者を募っている。
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 「憲法ミュージカル」は2008年に始まった。最初の上演作品は慰安婦問題をテーマにした「ロラ・マシン物語」。長崎・諫早湾の干拓事業を扱った「ムツゴロウ・ラプソディ」(09年)▽アフガニスタンで医療と農業の支援に取り組む中村哲医師の活動を描いた「ドクターサーブ」(11年)と続いた。市民延べ約350人が出演し、延べ約2万人が鑑賞したという。

 13年1月、この3作の脚本や演出を手がけた演出家が亡くなり、新作の制作は止まっていた。しかし、今年が憲法公布70周年にあたることや、政府による集団的自衛権の行使容認などを受けた憲法への関心の高まりを背景に、大阪の弁護士ら約50人が呼びかけ人となって「復活」を進めた。
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 4作目となるミュージカルは「無音のレクイエム」。戦前・戦中の大阪・千日前を舞台にした作品で、無声映画の制作に情熱を傾ける若者3人が主人公という。6月2~5日、大阪ビジネスパーク円形ホール(大阪市中央区)で計7公演を予定している。

 憲法ミュージカル共同代表の岩城穣(ゆたか)弁護士は「直接戦争を知る世代が年々少なくなる中、多くの人に舞台を通じて『あの頃の空気感』をリアルに感じてほしい。憲法に込められた平和への願いを共有し、憲法に関心を持ってもらうきっかけになれば」と話す。

 オーディションは24日午後2時半から天王寺区民センター(大阪市天王寺区)で。2月から始まるレッスンや本公演に参加できることが条件で、参加費は1万5千円。問い合わせは「憲法ミュージカル」事務局(080・9607・2016)。(阪本輝昭)


◆憲法ミュージカル 今こそ 大阪で5年ぶり、参加者募集
毎日新聞2016年1月9日 大阪朝刊
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 憲法公布70年を迎える今年、平和憲法を身近に感じてもらおうと、市民が舞台に立つ「憲法ミュージカル」を、大阪の弁護士らが5年ぶりに復活させる。過去3作を手掛けた演出家が亡くなるなどして中断したが、改憲論議も取りざたされる中、「今こそ憲法の精神を伝えよう」と復活を決めた。6月の公演に向け参加者を募っており、今月24日に出演者約100人を決めるオーディションを開く。

 弁護士約50人でつくるグループ「大阪憲法ミュージカル」が主催。これまで平和や環境保護など、人間の尊厳を守ることをテーマにしてきた。初公演の2008年は慰安婦問題、09年は長崎県諫早湾の干拓事業、11年はアフガニスタンで農業支援などに取り組むNGO「ペシャワール会」の中村哲医師の半生を描いた作品を公演した。

 過去3作で子どもからお年寄りまで計約350人が出演し、約2万人が鑑賞した。新作のタイトルは「無音のレクイエム」。昭和初期以降の大阪・千日前を舞台に、無声映画の製作に青春をかける若者らが戦争に巻き込まれていく姿を描く。6月上旬に7回、大阪市中央区の大阪ビジネスパーク円形ホールで公演する。

 出演者は大阪大空襲の被害者から話を聞くなどして演技に生かすという。事務局長の田中俊弁護士は「憲法には平和を実現する力がある。演じる人も見る人も憲法への理解を深めてほしい」と話す。

 オーディションは24日午後2時半、大阪市天王寺区の区民センターで。経験不問だが、週末練習への参加が条件。参加費1万5000円。問い合わせは事務局(080・9607・2016)。【堀江拓哉】

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2015年11月13日 (金)

No.260 大阪で5年ぶりに「憲法ミュージカル」開催決定!

