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カテゴリー「1-3 「弁護士ドットコム」topics」の7件の記事

2017年2月15日 (水)

No.313 「今日も会えて嬉しい」上司が恋愛感情むき出し、セクハラじゃないの?

 久々に(1年ぶりくらいか)、弁護士ドットコムの「ニュース」に掲載された。
 https://www.bengo4.com/c_5/c_1623/n_5706/ 
 今回の事例設定はやや微妙だったので、何度か加筆した。
 いつもこのブログに転載するわけではないが、今回は転載しておきたい。

「今日も会えて嬉しい」上司が恋愛感情むき出し、セクハラじゃないの?

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バイト先の上司に一方的に恋愛感情を持たれて困惑しているーー。ネット上の掲示板に、そんな書き込みが投稿された。

投稿者によると、上司は仕事あまり教えず、「今日も会えてよかった。嬉しい」など「一方的に恋愛みたいな会話」をしてくるのだという。あるときの会話では、「今度どっか遊びに行かない?」という質問に、投稿者が「えー」と返事をしたところ、上司は「分った、じゃ、また誘う」と言ったという。

投稿者は「仕事しづらくなる」「まだハタチなんでどこまでが普通でどこからが異常事態か分らなくてけっこうガチで困惑してる」と胸の内を明かす。

部下に対して一方的に恋愛感情をむき出しにした上司の発言は、セクハラなのか。岩城 穣弁護士に聞いた。

●恋愛感情むき出しの発言はセクハラ?

セクハラには、大きく分けて2種類のタイプがあり、以下のように定義づけられています。

(1)「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること」(対価型セクハラ)

(2)「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること」(環境型セクハラ)

今回のケースでは、上司が部下である投稿者に対して「今日も会えてよかった。嬉しい」といった恋愛感情をあらわにした言葉をかけています。ただ、現時点では、投稿者が拒否して不利益を受けるような事態は生じていないようですので、(1)の対価型に該当するまでには至っていません。

また、「今日も会えてよかった。嬉しい」とか「今度どっか遊びに行かない?」との言葉は「性的な言動」とまではいえないため、(2)の環境型セクハラにも当たりません。そのため、現段階では、まだセクハラには該当しないと思われます。

ただし、今後事態がエスカレートして、上司が投稿者の身体に触ろうとしてきたり、投稿者が拒否しているのにしつこく食事に誘い、投稿者が応じないと仕事上の不利益をちらつかせるような場合は(1)の対価型セクハラに該当する可能性がありますし、投稿者や他の労働者が不快感を募らせて、仕事に支障を来すといった状況が生じれば、(2)の環境型セクハラに該当する可能性があります。

●「不快なので、やめてください」とはっきり伝えることが大切

実質的に考えると、一般論として上司が部下を好きになり、職場恋愛、職場結婚などにつながることはあります。上司が部下に恋愛感情を示す言葉をかけることが許されないとまでいうことはできないでしょう(もっとも、その上司が妻帯者かどうかなど、総合的に評価する必要がありますが)。

大切なことは、投稿者が、上司からこのような言葉をかけられたくないのであれば、早い段階で、「そういう言葉は不快なので、やめてください」とはっきり伝えることです。

あいまいな対応や迎合的な態度をとると、上司が「その気があるのではないか」と誤解したり期待したりして、言動がエスカレートする可能性があります。

自分からどうしても言えない場合は、会社の人事労務などの相談担当者や、信頼できる別の上司に相談するとよいでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

岩城 穣(いわき・ゆたか)弁護士

1988年弁護士登録、大阪弁護士会所属。過労死問題をはじめ、労働・市民事件など幅広く活躍する「護民派弁護士」。


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2014年12月26日 (金)

No.224 もしパワハラを受けたら──「裁判で勝てるメモ」を残す方法を弁護士がアドバイス──弁護士ドットコム掲載(2014・12・23)

 「弁護士ドットコム」の依頼を受けて書いた原稿に基づいて、下記のトピックスが掲載された。
 少しでも現場で働く人たちの役に立てば、と思う。

もしパワハラを受けたらーー「裁判で勝てるメモ」を残す方法を弁護士がアドバイス 141226

 「死んでしまえばいい」「毎日同じことを言う身にもなれ」。パワハラ認定の決め手は、自殺した男性が手帳に記したメモだった——。福井地裁は11月末、上司の「典型的なパワハラ」によって、会社員の男性(当時19歳)が自殺に追い込まれたとして、会社と直属の上司に約7200万円の損害賠償を命じた。

 報道によると、男性の手帳には、上司から言われた言葉がびっしりと書き込まれていた。「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分」といった発言など、23カ所が「パワハラ」の根拠となったという。

 ただ、自分で書いたメモは、録音・録画などと比べると、どこまで「客観的な証拠」といえるのか難しい部分もある。法的な証拠として認めてもらいやすい「メモの方法」はあるのだろうか。労働問題にくわしい岩城穣弁護士に聞いた。

●「具体的」に「詳細」に書くべし
 「メモには次のような特性があるため、録音よりも信頼性が低いとみなされがちです。

(1)実際の言葉や行動よりも、おおまかで抽象的な記述になりがち。
(2)あえて事実と異なる内容も書くことができる。
(3)発言・行動からメモまでに時間が空くほど、記憶があいまいになる」

 裁判の証拠として信頼されるメモを残すためには、どうすればいいだろうか。

 「(1)『抽象的』と言われないための対策は、とにかく細かい所を具体的に、かつ、詳しく書くことが大切です。
 『○○のことでひどいことを言われた』というメモでは、証拠としては不十分です。
 今回のケースのように、できるだけ具体的な言葉を思い出して、やり取りを再現しておくことが必要です。
 また、実際に言われたこと・やられたことを具体的に詳しく書くのは、(2)『事実と異なる』と反論されることへの対策にもなります。
 事実と異なることを詳しく書くのは難しいことですから、できる限り思い出して詳細に書けば書くほど、迫真性、説得力が増すことになります」
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●「直後」に書くべし
 (3)「記憶があいまいになる」という点についてはどうだろう。
 「これは、パワハラを受けた直後に書くことに尽きます。パワハラを受けてからできるだけ早い時点で書きましょう。言われた言葉や加害者の表情、周囲の状況、自分の精神的苦痛など、まだ詳しい印象が強烈に残っている段階で書くことによって、真実に迫るメモになりますから」

 理系の研究実験ノートなどでは、記載した日付をきちんと書いておいたり、追記ができないように余白を埋めたりといったこともするようだ。こうしたことは役に立つだろうか?

 「そうですね。何か起きたら、すぐに手書きで内容をメモして、それをスマホやデジカメで撮影し、自分宛にメールを送っておけば、その日付のデジタルデータから、メモを直後に作成したことを示すことができ、よりいっそう証拠能力が高まるでしょう」

 岩城弁護士はこのようにアドバイスを送っていた。

(弁護士ドットコムニュース)


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2014年5月 5日 (月)

No.179 未成年の禁煙治療にも「保険」を適用すべき? 弁護士が指摘する現行制度の「矛盾」──「弁護士ドットコム」掲載(2014.4.27)

 「弁護士ドットコム」から依頼を受けて書いた元原稿に基づいて、下記のトピックスが掲載された。
 今回は、これまでの4回と違って労働問題と関係がないが、頼まれると断れず、つい「わかりました」と言ってしまって、あとで原稿に追われて苦労するんだなあ。

未成年の禁煙治療にも「保険」を適用すべき? 弁護士が指摘する現行制度の「矛盾」 140503_2

 未成年の場合、喫煙行為そのものが違法行為であるため、禁煙治療が保険適用の対象外になってしまう。
 「タバコは百害あって一利なし」。喫煙者にとっては耳が痛いかもしれないが、少なくとも未成年は注意して聞くべき言葉だろう。厚労省のまとめによると、15~19歳でタバコを吸い始めた場合、肺がんで死亡する率は非喫煙者の5倍以上にもなるという統計データがあるからだ。

 未成年は成人よりも、タバコに含まれるニコチンへの依存度が高くなりやすいため、早急な禁煙治療が必要だといわれる。しかし、そのハードルはかなり高そうだ。というのも、未成年の場合、喫煙行為そのものが違法行為であるため、禁煙治療は公的な医療保険の適用対象にならないというのだ。

 つまり、未成年が禁煙治療を受けようとしたら、その治療費は高額となってしまう。 だがむしろ、喫煙による影響が大きい未成年こそ、保険を適用して治療をすすめるべき、という気もするが・・・。こうした現状について、弁護士はどう見ているのだろうか。岩城穣弁護士に聞いた。