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 2008年、大阪で初めて「憲法ミュージカル」が行われた。若手弁護士らが呼びかけ、オーディションに合格した市民100人が練習に練習を重ね、日本国憲法の人権や平和をテーマにしたミュージカルを演じあげるという、壮大な取り組みである。
 これまでに以下の3つの作品が上演され、合計2万人の人々が観劇したとのことである。
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 ①2008年4月~5月 ロラ・マシン物語(フィリピンの従軍慰安婦問題)
 ②2009年6月~7月 ムツゴロウ・ラプソディ(長崎県諫早湾の干潟の水門閉鎖問題)
 ③2011年10月 ドクターサーブ(アフガニスタンで用水路を開いた日本人の中村哲医師をモデルに)(「No.50 すばらしかった憲法ミュージカル「ドクターサーブ」」参照)
   ※③は大阪・神戸で共同の取り組み。
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 その後、しばらく充電期間が続いたが、昨年来、集団的自衛権行使を容認する閣議決定がなされ、これを受けて先般国会で、国民の大きな反対運動を押し切って安保法制が議決された。そんな「憲法の危機」ともいうべき状況のもとで、改めて日本国憲法のすばらしさ、平和の大切さをテーマに、憲法ミュージカルが再演されることになった。今回は、在阪劇団「劇団往来」とタッグを組んでの製作となる。
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 今回の作品名は、「無音のレクイエム」。戦前、戦中の大阪千日前を舞台に、無声映画に夢を描く若者3人が、軍国主義の波が押し寄せる戦時下を生き抜いていく人間模様を通じて、平和の大切さを考えるものとなる予定である。
 公演は2016年6月2日~5日、京橋の大阪ビジネスパークの円形ホールで7公演が予定されている。

 これまで、私は親しい友人の弁護士や、所属していた事務所の後輩の弁護士たちが実行委員会に参加したり、自ら出演したりしていたことから、私なりに応援してきたが、今回は当初からの中心メンバーで、特に親しい田中俊さんから直々に依頼され、共同代表の1人に加わることになった。

 他の共同代表は、石田法子、竹村二三夫、田中俊、畠田健治、茂木鉄平、山西美明の各弁護士で、ここ数年に大阪弁護士会の会長や副会長を歴任されるなどした錚々たる顔ぶれである。

 そんな共同代表の1人に加わることになり、どれだけお役に立てるかいささか心もとないが、私なりに一生懸命関わっていければと思っている。
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 先日11月8日(日)、このプレ企画があり参加してきた。「ロラ・マシン」や「ムツゴロウラプソディ」の懐かしいビデオを観て感動が蘇り、また、劇団往来の力作「チンチン電車と女学生」の舞台裏を描いたビデオを鑑賞させていただき、感銘を受けた。

 皆さま、来年6月は、ぜひ観に来てください。
 また、自ら出演してみたいと思われる方は、来年1月24日(日)に予定されているオーディションにチャレンジしてみてください(詳細は右の募集チラシをご覧ください)。


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2015年11月 7日 (土)

No.259 「女性のみの再婚禁止期間」を乗り越え、再婚を果たしたAさんのこと

(再婚禁止期間)

第733条  女は、前婚の解消又は取消しの日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

2 女が前婚の解消又は取消しの前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。


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 女性のみが、離婚後6か月間再婚が禁止される民法733条が憲法違反かどうかが争われた裁判で、11月4日、最高裁で当事者双方の意見を聴く口頭弁論が開かれた。これまで合憲としてきた最高裁判例が変更され、新たな憲法判断が下される可能性が高い。
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 法律には、その必要性を支える社会的事実(立法事実)が必要である。この条文の立法事実として、「生まれた子の父親が誰なのかを巡る争いが起こり、子どもが不利益を受けるのを防ぐ必要がある」ということが挙げられている。

 すなわち、民法772条は「離婚後300以内に生まれた子の父は前夫」と推定する一方で、「婚姻後200後に生まれた子の父は現夫」と推定すると規定していることとの関係で、離婚後すぐに再婚を認めると推定期間が重なり、どちらの子か決めにくくなるため、女性のみ禁止期間が設けられたとされる。
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 しかし、この民法772条を前提としても、100日たってからの再婚なら推定が重ならないことから、再婚禁止期間は100日で十分ということになり、これを超えて6か月(180日)も再婚を禁止するのは、過度に再婚の自由を侵害するものだということになる。

 また、仮に女性が妊娠していたとしても、現在は医療やDNA鑑定などの発達で妊娠の有無や父子関係の判断ができることから、そもそも妊娠していない場合や、父子関係が証明できる場合には、「推定」の競合自体が生じないはずである。

 さらに、これはあまり議論されていないが、そもそも女性が「妊娠する可能性がない場合」もある。女性が閉経後であったり、卵巣や子宮を摘出している場合などがこれにあたる。このような場合にさえ、女性のみが6か月間も再婚の届出を待たなければならないのだろうか。6か月も待てない特別の事情がある場合はどうか。

 私が担当したのは、まさにそのような事案であった。
 これについて、私が今年3月まで所属していたあべの総合法律事務所の事務所ニュース(2014年1月発行)に掲載しているので、以下、紹介したい。

女性のみの再婚禁止期間は、何のため?