●未成年者こそ「禁煙治療」の必要性が高い
 「未成年の喫煙行為は違法だから、その禁煙治療は保険の適用外にするというのは、未成年者のニコチン依存症が『あってはならない』ということと、『ないはずだ』ということを混同していて、あまりに形式的であると思います」
 このように岩城弁護士は疑問を呈する。
「若いときに吸い始めるほどニコチンへの依存度が高くなり、治療の必要性が高いのです。他方で、治療効果も高いといえます。
 また、ニコチン依存症の未成年者には保険治療を認めないのに、その人が成人したら保険治療を認めるというのは、整合性に欠けますね」

 たしかに、「成人にならないと禁煙治療はできない」といわんばかりの現行制度はいかにも奇妙だ。さらに、岩城弁護士は、国や社会といったマクロの観点から見ても、未成年者に対する禁煙治療のメリットは大きいと言う。
「未成年のときから強いニコチン依存症に陥ると、ガンや虚血性心臓疾患にかかる可能性が高くなり、将来の労働力を失うことにもなります。また、これらの成人病の治療や後遺障害のために莫大な医療コストや社会的コストがかかります。
そう考えると、未成年の段階で早期に治療をしておくほうが、はるかに安いコストで済むはずです」

●未成年の禁煙治療は「無償」にしてもよい
 では、制度はどうあるべきなのか?
「未成年者に対する特例を設けて、禁煙のための保険治療を受けられるようにするべきだと思います」
 このように岩城弁護士は述べるが、さらに踏み込んで、「未成年者への禁煙治療は、無償にしてもよいのではないか」と提案する。その理由として、家庭環境の問題をあげる。
「未成年者は自ら治療費を支払うお金がなく、親に出してもらうことが多いと思われますが、喫煙依存になる未成年者の場合、家庭環境に問題をかかえている子が少なくないのが現状です。
そのため、親が『治療費を払うお金がない』『お金がかかるなら治療を受けさせない』などと言って、足を引っ張る可能性も否定できません」
 本人が禁煙治療を受けたくても、親の無理解や経済的事情によって受けられないことも考えられるというわけだ。

「したがって、未成年者への禁煙治療については、教育の一環として『無償』にしてもよいくらいだと思います。禁煙団体やPTAなどが、この問題を世論と行政に訴えて、現在の取り扱いを変えさせていくことが必要なのではないでしょうか」

 岩城弁護士はこう述べて、「未成年の禁煙治療」について国民的な議論が必要だということを指摘していた。
(弁護士ドットコム トピックス)


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2013年10月13日 (日)

No.139 働きすぎを防ぐために――「過労死防止基本法」が求められる背景とは?──「弁護士ドットコム」掲載(2013.10.12)

 以下の私の文章が、「弁護士ドットコム トピックス」に掲載された(10月12日(土)11時45分配信)。
 今回のテーマは、私が今全力投球している「過労死防止基本法」についてなので、タイムリーな依頼であったと思っている。

 なお、同サイトへの掲載は、これが4回目である。関心のある方はご参照下さい。
 ①2013年4月 3日 (水) No.111 ネット掲示板やブログで「ブラック企業」と批判することは名誉毀損になるのか──「弁護士ドットコム」2013.2.11掲載
 ②2013年4月 4日 (木) No.112 深夜労働後に強盗に襲われた 「労災」は適用されるのか?──「弁護士ドットコム」2013.3.23掲載
 ③2013年5月27日 (月) No.120 政府が「ブラック企業」の名前を公表!? 問題解決につながるか──「弁護士ドットコム」2013.5.27掲載

働きすぎを防ぐために――「過労死防止基本法」が求められる背景とは?

死ぬまで働かされる――。近年、長時間労働を強いる企業に若者が使いつぶされ、心身の健康を害したり、自殺に追い込まれる事例が報告されるなど、「働きすぎによる死」が相次いでいる。

そんな中、国に対し、総合的な対策を求める動きがある。「過労死防止基本法」の制定に向けた取り組みだ。過労死遺族や弁護士らでつくる「過労死防止基本法制定実行委員会」によると、2010年秋から始まった法案制定を求める署名活動には、今年9月11日時点で46万人を超える賛同が集まっている。

「働きすぎ」を防ぐためには、労働基準法をはじめ、労働組合法や労働契約法など、すでにいくつもの法律がある。今回の「過労死防止基本法」は、すでにある法律と何が異なるのだろうか。制定されることで「過労死防止」への取り組みはどう変わるのか。過労死防止基本法制定実行委員会の事務局長をつとめる岩城穣弁護士に聞いた。

●「過労死防止」の基本理念を明確にする法律

そもそも「過労死防止基本法」とは、どんな法律なのだろうか。

「過労死防止基本法の主なポイントは、次のような内容になるべきだと考えています。

(1)労働者全体、さらには勤労市民全体の過労死を防止するという基本理念を掲げること

(2)国と自治体、使用者(雇用する側)の責務を明確にすること

(3)過労死・過労自殺についての調査・研究と、それに基づく総合対策を国などが行うこと」

この「基本法」は労働基準法などと何が違うのだろうか?

「基本法とは、最高法規である憲法と個別の法律の間にあって、国政にとって重要な問題について、基本的な制度・政策・対策などについての理念や原則を明らかにする法律です。

現在わが国には、約40の基本法があり、近年では自殺対策基本法や肝炎対策基本法などがあります。

労働分野では労働基準法や労働組合法、労働契約法をはじめとする多くの法律がありますが、労働分野の基本法はまだありません」

●現在の法律は「過労死・過労自殺」の歯止めになっていない

いま、「基本法」が必要なワケは?

「残念ながら、労働基準法をはじめ、労働安全衛生法、労働組合法や労働契約法などは、過労死・過労自殺の有効な歯止めとはなっていません。その現状を変える必要があるのです」

現在のルールのどこが問題となのだろうか? ポイントを挙げてもらった。

「たとえば労働基準法は、労働時間の規制を中心に労働者の保護を図る法律です。ところが、労働時間の上限について規制はなく、使用者は、労働組合または労働者の代表と協定(36協定)を結べば、実質的にはいくらでも残業をさせることができてしまいます。

この点について、厚生労働省は、たとえば1週間の時間外労働の限度を15時間とするといった『時間外労働の限度に関する基準』を策定していますが、法的強制力はなく、これを超える36協定も、受理せざるを得ないのが現状です」

岩城弁護士は続ける。

「また、たとえば深夜・交替制労働や過重な責任・ノルマといった労働の質的な過重性や、パワハラなどについても労働基準法は規定していません。

そのため、時間外手当の不払いと一体になった長時間労働に、労働の質的過重性やパワハラが加わるなどして、過労死・過労自殺が広がっているのです」

確かに、そこには「過労死を防ぐ」という観点が不足しているように思える。

「また、公務員労働者にはそもそも労基法の適用がありませんし、トラック・タクシーなどの労働者の運転労働については、非常に長い拘束時間が認められています。こうした問題点は他にも数多くあります」

●働く人すべてが対象の「総合対策」が可能になる

それでは、「過労死防止基本法」の制定によって、事態はどんな風に変わるのだろうか。

「この法律が制定されると、次のような取り組みがなされるでしょう。

(a)過労死を防止する責務が明確になった国・地方自治体・使用者などは、それぞれの立場から様々な啓発活動・キャンペーンを含め、各種の具体的な取り組みを行うことになります。

(b)国は過労死・過労自殺の実態についての調査と、その防止のための研究を系統的に行い、それを踏まえた総合的な対策を行うことになるでしょう。

(c)その総合対策は、民間労働者・公務員を問わず、企業の役員や自営業者をも対象とし、また学校教育や就職指導、国や自治体の相談体制や医療体制の確立など、省庁や分野を超えたものになるでしょう」

この基本法には、労働法の枠組みを超えた、幅広い範囲への影響が期待されているようだ。「過労死」を社会からなくすためには、立場の違いを超えた協力が必要ということだろう。

岩城弁護士は「このような過労死防止基本法の制定を実現するために、今こそ国民の世論を高め、国民全体の声として立法を求めていく必要があります」と強調していた。

(弁護士ドットコム トピックス)


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2013年5月27日 (月)

No.120 政府が「ブラック企業」の名前を公表!? 問題解決につながるか──「弁護士ドットコム」掲載(2013.5.27)