1 A子さん(1945年生まれ)は1969年にB氏と結婚したが、1985年ころから夫婦仲が悪くなり、1989年から別居を開始した後はほとんど音信不通の状態が続いた。
 一方でA子さんは、別居開始後の1993年ころからC氏と同棲を開始し、事実上の夫婦として暮らしてきた。
 A子さんは、B氏の年金分割の問題やお墓の問題もあるので、いつまでもこのような状態を続けていてはいけないと離婚を決意して、私に相談に来られた。私は、20年以上別居と音信不通が続いていたのだから、比較的容易に調停が成立するのではないかと考えて、2010年11月、家裁に調停を申し立てた。

2 ところが、予想に反してB氏は年金分割に難色を示して調停は長期化し、訴訟も避けられない可能性も出てきたうえに、C氏が末期ガンで、死期が近いという深刻な事実が判明したのである。
 私はA子さんと協議して方針を転換し、B氏の年金分割は断念し離婚だけを認めてもらって調停を成立させた。
 しかし、調停成立後すぐにC氏との婚姻届を提出することはできるのか。民法733条は、女性に限って、前婚の解消から6か月を経過しないと再婚できないと定めているからである。最高裁は、この規定は憲法に違反しないとしている(最高裁平成7年12月5日判決)。

3 とはいえ、民法733条が女性だけに待婚期間を定めている理由は、「父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐ」(前記最高裁判決)ことにあるはずであり、だとすれば、既に65歳で生物学的に子どもが生まれる可能性がない女性にも、一律に再婚禁止期間を強制するのはおかしいのではないか。そして、その間にC氏が亡くなってしまうと、Cさんの遺産も相続できないという、取り返しのつかない結果となってしまう。これは、どう考えてもおかしい。

 そこで、私はA子さんに対して、「民法の再婚禁止期間の問題はありますが、とりあえずB氏との離婚届とC氏との婚姻届の両方を役所に提出して下さい。窓口で受理してもらえなかった場合は私からできる限り説明し、それでもダメなら、再婚禁止期間の一律適用は違法だと主張して国家賠償請求訴訟を起こすことも考えましょう。」と説明して、そのようにしてもらった。

 すると、予想どおり戸籍係の担当者から電話があったので、これまでの経過を説明し、「とにかく時間がないので、受理してもらわないと困る。もし受理してもらえなければ国賠訴訟も考えます!」と啖呵を切っておいた。

 後日、A子さん自身も役所に呼び出されて一生懸命説明したところ、何と婚姻届が受理されたのである。

4 A子さんによれば、婚姻届が受理されたということでC氏は泣いて喜んでくれた。C氏は2か月後の2012年1月に亡くなったが、2人で寄り添いあって最後まで暮らすことができ、また、自分もC氏と同じお墓に入れることになってよかったとのことであった。
 恐らく、戸籍係の担当者は、場合によっては法務省にまで伺いをたてて受理を決めたのではないか。英断を下していただいたことに感謝するとともに、おかしいと感じることに最初から諦めてはいけないと、改めて肝に銘じた。
 なお、A子さんによれば、B氏も同じころに亡くなったという。B氏とも不毛な争いを続けなくてよかったと、心から思った。

 もし、この事案で、私が上記のように機転を効かせて役所を説得せず、その間にCさんが亡くなってしまった場合には、その後に国家賠償訴訟を起こして勝訴しても、わずかな慰謝料が認められるだけで、Aさんに妻としての相続権は認められなかっただろうし、何よりも、Aさんが法律上の妻としてCさんを見送ることはもはやできなかった。
 それゆえ、違憲訴訟は起こさなかったが、この件はこれでよかったのだと、改めて思う次第である。

 ※画像は上から、
 ①最高裁大法廷の様子(NNNニュースより)
 ②最高裁に入る原告・弁護団(同上)
 ③民法772条の推定規定(東京新聞より)


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