 以下の私の文章が、本日、「弁護士ドットコム トピックス」に掲載された。
 同サイトには、これまでも2回ほど掲載していただいたことがあり、依頼していただけるのは光栄なことである。
 もっとも、書く以上は無責任なことを書くわけにいかず、きちんと調査・確認するので、結構大変である。
 せっかくなので、自分のこのブログにも掲載しておくこととする。

 政府が「ブラック企業」の名前を公表!? 問題解決につながるか

過剰なノルマを要求したり、低い賃金で長時間労働させるなどして、従業員を使い捨てにする企業のことを俗に、「ブラック企業」という。もともとは、若者中心に使われはじめたスラングだったが、最近では一般にも浸透する言葉になってきているようだ。

インターネットの掲示板では、このようなブラック企業を批判するスレッドが多数存在しており、なかには、「ブラック企業ランキング」というタイトルがついているものもある。そこには日夜、特定の企業名が挙がり、その従業員や退職者と思われる人から過酷な労働実態についての書き込みが行われている。

もちろん、これらの書き込みすべてが信用できるものではない。だが、ブラック企業の存在が身近なものとなりつつあることは間違いないだろう。このような状況の下、自民党はブラック企業対策として、社名の公表も含めて検討すべきだとする提言をまとめた。今夏の参院選の公約にも反映させる方向という。

はたして、行政がブラック企業の名前を公表することで、問題の解決につながるのだろうか。労働問題に詳しい岩城穣氏に聞いた。

●「ブラック企業の名前を公表することは有意義である」

「悪質な『ブラック企業』の会社名を公表することは、その企業を社会的な批判にさらし、改善を促すことができます。また学生などが就職するに際しての判断材料となり、有意義なことといえるでしょう」

このように公表の意義を語る岩城弁護士によると、「これまでも、違法行為を行ったり、社会問題を引き起こした企業は、行政機関によってしばしばペナルティを科されたり、企業名を公表されている制度がある」という。

「たとえば、建設現場などで重大な労働災害を発生させた企業は公表され、公共工事の指名競争入札に一定期間参加できなくなります。ほかにも、産地偽装を行った食品会社や耐震偽装を行った設計事務所なども公表され、行政処分などの制裁を受けることになります」

●公表にあたっては、「ブラック企業」の具体的な基準が必要となる

では、ブラック企業の公表はどのような形で行われるのがよいだろうか。

「そもそも、『ブラック企業』という言葉そのものは、『悪徳企業』や『ならず者企業』と同じような抽象的なレッテルに過ぎません。

したがって、『ブラック企業の名前を公表する』と言っても、『どのような場合がブラック企業に当たるのか』といった具体的な基準が必要になります。とりわけ政府が発表するとなれば、誰もが納得できる、明確な基準が必要でしょう」

岩城弁護士はこのように指摘する。では、ブラック企業の具体的な基準はどのようなものになるのだろうか。岩城弁護士は、現時点で考えられるものとして4つの例をあげる。

(1)違法な時間外労働や時間外手当の不払いについて、労基署から是正勧告を受けたこと(労基法違反)

(2)労働者の死亡が長時間過重労働やパワハラなどによるものであったとして、労基署から労災と認定されたこと(過労死・過労自殺の労災認定)

(3)上司等が違法なパワハラ・セクハラを行ったことについて、裁判で会社の責任が認められたこと(労働契約上の債務不履行責任、不法行為責任)

(4)従業員に対して暴行、脅迫、傷害、逮捕監禁、強要、違法行為の教唆などを行ったことについて刑事事件として摘発されたこと(犯罪への関与)

「(1)~(4)について、マスコミが自主的に取材して報道する場合は別として、政府や労働基準監督署(労基署)がこれらの事実を公表することはほとんどありません。もっとも、(1)のうち労基法違反が刑事訴追された場合に、労基署は公表することがあるようです。

しかも、(2)については、過労死を出した企業名について市民が労働局に情報開示請求をしたところ、労働局は「開示しない」との決定を行いました。これに対して、その不開示処分の適法性をめぐって現在、行政訴訟が行われています。

大阪地裁判決(2011年11月10日)は原告勝訴(不開示は違法)、大阪高裁判決(2012年11月29日)は原告敗訴(不開示は適法)と、まったく正反対の判決が下され、現在、最高裁の判断待ちとなっています」

このように実際の裁判を引き合いに出した上で、「自民党などが現在検討しているブラック企業名の公表の動きは、最高裁の判断にも大きな影響を与えると考えられます」と岩城弁護士は話している。

言葉が一人歩きしている感もある「ブラック企業」だが、きちんとした社会的批判を行うためにも、みんなで納得のいく基準を作ってみてはどうだろうか。

(弁護士ドットコム トピックス編集部)


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2013年4月 4日 (木)

No.112 深夜労働後に強盗に襲われた 「労災」は適用されるのか?──「弁護士ドットコム」掲載(2013.3.23)

 No.111に続いて、これも2013年3月23日、「弁護士ドットコム トピックス」に掲載された。
 これについても、遅ばせながらここにも掲載しておくことにする。


深夜労働後に強盗に襲われた 「労災」は適用されるのか?

弁護士ドットコム 3月23日(土)17時27分配信


深夜の帰宅中の災害も「労災」になるのだろうか?

2月28日深夜に起こった東京・吉祥寺の刺殺事件。「住みたい街ランキング」上位に位置し、犯罪のイメージとは縁遠い街で起こった突然の出来事は世間に大きなショックを与えた。

刺殺された女性が被害に遭ったのは、飲食店のアルバイトの帰り道だったという。飲食業界において、営業時間の関係で深夜労働が常態化している店は多い。

しかしながら深夜の帰宅は、昼間や夕方に比べ、犯罪に遭遇する可能性が高いといえる。そこで、仕事のために深夜の帰宅となり、その結果、犯罪に遭ってしまった場合は、労災は適用されるのだろうか。岩城穣弁護士に聞いた。

●吉祥寺の強盗事件は「通勤災害」と認定される可能性が高い

岩城弁護士によると、労災(労働災害)には、もともと業務に内在していた危険が現実化したといえる「業務災害」と、業務に就くためには避けられない通勤に内在する危険が現実のものとなったといえる「通勤災害」の2種類があるという。

吉祥寺の事件の場合は、飲食店でアルバイトをした帰り道に暴漢に襲われたケースなので、「通勤災害」といえるかどうかが問題となる。この点について、岩城弁護士は次のように述べる。

「飲食店で深夜までアルバイトをすれば帰宅が深夜になり、強盗や恐喝の被害に遭ったり女性が性被害を受ける危険が一般的にあるといえるので、『通勤起因性』が認められると思います」

したがって、「通勤災害として、労災が適用される可能性が高いと思われます」。

●「通勤災害」と認められなかったケースもある

このように結論を述べたうえで、岩城弁護士は「ただし」と言って、次のように付け加えた。

「被害を受けたときの通行場所が、いつも使用している通勤経路から外れていたり、合理的な経路・方法といえない場合には、通勤災害と認められない可能性があります」

また、「被害者が受けた加害行為が、見ず知らずの他人によるもの(いわゆる『通り魔』的なもの)であれば認められやすいのに対し、個人的な怨恨で『その人』を狙って待ち伏せをされたような場合には、通勤に内在する危険とはいえないとして、通勤災害と認められない可能性もあります」ということだ。

「過去の事例では、オウム真理教の信者から生命を狙われ、出勤途中で『VXガス』を噴射されて死亡したケースで、『殺害が通勤の機会になされたものにすぎない』として、労基署は通勤災害と認めませんでした」

このように通勤途中でも認められない場合もあるようだが、仕事の行き帰りに強盗にあった場合は、労災と認定されることが多いようだ。ただ、もちろん、そのような事件に巻き込まれないのが一番なのはいうまでもない。

(弁護士ドットコム トピックス編集部)

【取材協力弁護士】
岩城 穣(いわき・ゆたか)
1988年弁護士登録、大阪弁護士会所属。過労死問題をはじめ、労働・市民事件など幅広く活躍する「護民派弁護士」
http://www.abenolaw.jp/


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2013年4月 3日 (水)

No.111 ネット掲示板やブログで「ブラック企業」と批判することは名誉毀損になるのか──「弁護士ドットコム」掲載(2013.2.11)

 以下の私の文章が、2013年2月11日、「弁護士ドットコム トピックス」に掲載された。
 なぜか評判がよく、しばらくの間、Yahoo!のトップページに掲載されたとのことである。

 遅まきながら、せっかくなので、自分のこのブログにも掲載しておくこととする。

ネット掲示板やブログで「ブラック企業」と批判することは名誉毀損になるのか

弁護士ドットコム 2月11日(月)15時54分配信


近年、長引く不況の下で「ブラック企業」という言葉が流行している。ブラック企業とは、従業員に対して過剰なノルマを要求したり、低賃金で休みなく長時間労働をさせたりと、いわゆる「ひどい働かせ方」をさせている企業のことだ。

インターネット総合掲示板サイト「2ちゃんねる」には、「ブラック企業ランキング」というスレッドが存在し、その企業の従業員や退職者と思われる人による書き込みが頻繁に行われている。2012年11月には『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(今野晴貴著)という本が出版され、話題を呼んでいる。

いまや日常的に使われるようになった「ブラック企業」という言葉だが、ネット掲示板やブログ、SNSなどで特定の企業のことを「ブラック企業」と表現し、批判的な書き込みをすることは名誉毀損となるのだろうか。場合によっては、企業から損害賠償を請求される恐れがあるのか。大阪過労死問題連絡会の事務局長をつとめ、ブラック企業の問題にも詳しい岩城穣弁護士に聞いた。

●ただ「ブラック企業」と書き込んだだけでは「名誉毀損」にならない

「『ブラック企業』という言葉は、『就職すべきでない企業』という文脈で使われています。その中身として、(1)法律違反の働かせ方や営業を平気で行わせる(2)極端なノルマを課したり、著しい長時間労働や休日労働をさせる(3)パワハラや暴力が日常化している(4)社員を大量に雇い、使いつぶして退職に追い込む、などの意味が込められています」

岩城弁護士は、このように「ブラック企業」という言葉の意味を説明する。ただ、ある企業のことを「ブラック企業」と名指ししただけでは「名誉毀損」にあたらない可能性が大きいという。なぜなら、「ブラック企業」と言っただけでは、「具体的な法令違反や違法行為があったことを、直接的に示しているわけではない」からだ。

「『名誉毀損』とは、『公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損』する行為(刑法230条1項)のことですが、『ブラック企業』であると表現するだけで『事実を摘示』したといえるかは疑問です。

また、『事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した』(刑法231条)として、『侮辱』に当たると主張される可能性もありますが、かなり広い意味で使われているので、これだけで『侮辱』といえるかも疑問です」

つまり、「ブラック企業」とネットの掲示板に書き込むだけでは、名誉毀損や侮辱として損害賠償の対象となる可能性は小さいというわけだ。

●ブラック企業の「違法行為」を暴露しても「名誉毀損」にならないワケ

「むしろ、この言葉と一緒に述べられると思われる『この会社ではサービス残業が蔓延している』、『社長が日常的にパワハラを行っている』、『消費者を騙して悪徳商法をしている』といった具体的事実のほうが、名誉毀損との関係では重要といえます」

このように指摘したうえで、岩城弁護士は、企業の違法行為を具体的に書き込んだ場合に名誉毀損となるかについて、次のように説明する。

「この点、名誉毀損行為がなされても、(1)摘示した事実が、公共の利害に関する事実であり、(2)摘示の目的が専ら公益を図ることにあり、(3)それが真実であった場合には、違法性がないとされています(刑法230条の2第1項)。

そこで、労働基準法違反の働かせ方や法令違反の営業、パワハラや暴力が行われていることは、(1)「公共の利害」に関する事実といえるので、(2)まじめな意図で、(3)それが真実であれば、何ら問題はないということになるでしょう」

すなわち、このような3つの条件を満たしていれば、ブラック企業の違法行為をネットで暴露しても名誉毀損とはいえない場合が多いということだ。

「世間では『ブラック企業大賞』の投票や授賞が行われたりしていますが、それが特に損害賠償請求や刑事告訴などに至っていないのは、そこでの批判が基本的に労働基準監督署や裁判所で認定された違法な事実を前提に行われているからだと考えられます」

「ブラック企業」という言葉をネットの掲示板やブログで書いても問題はないようだが、それとあわせてどのような事実を書くかは注意したほうがよさそうだ。

(弁護士ドットコム トピックス編集部)

【取材協力弁護士】
岩城 穣(いわき・ゆたか)
1988年弁護士登録、大阪弁護士会所属。過労死問題をはじめ、労働・市民事件など幅広く活躍する「護民派弁護士」
http://www.abenolaw.jp/


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